経営者は常に考え事が複数あって頭の休まる日がありません、常に複数の考え事を抱えているために話しの焦点が定まらず話しがあちこちに飛ぶ人も珍しくありません。
往々にしてこのような状況が長期間継続すると、自覚が無いままに精神的ストレスが蓄積されていき気が付いた時には思考が停止してしまうことがあります。
私も起業したての数年間は、それまでの生活には無いほどの考え事が一気に発生し自身の思考コントロールに苦慮した記憶があります。
そんな体験によって徐々に解決策も見いだせるようになってきます、そして一度身に付けた解決策は無意識にその行動を取れるようになります。
私が自身で学んだ解決策の一つは問題を長期化させないことです、面倒で嫌な問題ほど短期決戦で素早く処理することが肝要です。
例えば、資金問題や人事問題は長期化すると各所に影響が出てきます、このような経営に直結する問題は他の事項を全て止めても最優先で全思考を集中させて解決するようにしなくてはいけません。
これらの優先すべき課題を残したまま他の事項を並行して考えても思考が集中できずにミスが連発し、そのミスによって更なる問題が発生するようになります。
もう一つは自身だけでは解決できない事項、例えば他者の意向や判断が必須条件になるような問題は、まず自分なりの解決策を相手に示しておくことが肝要です。
そのうえで相手からの反応が来るまでは他の事項に集中し、この事項に関してはできるだけ考えないようにすることです。
更には、完全に考えないようにするには第三者へのバトンタッチが有効です。
例えば互いに良く知る人に仲裁をお願いする、また法的に有効な事項であれば弁護士に依頼するなどです。
思考時間はお金では換算できません、お金でビジネスに直接関係ない問題を考えずに解決できるのであれば最も効率的な解決策となります。
人間には思考キャパシティ(容量)というものがあります、会社員時代には考えられないほどの思考しなければならない事項が起業したとたんに一気に押し寄せます。
経営歴、どんな状況であろうが長ければ長いほどこれらの対処方法を身につけていくのです。
経営歴が長い経営者同士はこれらを阿吽の呼吸で解ります、だから互いに無駄な思考や行動をしないようにさっさと解決する方向で話しがまとまります。
起業したての人は、時間的利益を最優先して考えるようにすることを念頭に入れてほしいと思います。
技術系やサービス系ベンチャー企業経営者に多い勘違いがあります、「自分の会社は凄い物を作れる」、「凄いアイデア商法を持っている」という謳い文句、しかし本当にそれが凄い物なのかを調査してみたでしょうか?
インターネットでちょっと調べただけでも多くの企業が既に持っているものかもしれません、最悪は既に数社が事業化している場合もあります。
経営コンサルタントを行っていた頃は、年間数十社の上記のような事業売込み案件が持ち込まれました。
銀行からの紹介、ベンチャーキャピタルからの紹介、或いはビジネスパートナーからの紹介、サイトからの問い合わせとルートは様々です。
中には、それで上場したいと言う経営者までいました。
しかし、数時間調べただけで多くの企業が既に商品化していたり事業化したりしているものばかりです。
少なくても事業化する前に関連技術や商品の有無、また特許事務所に依頼して同様の特許の出願の有無については調査すべきです。
ただ彼らの気持ちは凄く解るのです、誰しも自分のものは凄い技術や他に無いサービスだと信じたいものですから。
ズバリ、技術系やサービス系ベンチャー企業においての経営の落とし穴の多くは「アイデアや技術に自惚れて胡坐をかくこと」です。
これは完全にプロダクツアウト型の発想です、良い物を作れば売れるという幻想に過ぎません、既にこの段階でいわゆる「ビジネス・パラドックスの罠」にはまってしまっているのです。
成功する企業はマーケットイン型、つまりは世の中が欲しているものを作ったりサービスする企業です。
ベンチャー企業の成功方程式は「良いものを作れる技術」では決してありません、ベンチャー企業とはいえ営利を目的とした法人です、決してボランティアではないのです。
そして投資家評価のポイントは、「利益を継続的に右肩上がりで出して行けるか」なのです。
凄い物を作れる企業や凄いことを考え出した企業なんて世の中に5万とあります、企業とは利益を出して行けるかが勝負です、そう考えて発想の転換をしていただきたいものです。
ただし、本当に他者にできない良い物やアイデアなら別です、これは自動的に利益に変わります。
本物かどうか、それを見切れる目を持つこと、これもまた成功する経営者には重要なことです。
当社の支援で法人化したクライアントさんからバッシングにより売り上げが大幅に減少して困っているという相談がありました、バッシングされているのは例の匿名で投稿できるBBS、確かにそのクライアントの個人名やビジネススキームの名称で検索するとトップに出てきます。
