2024年3月22日 07:00
70年代中盤から80年代中盤にかけて、オーディオ界にDCアンプなるものが存在していました。
当時の高級ハイエンドセパレートアンプや、ミドルクラス以上のプリメインアンプに採用されていたDC増幅回路とは、0Hzつまり直流から増幅できるという恐ろしいアンプでした。
ちなみに、DCとは直流の事で交流はACと言います。
音は当然空気の振動ですから、音楽音源も通常20Hz~20Khzほどの周波数帯域の交流なわけです。
しかし、自然界にはあらゆる周波数帯域の音が存在しています、ただ人間の耳には聞こえないだけです。
例えば波や風の音には5Hz以下の重低音まで含まれています、和太鼓なども単一周波数ではなく10Hz以上の各種の周波数帯域の音の合成によって人間の耳に和太鼓の音として聴こえるのです。
つまり、人間の耳には認識できなくても自然界に存在する音をそのままに再現しようとすると可聴域以外の低い周波数と高い周波数を増幅できるアンプが重要になります。
そこで誕生したのが究極のDCアンプだったわけです。
セパレートアンプではトリオのパワーアンプL-05M、プリメインアンプではサンスイのAU-DシリーズなどがDCアンプの代表格です。
他にも、70年代のヤマハのアンプA-5などはエントリークラスでもDCアンプです。
更に凄いのは周波数レンジの幅です、通常はA級ハイエンドアンプでも20Hz~100KHzですが、サンスイのDCアンプは0Hz~300KHz、トリオの場合は0Hz~600KHzもあり、高域特性も極めて高いのです。
このDCアンプの投入で、サンスイはプリメインアンプのシェア40%以上と一気にアンプ界の頂点に上り詰めたのです。
しかしレコードの再生などで、レコードに傷が有る場合など重低音域の電流がスピーカーに流れコイルを破損する事があります。
そこで、レコード再生時は10Hz以下の音をカットするサブソニックフィルターを付けるという工夫までされているのです。
CDの場合は、音源そのものに20Hz以下は入っていませんのでフィルターオフでも何らの問題もありません。
これらのDCアンプと38Cm口径以上のウーハーで聴く重低音は、もう音ではなく風圧を身体に感じるほどです。
大音量で聴くと、バスドラの重低音でテーブルの上のグラスなどがカタカタと揺れる事もあります。
本物の重低音、一度聴いたら確実に虜になります、こうしてハイファイオーディオの道にずっぽりとハマっていくのです。