「日本古来のタンポポが西洋タンポポに駆逐される」などという記事が多く見受けられますが、各種の研究論文を読むと住み分けによって日本古来のタンポポ種と西洋タンポポは共存しています。
確かに、気候の影響をあまり受けない西洋タンポポが日本全土に自生しているのは確かではあります。
さて、では西洋タンポポはいつ日本に来たのでしょう?
それを調べているうちに意外な事実が解りました、実は西洋タンポポは食用として日本に持ち込まれていたのです。
1870年ごろ、アメリカのウイリアム・ペン・ブルックスという牧師がサラダ用に西洋タンポポの種を持ち込み、札幌農学校で試験栽培していたものから種が飛び散り日本各地に広がったようなのです。
その30年程後に植物学雑誌に紹介された際に「セイヨウタンポポ」と名ずけられ、人々の知ることとなりました。
なんと、明治時代に日本で食用タンポポを栽培しようとしていた人が居たのですね!
しかし何故、西洋タンポポが野菜として定着しなかったのか、大いに疑問が残ります。
その理由も、先のウイリアム・ペン・ブルックス氏にありました。
実は彼は西洋タンポポ以外に多くの野菜の種を持ち込み北海道のあちこちの農家にその栽培方法などを教えました。
その時の野菜はキャベツ・トマト・ジャガイモ・ニンジンなど数十種に及びました。
結果、タンポポよりも日本人の舌に合った野菜が多く栽培されるようになり、悲しきかなタンポポはいつしか人々に忘れられた存在となり野菜から雑草と化してしまったのです。
こんな歴史や事実を調べると、食用として復活させたいという気持ちが湧いてきます。
また、西洋タンポポは非常に稀な生態を持っていました。
この繁殖力の強さが研究で解り、冒頭の「日本古来のタンポポが駆逐される」という事に繋がるのです。
今回も2回目として、ちょっとコーヒーブレーク的なタンポポに関連したウンチクを幾つか紹介します。
☆タンポポの種は冬眠する
タンポポの種には同じ花から出来た種にも関わらず、発芽時期をそれぞれの種が単独で何かしらの方法によって発芽時期をコントロールするメカニズムが備わっています。
これは、春一番に他の植物よりも先にその地を占領する部隊と、他の植物が先に生えていた場合は秋になり枯れるのを待ってから発芽し、その地を占領するという部隊が上手く役割分担しているのではないかとと考えられています。
☆タンポポの花は連携プレーを行う
タンポポは花を咲かせる際に蕾を形成しながら花茎を高く伸ばします、そして蕾は太陽が昇る頃に開花し夕方には閉じてしまいます。
これを3日間繰り返し4日目には完全に花を閉じて花茎をいったん寝かせて別の花が茎を伸ばし花を咲かせるのを邪魔しないようにしています。
そして、次の花が咲き4日目に横になりますので、今度は先に横になっていた花茎はピンと伸ばし種を一気に飛ばします。
同じ株の花でも順序良く開花と種を飛ばす完全な連携プレーを行い、花同士が花を咲かせ種を飛ばす動作の邪魔し合うのを防いでいるのです。
更には、この間欠的に種を飛ばすことで、風向きなどの違いから四方八方に種を飛ばす事ができます。
一斉に花を咲かせて種を飛ばしてしまったら、その時の風向きにしか飛びません、つまりこの連携プレーと間欠プレーによって四方八方に種を飛ばすタンポポの知恵なのです。
☆タンポポの花の奇形
タンポポの花の中には花茎が通常の数十倍という自転車のチューブのように太く平たい中空状になる奇形が昔から報告されています。
そして、このチューブの周辺に10個以上の花を連環状に咲かせます。
この種からは奇形は見られず通常のタンポポが育ちます、つまり遺伝するものではなく突然変異的に発生するものと考えられています。
現在、この奇形のメカニズムも理由も全てが謎のままなのです。
今回は、ちょっとコーヒーブレーク的なタンポポに関連したウンチクを幾つか紹介します。
☆タンポポの名前の由来
諸説あるのですが、一般的に言われているのが子供の遊びからというものです。
昔は、タンポポを「鼓草」と呼んでいました、タンポポの花茎の部分を切り、両端を細かく裂きます、それを水に浮かべると細かく裂いた両端が反り返り楽器の小鼓のような形になります。
それを見て子供たちは「タンタン、ポンポン」と言っては遊んでいたようです、それが何時しか短縮され「タンポポ」と呼ばれるようになったということです。
☆タンポポの花言葉
ヨーロッパではタンポポは花占いの花で、花弁を1枚ずつ抜いては「すき、きらい、すき・・・」と最後に残った言葉で占うというもの。
ここから、タンポポの花言葉が「愛の神託」、「神託」、「真心の愛」などという花言葉が付けられたようです。
また、綿毛(種)を吹いて飛ばす占いも有るようで、全て飛べば恋愛が実り、少し残れば心が離れて行くというもので、ここから「別離」の花言葉もあります。
☆白い花のタンポポがある
タンポポの中には白い色をしたタンポポがあります、日本古来の種では「シロバナタンポポ」などがそれに当たります。
ところで、この白い色したタンポポですが、実はオレンジ色の色素が無いのではなく、白い色のタンポポの花からオレンジ色の色素が抽出されます。
では何故白いのかというと実はオレンジ色の色素をあえて分解して白くしていることが解っています、その理由は研究段階のようですがきっと大きな理由が有るのでしょうね。
最近良く聞く「オーガニック」、でもこれを正確に理解している人はかなり少ないのではないでしょうか?
