2023年7月24日 07:00
コインチェックによる「NEMコイン」の流出問題はいまだに記憶に新しい人も多いでしょう、それ以前にも「NEMコイン」はシステム障害によって大きなダメージを被ったばかりです、この裏にはどんな事情があるのでしょうか?
仮想通貨はそもそもブロックチェーンによって管理されている実体のない価値を持った数字です、その取引に関してはブロックチェーンの取引保障と改ざん不能という機能に頼っています。
しかし実際に顧客との間で取引を行うのはブロックチェーンそのものではなく、ウォレット(口座)を介して取引システムによりシステマチックに行われています。
つまりブロックチェーンの取引台帳は保護されているものの、ウォレットに関しては別の仕組みによってセキュリティを図られなければならないのです。
顧客のウォレット管理においては一般的に「マルチシグ」という方式によってセキュリティが強化されています、ところが先の「NEMコイン」に関しては導入するという広報は流れていたものの見送られてきた経緯があります。
この「マルチシグ」とは一ヶ所にIDとパスワードを保管するのではなく、それぞれのパスワードを分割して複数のノード間で分散保有するという仕組みです。
これによって一ヶ所のノードがハッキングされても、ウォレットに辿りつくことはできずにコインが不正に送金される事もありません。
今後の仮想通貨は「マルチシグ」導入が必須になることは間違いありません、更に言えば安全なウォレットサービスが必須になります。
強固なウォレットを誇る仮想通貨が望まれる時代になるのです、何故なら仮想通貨は金融資産という位置付けになったのですから。
思えばバブル経済期直前に多くの銀行や証券会社がネット取引サービスを開始しました、当時不正アクセスによる送金や取引詐欺が横行しテレビや新聞を賑わした記憶が蘇ります。
その都度に金融機関のセキュリティ能力は大きく飛躍し現在の安全な取引の提供に繋がっています、仮想通貨による新たな秩序の誕生とは事件や事故をきっかけに一つのスタンダードが出来あがっていくものです。
また世界的なスタンダードが構築されたとき、それはもう話題性の世界から実世界へと浸透していくことになります。
仮想通貨の隠れた課題の表面化、これを良しとみるか悪とみるか、ここで言える事はたった一つだけです、「既に仮想通貨は政府や金融業界だけではなく社会において無視できない存在になっている」ということです。