
事業計画書(10)
資本政策
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書にはいくつかの使い道がありますが出資を募るための目論見書として使う場合は資本政策は重要な項目になります。 目論見書における資本政策は細かな株式設計や複雑な計算を示すことが目的ではありません。「この事業にお金を出すと、どのような関係になるのか」を相手に誤解なく理解してもらうための説明です。
出資者が知りたいのは事業の主導権がどこにあり意思決定がどのように行われるのかという点です。 加えて出資によって自分がどの程度の影響を持つのか、どこまで関与できる(あるいは関与しない)のかも重要になります。 誰が経営の責任を持ち続けるのか出資者は経営にどこまで関与する想定なのか。その前提を明確に示すことが目論見書の資本政策の役割です。
そのため目論見書では、現在の株主構成と出資後にどういう状態を想定しているかというイメージを示せば十分です。 最初から完成された資本政策を提示する必要はありません。 むしろ現時点での考えを正直に示してどのような前提で事業を進めようとしているのかを共有することが信頼につながります。 資本政策は条件交渉のための武器ではなく相互理解のための説明資料です。

事業計画書(9)
事業内容 財務諸表
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書で最後に避けて通れないのが数字の説明です。 数字は単に「売上はいくら、利益はいくら」と結論だけを書くことではありません。 販売計画で立てた前提を基準にし「なぜその売上になるのか」を根拠をもって示し、その結果として会社の利益と資金繰りがどう推移するのかを説明します。 この数字は計画全体が現実に回るかどうかを判断するための材料です。
複数年度の事業計画では財務三表がそれぞれ違う役割を持ちます。 損益計算書(PL)は事業がどうやって儲けを生むかを表します。 販売計画で見立てた顧客数、単価、成約率、継続率などの前提を売上に落とし込み、そこから原価や人件費、販管費を積み上げ、利益がどのように生まれるのかを示します。 単年度だけでは成長の道筋が見えにくいため基本形としては三年から五年程度の複数年度で作成し、どの時点で単年度黒字化するのか、どの費用が増えるのかを説明できる形にします。 近年は外部資金を使う計画では三年程度で単年度黒字化の見通しを求められる場面も多く黒字化の時期を曖昧にしないことが重要です。
貸借対照表(BS)はある時点で会社が何を持ち、何を背負い、資本がどれだけあるかを示します。 本来は非常に重要な表ですが、実務では計画の骨子を示す段階ではBSを簡略化し、後述するキャッシュフロー計画と整合が取れる範囲で扱うことも少なくありません。
そして複数年度計画で最も重視されるのがキャッシュフロー(CF)です。 利益が出ていても現金が尽きれば事業は止まります。 逆に赤字でも手元資金が確保できていれば次の打ち手を打てます。 CFでは売上がいつ入金されるか、費用がいつ支払われるか、設備投資や開発投資でどのタイミングに現金が出ていくかを扱います。 さらに出資(増資)や借入、返済といった資金調達の動きもここに入ります。 実務で作るCFには、期首の現金残高、当期の増減、期末の現金残高が明示され翌期へ繰り越されていきます。 「この計画は資金ショートせずに回るのか」「どの時点で追加の資金が必要になるのか」がはっきり提示します。
もう一つ、計画の説得力を上げる指標として損益分岐点があります。 固定費と変動費の構造から「売上がどの水準を超えると黒字になるのか」を示すものです。損益分岐点は単に黒字赤字を判定するためではなく、どれだけ売上が落ちても耐えられるか、逆にどこまで売上を積めば利益が出るかという事業の耐久力を測れます。 売上計画と費用計画が結び付いているかを確認する意味でも有効です。
基本形として押さえるべきことは単純で、販売計画で置いた前提から売上を根拠をもって導き、その売上を複数年度のPLに落とし込み、さらに資金の流れとしてCFで追いかけることです。 事業計画書は根拠のある前提から数字を組み立て、計画が現実に回ることを説明するための資料となります。

事業計画書(8)
事業内容 販売計画
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
販売計画は後に続く損益計画(PL)の売上を「説明できる数字」にするためのパートです。 PLに金額だけが書かれていてもそれがどの事業セグメントの「誰に、何を、いくらで、どれだけ売る」前提なのかが見えなければ数字は願望として扱われます。 したがって販売計画ではセグメントごとに売上の算出式を示し、その式を構成する前提条件と根拠を添えることが必要です。
ただし現実には、特に初期段階の計画ほど「数量、単価、成約率、継続率」などの多くが想定になります。 重要なのは想定を避けることではなく、確定している材料と想定部分を切り分け、想定には妥当性の理由を与えることです。 既存契約や発注見込み、過去実績、具体的な引合い、顧客ヒアリングなど、根拠として提示できる材料は明確に書きます。 一方で材料が不足する部分は、類似事例、テスト販売やPoCの結果、営業の状況などから仮説を記載し、なぜその数値になるのかを購買プロセスや導入障壁、意思決定構造などとと結び付けて説明できれば良いです。 読み手が知りたいのは当たるか外れるか以前に、数字がどう組み立てられ、どこが想定なのかということです。
そのためには売上を分解して示すのが有効です。 対象顧客数、成約率、平均単価、継続率といった変数に分け、売上がそれらの掛け算として表せる形にしておけば読み手は前提を見て検算できますし「どの変数が過大なのか」「どこを改善すべきか」も検討できます。 想定が多い場合でも式と前提が見えるだけで計画は十分検討可能な形になります。
また販売計画では商流の想定を必ず置きます。直販か代理店かといった販売体制に留まらず、誰が支払者で誰が契約主体で誰が請求し入金はいつ回収され粗利はどこに残るのかまで明確にすると説得力が増します。 すべてを確定できないとしても、現時点での想定を書き、その想定を採る理由と想定が変わった場合に影響を受ける項目を示すと、読み手は前提の妥当性を判断できます。
販売計画は長文で語る場所ではありません。 1~2枚程度に、セグメント別の算出式、前提条件、根拠、商流の想定を簡潔に並べ、後段の財務計画へ橋をかけることが目的です。 完璧な未来予測ではなく現時点の材料から無理なく組み立てられた計算と仮説の置き方のルールが読み手の信頼を作ります。 そうして初めて事業計画書の中で最も重要な売上計画が信頼に足る形になり、以降の財務計画も意味を持ちます。

