大型ブックシェルフスピーカーの検証-3~オンキョー D-77MRX
2024年10月 7日 08:00
スピーカーの名門JBLやダイヤトーンの名機と呼ばれるスピーカーも、この1台と聞き比べられたら一気に存在感を失ってしまう。
そんな傑作中の傑作スピーカーがオンキョーD-77MRX(2003年発売、ペアで22万円)です。
オンキョー D-77MRX
スピーカー専業メーカーが総合オーディオメーカーのたった1台のスピーカーに負けてしまう、そんな有り得ない偉業を遂げたオンキョー渾身のフラッグシップスピーカー(代表するスピーカー)がD-77MRXです。
初代D-77は1985年に発売されるやスピーカー598(1台¥59,800)戦争を勃発させた張本人、その初代から数えて10代目にあたる超が付く大ヒット作で、何と14年にも渡る大ロングセラーを達成しました。
途中の2011年には材料費の高騰により30%アップの価格改定を行うも、売れ行きは衰えず2017年にD-77NE(ペアで35万円)が誕生するまでオンキョーのフラッグシップスピーカーとして君臨しました。
2018年夏、オーディオ道楽復活時に辛うじて購入出来て実に幸いでした。
ちなみにD-77NEは、ウーハーの素材を替えたせいかそれともいきなり左右ペアで35万円と高額だったからか、たった2年で販売不振により製造を中止してしまいます。
3ウェイバスレフの大型ブックシェルフで、オンキョー独自のシルクOMFコーンの30Cmウーハーは30Hz以下まで低域を伸ばし、同じくシルクOMFコーンの12Cmスコーカーとアルミ&マグネシウム合金の2.5Cmドームツイーターが奏でる中高音域は驚異の60Khzまで力強く張り出してきます。
この60Khzは、スピーカー部門での「ハイレゾ対応」を謳えるスペックとなっています。
シルクOMFコーンのウーハー
シルクOMFコーンのスコーカーとアルミ&マグネシウム合金のツイーター
シルクOMFコーンは、1998年発売の小型ブックシェルフの名機D-202AXやD-202AX LTDに採用されたスーパーコーン素材、このスーパーコーン素材は本当に良い音を響かせます。
シルクOMFとは、シルク繊維を特殊な熱硬化樹脂(レジン)で固めたもので、軽量なのに金属膜のように極めて硬質な素材です。
また、エンクロージャー内に吸音材をほとんど用いず、スコーカーとツイーターをウーハーの影響を受けないように別エンクロージャーに収めるというスタイルを採用しています。
これにより、バスレフ特有の低音域の籠りが無くなり、密閉型のようなスカッとした切れの良さを生んでいます。
フロントバッフルは、驚異の41mm厚のMDFを使用し共振を完全にシャットアウトしています。
こんなユニットとエンクロージャーで固めたスピーカーの音質は、どんな楽器の音も極めてリアルに表現し、ベース・ドラム・ピアノのピアノトリオを聴いたらそれぞれの楽器が本当に綺麗に分かれて見事なまでの響きです。
それでいてボーカルは生々しく響かせる、まさに脱帽もののスピーカーです。
ポッポスも、そしてクラシックも見事に再生しジャンルを選びません、大ヒット&ロングセラーを達成するのは当たり前なのかもしれません。
「名スピーカーはアンプとジャンルを選ばない」、まさにこういうスピーカーを指して言うのでしょう。
1999年にダイヤトーン(三菱電機)がオーディオ事業から撤退します、その後日本のスピーカー部門を牽引することになったオンキョーが放った、スピーカーキングのプライドにかけた最高傑作の逸品だと思います。
小型ブックシェルフでありながら他社の大型3ウェイブックシェルフに勝らぬも劣らぬ音質のオンキョー渾身の傑作小型スピーカーD-202AX LTDですが、このD-77MRXの前では「蛇に睨まれたカエル」です。
先ずは本物の音に触れてみてください、オーディオを語るのはそれからです。
しばらくはメインで使うと思いますが、その後は重要なコレクションアイテム&リファレンススピーカーとなるでしょう。