例えば「化学肥料や農薬を使わない有機栽培された野菜類」という認識は間違っていませんが正確には不十分なのです。
「オーガニック」は、日本語に直訳すると「有機」ですが「オーガニック食品」となるとかなり厳密な内容になります。
世界には300を超えるオーガニック認定機関があります、しかしその認定の内容が団体ごとに異なっており、これもまた混乱を招いている要因にもなっています。
各団体で共通している項目としては、以下のような内容になっています。
・3年以上農薬や化学肥料を使用していない農場で栽培収穫されたものを、「オーガニック」と言う。
・「オーガニック」の条件をみたした原料で、添加物を一切使わずに作られた加工食品。
・「オーガニック」の条件を満たした飼料によって飼育され、抗生物質、ホルモン剤を一切使用していない畜産物。
・栽培・収穫・加工・流通などすべての工程で、認証機関などの第三者が厳しくチェックしパスしたもの。
という内容が一定基準として存在しています。
つまり、農家が直販する時などに無農薬有機栽培の野菜だからといって「オーガニック」という言葉を簡単に使うと違法行為の対象になる可能性があります。
日本では、農林水産省が1992年に有機農産物に関わる「青果物等特別表示ガイドライン」を定めました。
その後1996年にはこれを改正し、農薬や化学肥料を一切使わない「有機農作物」と無農薬もしくは減農薬で栽培した「特別栽培農作物」の二つに分類しました。
しかし、これは違法表示などに関しても罰則規定がない形骸化されたものでした。
そこで2000年に、改正JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律))が施行され、厳しい品質基準をもつ有機食品の検査認証制度が発足いたしました。
先述の、簡単に「オーガニック」を表示できない、という事がこれで良くお分かりになったかと思います。
検査認定を通していない無農薬・無化学肥料の野菜類は「無農薬自然耕法」などと表示するのが無難かもしれません。
タンポポは北半球の亜熱帯から温帯地域に植物学上約60種が生息しています。
日本には、このうち学術的に分類されている20種が生息していますが、変種も多く観測されており、まだまだ植物学的にも完全には確立されていない植物です。
正直、図鑑で写真を見比べただけではその種が特定できません、同じ種でも季節や環境で葉の形が一変してしまうからです。
実際に育ててみて解るのですが、葉の形や大きさが春、夏、秋冬では別の植物かと思うくらいに変化します。
何時かは、特定方法を学び日本全国を回ってタンポポの観測を行ってみたいと思います、そして将来は詳しい見分け方や生息地の特定などタンポポだけの図鑑が有っても良いとさえ思えてくるのです。
そんな希望を持ちながら、日本で生息するタンポポの植物学的に分類されている20種を記しておきます。
( )内は、分布している地域。
・カンサイタンポポ(本州、四国、九州)
・カントウタンポポ(関東、中部)
・トウカイタンポポ<カントウタンポポ変種>(静岡)
・シナノタンポポ<カントウタンポポ亜種>(長野、新潟、山梨)
・オキタンポポ<カントウタンポポ亜種>(隠岐諸島)
・モウコタンポポ(対馬、島原半島)
・オクウスギタンポポ(宮城、福島)
・シロバナタンポポ(本州、四国、九州)
・キビシロタンポポ(岡山、北九州)
・クシバタンポポ(近畿、山陰、山陽、 四 国 )
・ケンサキタンポポ(日本海側、近畿、中 国 )
・ツクシタンポポ(西四国、北・中央九 州 )
・エゾタンポポ(日本全体)
・ミヤマタンポポ(本州の高山 )
・シコタンタンポポ(東北海道・千島)
・クモマタンポポ(北海道の高山、千島 )
・ユウバリタンポポ(北海道夕張岳)
・オーヒラタンポポ(北海道太平山)
・西洋タンポポ<外来種>(日本全土)
・アカミタンポポ<外来種>(日本全土)