事業計画書(7)
事業内容 事例・ユースケース
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
事業計画書における事例・ユースケースは、事業が現場で成立するか同様の組織へ展開できるかを示すための項目です。 読み手が知りたいのは「誰が、どの状況で何に困り、導入後に何がどう変わるのか」です。 したがって前提条件・課題・解決の流れを具体的に整理して記載します。
まず想定する業界と企業像を明確にします。 業界、企業規模、導入主体(誰が使うのか)を具体化し適用範囲を示します。 実名は不要ですが「中堅製造業で複数拠点を運営する企業」など状況を想像できる表現にします。
次に現場で起きている課題を書きます。 例えば検査業務を行う現場で、手作業の記録が残り情報が散在しているため集計や報告のたびに確認・転記・整合確認が発生し手戻りが起きる状態が発生している等です。 増えている作業や詰まっている工程を具体的に示します。
そのうえで解決後の運用の変化を示します。 「誰が、いつ、何を行い、何が不要になるか」を書きます。 記録の扱いが統一され、入力・確認・集計が標準化されることで提出物作成や確認手順が簡略化されるといった変化を具体化します。 利用者の負担が増えないことも併記すると導入可能性が伝わります。
最後に横展開と波及効果を述べます。同様の課題が「複数拠点・複数部署で記録と報告が発生する組織」に広く存在すること、導入が広がれば手順や提出物の標準化が進み調整コストが下がることを簡潔に整理します。
事例・ユースケースは、「対象」「課題」「導入後の変化」「展開・波及」を運用をイメージできる形で書くことが重要です。

事業計画書(6)
事業内容 優位性
本記事は中小企業向けに「基本形の事業計画書」の概要を説明するものです。 これまで私自身が代表に教えていただいたことをまとめています。 事業計画書には出資を募る目論見書、共同事業の提案書、補助金申請に付す計画書など複数のタイプがありますが、ここでは初めて作成する方に向けて共通する考え方と構成の骨子を示します。
今回は「優位性」の書き方です。 優位性とは、同じ課題を解決する選択肢がある中でなぜ自社が選ばれるのかを説明する部分です。 読み手が安心して他社と比較できるよう、主張だけで終わらせず比べる材料と根拠をそろえて示します。 その整理のツールとしてSWOT分析を用います。
SWOT分析は事業を4つの視点で整理する方法です。 自社の内側にある「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」と外部環境にある「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」に分けて書き出します。 SWOT分析で状況を整理し選ばれる理由を筋道立てて作れるようになります。
まず強みは「お客様にとって分かりやすい良さ」を中心に書きます。 たとえば問い合わせや見積依頼が増えている、試し導入から本導入に進む割合が高い、紹介が多い、といった事実は需要の強さを示す有力な根拠になります。 また価格と原価の関係が説明できて採算が合う、継続的な収入につながる仕組みがあるなど、「売れたら無理なく利益が残る形」が見えていることも大きな強みです。 さらに、技術や知財、ノウハウ、取引先との関係、積み上がるデータなど、同じ提供を再現するのに時間やコストがかかる要素があれば、「真似されにくさ」として大きな強みになります。
次に弱みは隠すよりも信頼を高める材料として扱います。 実績がまだ少ない、特定の人に頼っている、対応人数が少ない、保証や責任の範囲が曖昧、事務作業が追いつかない、といった点があるなら、そこで止めずに「だからこう改善する」と弱みに対する改善策をセットで示します。弱点を把握しその対策をを示せる会社は読み手に安心感を与えます。
機会は外部環境の追い風です。 ここが自社の強みと噛み合うほど説得力が増します。 たとえば、人手不足で効率化のニーズが高まっている、取引先から品質や管理の要求が厳しくなっている、行政の支援制度がある、特定業界で同じ困りごとが増えている、など「いま顧客側で導入の理由が強くなっている背景」を整理します。
最後に脅威は外部環境の向かい風です。競合が増える、値下げ競争になる、既存ツールで代替される、景気によって投資が止まりやすい、といった現実を挙げたうえで、影響が大きいものから優先的に捉えます。
ここまで整理できれば優位性を作り出すことができます。基本は強み×機会で「追い風が吹いている場所で勝てる理由」を言葉にし、弱み×脅威は短く対策まで示して不安をつぶすことです。最後に文章としては、結論→理由→根拠→対策の順で整えると、読み手が比較しやすい優位性の説明になります。