売り上げ推移表を見るとそのスレッドがローンチした時期と同期しており、申し込み者からの解約や振り込みしてこない人も多くなったと言います。
弁護士を通じて掲載の削除を求めたが応じてくれないということで、生活に支障が出るほど深刻な状況でした。
本人は投稿されている内容の事実無根を私に訴えますが、問題意識の方向が違うのではないかと思うのです。
対策手段は別としてバッシングされた人が最も考えなくてはいけないことがあります、それはバッシングされている内容が真実か否かということではありません、重要なのはバッシングされたという事実なのです。
つまり重要な真実は、バッシングされるような恨みを人に持たれてしまったということです。
まず深く反省し、そして犯人の目星がついているというのであれば早期に会って面と向かって真摯に話し合うべきです。
こういった人間関係の縺れに際して、自身は表面に出ず他者を介して解決しようとする行為もまた極めて感心できません、そういうところが更に恨みを増長させてしまうのです。
潔く、起きた事実を真摯に受け止め、自身の起こした問題であれば自身の手で解決させるという覚悟と姿勢と行動が重要なのです。
結局自身に不都合な事実が起きるのは全てが自身が行動してきた結果なのです、これを素直に認めることです。
バッシング問題の相談は少なくありません、SNS投稿を見て「事実を知って裏切られた」というような内容のメールが毎日のように届いて精神的に参っているという相談もありました。
そのメールを読ませてもらいましたが、確かに厳しい内容ですが実に冷静に書かれています、決して悪意があるような内容ではありません。
公開した記事は誰が見ているか解りません、責任ある表示や投稿に心がけることは経営者としての責務として当たり前のことなのです。
台風や暴風雨で海が大荒れでも、表面だけで実は水面から僅か10メートル以下のところでは平穏そのものです。
また逆に快晴で波も無く穏やかな海であっても、水面下では激しく海流がぶつかり合っている場合もあります。
人も会社も、実はこれに似た現象が多々あります。
勢いよく営業展開を行って経営陣も多忙を極めているが、その裏には多大な赤字脱出計画中で経営にまるで余裕ない状況であるかもしれません。
また表面上の動きが静かになった時は、水面下では余裕資金を使い成長路線に向けた大きな変化が起きているなんてことも珍しくはありません。
人も企業も、どんな現象においてもその表面と見えないところの実態とはイコールではないと思った方が無難です。
例えば支払いトラブルなどは被害者からクレームなどが出てきます、まだこの場合は相手の出方や動きが解るので実は怖くはないのです。
本当に怖いのは何度かのアクション後に動きが無くなったときです、確実にある策が水面下で動いていると思った方がよいでしょう。
人も企業も同じです、たとえクレームであっても言われているうちはまだ大丈夫なのです。
しかし、静かになった時は「諦めた」などと甘く見たら取り返しのつかないことになります。
相手はクレームの対処によって状況や態度を見極めています、言っても駄目なら言わなくても解決する方法を探ることになります。
クレームに対応するのが面倒だと逃げていたら本当に面倒なことになります、何事も逃げて解決することなんて有り得ないのです。
昔から「Noマンは会社を変える」などと言われています、企業発展には確かに無理なことは正直に「No」と言える社員は欠かせない存在です。
会議に関わらず社長や上司の方針に「Yes」ばかりでは企業は成長していきません、他者の考えに絶対や完璧というものはありません、欠点やおかしなところがあると思えるのであれば「No(異議)」を唱える事ができる人が企業を変えていくうえで重要な存在なのです。
また、その「No(異議)」を聞けない、聞こうとしない社長や上司では企業を正常に運営させ成長させることは難しいでしょう。
誰しも会社を良くしたいと願うのは当たり前なのです、その方法や施策に対してはそれぞれの考え方が異なるのもまた当然です、そこには新入社員も先輩も社長もありません。
つまり向上的に議論をする場合、「Yes」もあれば「No」もあって極自然なのです。
それぞれの考えや施策を討論することで、初期の発案が熟成され皆の協力を得られる皆のための施策となっていくのです。
したがって、この場合の「Yes」と「No」は同意語なのです。
ただし、発案に対して何の考えもなしに自分の都合悪い事などを理由にした反対意見、これは「No」ではありません、これは「No(異議)」でなく拒否である「Not」なのです。
「No」と「Not」は似て大いに異なるもの、また「Not」人間を放置している経営者は確実に組織を弱体化させます。