ノゲシはキク科タンポポ亜科ノゲシ属に属する越年生の植物で、西洋タンポポと同様にヨーロッパ原産で中国から持ち込まれた帰化植物です。
それにしても、改めてあちこちを散策してみて驚く事に、タンポポ同様に何処に行っても自生しています。
タンポポ亜科だけあって、幼苗はタンポポそっくりで、おそらく慣れていないとタンポポだと思うに違いありません。
ノゲシの幼苗、まるでタンポポ
ノゲシは、タンポポの親戚だけあって生命力も凄く、コンクリートの割れ目にさえしっかりと息ついています
ノゲシはタンポポ同様に根から花まで全て食べられます。
中国古書には漢方薬として用いられているようですがタンポポほどの効能はありません、根もそれほど成長しません。
試食してみましたが、味はタンポポのような苦みがほとんど無く、ホウレンソウか菜の花のような食感と味です、逆に癖になるほどかなり美味しいです。
また成長すると葉を付けた径を伸ばします、ここまで成長すると流石にタンポポと違う植物だと解ります。
50cm~1mほど径を伸ばした後はタンポポそっくりの黄色い花を一本の茎から枝分かれさせ多数咲かせます、そして同じく種は羽毛状になりタンポポ同様に風に乗せて種を飛ばす「風媒花」です。
ノゲシが成長し花を付けたところ、花の形もタンポポそっくり
以前、タンポポの花茎の奇形についてお話ししました、そしてその情報を得てからというもののずっとこの奇形を見たくてしかたなかったのです。
そして、今年の春先に探しに行こうと思っていた矢先、それは偶然に我々にもたらされたのです。
千葉のランチ会に出席するために、スタッフ3人と歩いていたら、歩道のある街路樹の根元にタンポポの花が群生しているのを見つけました。
こんな狭い場所にすごい数の花・・・、「何これ!?」。
太い1本の花径に幾つもの花が数珠つなぎに咲いているではないか、これが噂の奇形だとすぐに解りました。
発見したものは直径が10mm程で花は8つがくっついていました。
しかし、これ本当に奇形なのだろうか?
私はこれを眺めるうちに賢いタンポポの生命力による1度に多くの種をばら蒔く戦術ではないかと思えてきたのです。
何れにしても、タンポポの研究は限界がありません。
まだまだ、我々に多くの謎を投げかけてきます。
日本でも過去にタンポポは農作物として栽培されていた事実がありました。
それは江戸時代、気候の変動により農作物の不作が続いた時に救荒食物として栽培が奨励されていました。
那須高原や八ヶ岳山麓、北海道のあちらこちらで巨大なタンポポが咲き誇る平原が残っています。
これは、あくまでも推測ですが、田畑以外の平原でタンポポを育てていたのでしょう、日本のあちこちに存在するタンポポ平原はその名残だと考えられます。
このエピソードから解る事、それはタンポポは劣悪な環境でも育つ事ができるほど強靭な生命力があるということです。
多年草のタンポポは、5年もすれば太くて長い根となり、その長さは1メートル以上にも及びます。
そして、葉の付け根に生長点が有るため、葉が全て枯れてしまっても、雨が降れば直ぐに葉を出し伸ばします。
長い根のおかげで表面が乾ききって他の植物が全て枯れてしまってもタンポポだけは地中深くの水分を吸い上げて生き残れます。
救荒植物として栽培が奨励されていた事実、タンポポの持つ強靭な生命力を考えれば不思議でもなんでもありません。
これまで2回に渡りタンポポの恐るべし生きるための知恵、戦略戦術について触れてきました。
2回目の最後の方に書きましたが、やはりこれらの生きるための知恵で、目の当たりにして驚かせれることは「タンポポの繁殖戦略は種そのものにも備わっている」という事実です。
同じ花から出来た種にも関わらず、それぞれの種そのものに時間差発芽のメカニズムが備わっているのです。
実際に種から育ててみてこの事実にはおどろきました。
