タンポポは北半球の亜熱帯から温帯地域に植物学上約60種が生息しています。
日本には、このうち学術的に分類されている20種が生息していますが、変種も多く観測されており、まだまだ植物学的にも完全には確立されていない植物です。
正直、図鑑で写真を見比べただけではその種が特定できません、同じ種でも季節や環境で葉の形が一変してしまうからです。
実際に育ててみて解るのですが、葉の形や大きさが春、夏、秋冬では別の植物かと思うくらいに変化します。
何時かは、特定方法を学び日本全国を回ってタンポポの観測を行ってみたいと思います、そして将来は詳しい見分け方や生息地の特定などタンポポだけの図鑑が有っても良いとさえ思えてくるのです。
そんな希望を持ちながら、日本で生息するタンポポの植物学的に分類されている20種を記しておきます。
( )内は、分布している地域。
・カンサイタンポポ(本州、四国、九州)
・カントウタンポポ(関東、中部)
・トウカイタンポポ<カントウタンポポ変種>(静岡)
・シナノタンポポ<カントウタンポポ亜種>(長野、新潟、山梨)
・オキタンポポ<カントウタンポポ亜種>(隠岐諸島)
・モウコタンポポ(対馬、島原半島)
・オクウスギタンポポ(宮城、福島)
・シロバナタンポポ(本州、四国、九州)
・キビシロタンポポ(岡山、北九州)
・クシバタンポポ(近畿、山陰、山陽、 四 国 )
・ケンサキタンポポ(日本海側、近畿、中 国 )
・ツクシタンポポ(西四国、北・中央九 州 )
・エゾタンポポ(日本全体)
・ミヤマタンポポ(本州の高山 )
・シコタンタンポポ(東北海道・千島)
・クモマタンポポ(北海道の高山、千島 )
・ユウバリタンポポ(北海道夕張岳)
・オーヒラタンポポ(北海道太平山)
・西洋タンポポ<外来種>(日本全土)
・アカミタンポポ<外来種>(日本全土)
ノゲシはキク科タンポポ亜科ノゲシ属に属する越年生の植物で、西洋タンポポと同様にヨーロッパ原産で中国から持ち込まれた帰化植物です。
それにしても、改めてあちこちを散策してみて驚く事に、タンポポ同様に何処に行っても自生しています。
タンポポ亜科だけあって、幼苗はタンポポそっくりで、おそらく慣れていないとタンポポだと思うに違いありません。
ノゲシの幼苗、まるでタンポポ
ノゲシは、タンポポの親戚だけあって生命力も凄く、コンクリートの割れ目にさえしっかりと息ついています
ノゲシはタンポポ同様に根から花まで全て食べられます。
中国古書には漢方薬として用いられているようですがタンポポほどの効能はありません、根もそれほど成長しません。
試食してみましたが、味はタンポポのような苦みがほとんど無く、ホウレンソウか菜の花のような食感と味です、逆に癖になるほどかなり美味しいです。
また成長すると葉を付けた径を伸ばします、ここまで成長すると流石にタンポポと違う植物だと解ります。
50cm~1mほど径を伸ばした後はタンポポそっくりの黄色い花を一本の茎から枝分かれさせ多数咲かせます、そして同じく種は羽毛状になりタンポポ同様に風に乗せて種を飛ばす「風媒花」です。
ノゲシが成長し花を付けたところ、花の形もタンポポそっくり
以前、タンポポの花茎の奇形についてお話ししました、そしてその情報を得てからというもののずっとこの奇形を見たくてしかたなかったのです。
そして、今年の春先に探しに行こうと思っていた矢先、それは偶然に我々にもたらされたのです。
千葉のランチ会に出席するために、スタッフ3人と歩いていたら、歩道のある街路樹の根元にタンポポの花が群生しているのを見つけました。
こんな狭い場所にすごい数の花・・・、「何これ!?」。
太い1本の花径に幾つもの花が数珠つなぎに咲いているではないか、これが噂の奇形だとすぐに解りました。
発見したものは直径が10mm程で花は8つがくっついていました。
しかし、これ本当に奇形なのだろうか?
私はこれを眺めるうちに賢いタンポポの生命力による1度に多くの種をばら蒔く戦術ではないかと思えてきたのです。
何れにしても、タンポポの研究は限界がありません。
まだまだ、我々に多くの謎を投げかけてきます。
日本でも過去にタンポポは農作物として栽培されていた事実がありました。
それは江戸時代、気候の変動により農作物の不作が続いた時に救荒食物として栽培が奨励されていました。
那須高原や八ヶ岳山麓、北海道のあちらこちらで巨大なタンポポが咲き誇る平原が残っています。
これは、あくまでも推測ですが、田畑以外の平原でタンポポを育てていたのでしょう、日本のあちこちに存在するタンポポ平原はその名残だと考えられます。
このエピソードから解る事、それはタンポポは劣悪な環境でも育つ事ができるほど強靭な生命力があるということです。
多年草のタンポポは、5年もすれば太くて長い根となり、その長さは1メートル以上にも及びます。
そして、葉の付け根に生長点が有るため、葉が全て枯れてしまっても、雨が降れば直ぐに葉を出し伸ばします。
長い根のおかげで表面が乾ききって他の植物が全て枯れてしまってもタンポポだけは地中深くの水分を吸い上げて生き残れます。
救荒植物として栽培が奨励されていた事実、タンポポの持つ強靭な生命力を考えれば不思議でもなんでもありません。
これまで2回に渡りタンポポの恐るべし生きるための知恵、戦略戦術について触れてきました。
2回目の最後の方に書きましたが、やはりこれらの生きるための知恵で、目の当たりにして驚かせれることは「タンポポの繁殖戦略は種そのものにも備わっている」という事実です。
同じ花から出来た種にも関わらず、それぞれの種そのものに時間差発芽のメカニズムが備わっているのです。
実際に種から育ててみてこの事実にはおどろきました。
蒔いた種の約半数は1週間ほどで芽を出しどんどん成長します、しかし残りの半数は夏の暑さを過ぎた半年後の秋になってから目を出し始めたのです。
この特性は、まだ仮説の域を出ていないようですが、たんぽぽの種は何かしらの方法で発芽時期をコントロールしていると思われます。
そしてそのメカニズムなどは、多くの情報を集めていますが、正確に論じているものは皆無です、ただどれもが発芽時期の時間差に関しては確認しているようです。
ここで仮説なのですが、「互いの成長を邪魔し合わないようにしている」ということと、「他の植物よりも先にその地を占領する先発部隊と他の植物が先に生えていた場合、秋になり枯れるのを待ってから発芽しその地を占領するという後方部隊が上手く役割分担している」ということが考えられます。
寒くなり、周囲の植物が全て枯れてしまった後にタンポポは芽を出し一気に成長します、枯れてしまった植物はタンポポの成長に邪魔にならないどころか、タンポポに有機物系の窒素などの栄養分を与えることになります。
更には、ちょうど枯れ草が毛布や絨毯代わりになりタンポポは自身の周りを囲うように風や雪から守っているように思えます。
これらがタンポポが意図して備えた知恵だとしたら、あまりにも完璧な戦略戦術であり、タンポポはどのようにこれらの知恵を身につけていったのか非常に不思議でなりません。
この光景は初冬の今頃あちらこちらで見ることができます、枯れ草を毛布や絨毯代わりに悠々と成長しているタンポポ、憎いほどに頭の良い植物です。
タンポポの驚異的な戦略戦術、あまりにも見事すぎて脱帽するしかありません。
タンポポが枯れ草を毛布や絨毯代わりに悠々と成長している様、実に賢い! ↓