蒔いた種の約半数は1週間ほどで芽を出しどんどん成長します、しかし残りの半数は夏の暑さを過ぎた半年後の秋になってから目を出し始めたのです。
この特性は、まだ仮説の域を出ていないようですが、たんぽぽの種は何かしらの方法で発芽時期をコントロールしていると思われます。
そしてそのメカニズムなどは、多くの情報を集めていますが、正確に論じているものは皆無です、ただどれもが発芽時期の時間差に関しては確認しているようです。
ここで仮説なのですが、「互いの成長を邪魔し合わないようにしている」ということと、「他の植物よりも先にその地を占領する先発部隊と他の植物が先に生えていた場合、秋になり枯れるのを待ってから発芽しその地を占領するという後方部隊が上手く役割分担している」ということが考えられます。
寒くなり、周囲の植物が全て枯れてしまった後にタンポポは芽を出し一気に成長します、枯れてしまった植物はタンポポの成長に邪魔にならないどころか、タンポポに有機物系の窒素などの栄養分を与えることになります。
更には、ちょうど枯れ草が毛布や絨毯代わりになりタンポポは自身の周りを囲うように風や雪から守っているように思えます。
これらがタンポポが意図して備えた知恵だとしたら、あまりにも完璧な戦略戦術であり、タンポポはどのようにこれらの知恵を身につけていったのか非常に不思議でなりません。
この光景は初冬の今頃あちらこちらで見ることができます、枯れ草を毛布や絨毯代わりに悠々と成長しているタンポポ、憎いほどに頭の良い植物です。
タンポポの驚異的な戦略戦術、あまりにも見事すぎて脱帽するしかありません。
タンポポが枯れ草を毛布や絨毯代わりに悠々と成長している様、実に賢い! ↓
タンポポは日本では何処でも見られる草花、しかしその生態を詳しく知っている人はほとんどいないと言っても過言ではありません。
タンポポの生態を改めて調べていくうちに、生命力や強靭さの秘密が解ってきておどろきの連続です。
タンポポは、極めて進化した植物の一つではないかと思うようになりました、そしてまさに繁殖力そのものに戦略を感じざるを得ませんでした。
タンポポは、自身の身を守り子孫を繁栄するために見事なまでに、実に考えられた特徴を多数持っていました。
まずは形状、同じキク科の植物はほとんど茎立ちしますが、タンポポは地面に這うように葉を伸ばし、唯一花を咲かせるときだけ花茎を伸ばします。
この根から直接葉を放射線状に地面を這うように葉を出す植物の形状は、「ロゼット型」と呼ばれています。
また、このような根から直接葉を出す生態は「根生葉」と呼ばれています。
このロゼット型植物の優位点は、冬の寒さや強風から身を守るのに適しています。
強風でも茎が無いので折れることはありません、また寒い冬には昼間温まった地面の余熱で葉を凍らせないようにしています。
それでも、冬の乾燥などで葉を傷めた場合は、自ら葉を全て枯らせて生命線である根の乾燥を防ぎ、根だけは生き残り養分を根に蓄え続けます、なんという生命力豊かなメカニズムなのでしょうか。
多年草であるタンポポの根は、長期間に養分をたっぷりと貯め込み、5年も経てばゴボウのように太く長くなります。
ロゼット型植物なので太陽が昇れば放射線状の葉全体で陽光を受けエネルギーに変え根にどんどん蓄積して行きます。
そして、春には他のどの植物よりも先に根に貯め込んだ養分をエネルギーとして、一気に葉と花茎を伸ばし一番に花を咲かせて種を作り撒き散らします。
他の植物がまだ芽を出す準備を行う前の地面に種をばら撒き、あっという間に芽を出し葉を広げて他の植物の発芽を阻止してしまいます。
タンポポの根からはアルカロイドがぶんぴつしており、他の植物が芽を出すのを阻止する能力も持ち合わせています。
これがタンポポの繁殖力の秘密であり、子孫繁栄の為の生きる知恵なのです。