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数あるオーディオメーカーの中にあって、BOSEほどオーディオマニアから酷評を食らっているスピーカーメーカーはありません。
酷評の多くは、業務用の小型スピーカーをベタ置きして鳴らしてみての評価などです。
解っている人はこういった使い方もしないし酷評を上げることはしません、業務用と解っていてその有益な使い方を探る方の道を選びます。
ちなみに、BOSEの小型スピーカーを狭い部屋のラックにベタ置きしてニアリスニングで聴くと聴くに堪えない音色がします、特に何ともいえない低音域の響きが気になり音楽鑑賞になりません、更に高音域がほとんど出てこないのです。
ところが、同じフルレンジ一発の小型スピーカーを20畳ほどの部屋の天井の隅に設置すると豹変します。
あれほど気になっていたブーミーな低音の意味が解ります、低音域は大きな部屋だと部屋全体に響かなくなります、つまりあの独特な低音はこういった使い方を研究して作られた味付けなのです。
大きな部屋での空間ハーモニック効果によって出ていなかった高音域も綺麗に聴こえてきます、ボリュームを上げるとまるで大型スピーカーでも鳴らしているのではないかと思えるほどのぐいぐいと迫るパワーを感じます。
本来101や201などの小型スピーカーは天井の角に設置し、3方の壁の反射で空間ハーモニックス効果によって聴かすスピーカーです、そもそもBOSEスピーカーは直接聴くスピーカーではなく間接的なハーモニック音を聴かせる為の設計をしているのです。
こういった意味では、喫茶店やカラオケスナックなどでは天井吊り下げ型のBOSEスピーカーを使うのが当たり前で、どこでも快音で鳴っているのはよくご存じかと思います。
ちなみにハーモニック効果とは絶大で、他のメーカーのスピーカーだとハウリング(マイクを使うと「ピー」となる音)を起こすような狭い部屋でもBOSEだと起きないのです。
普通は酷評を食らうと慌てて「正しい使い方」的な情報をサイトに上げたりするものですが、BOSEは昔からこういったことを一切せずに大人の対応をしています。
ある意味では、宣伝も何もしなくても施工業者は音質的なトラブルが無く依頼主から文句の一つも出ないBOSEスピーカーを次々に購入しては設置しています、その意味ではプロの評価は最高レベルだと思います。
価格も昔は高額でしたが、価格変動が無いので今ではリーズナブルな価格帯でしかも競合だったダイヤトーンも事業閉鎖したこともあり、マイペースに事業推進しているのでしょう。
ときどきパーソナル使用やホーム使用でのスピーカーを出しますが、大きな宣伝もしませんし勝手に売れていくのを待っているという余裕が見られます。
王者の余裕は往年のJBLやアルテックを思い起こします、やはり王者は強い、その強さに支えられた余裕は更に企業を成長させていくようです。
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オーディオに限らずどんなジャンルの製品もそうですが安物はやはりそれなりの理由があります、オーディオで安価な製品というと「エントリークラス」と呼ばれるのですが、ここで言うのはそういうレベルの話ではばく取りあえず安く済ますために無名メーカーの物を買うことだけは止めた方がよいという話です。
オーディオメーカーの製品はどんなにエントリークラスの製品でもサーキットブレーカーなどの保護回路が入っており、オーバーロード(過電流)やサージ(逆起電力)に対して内部回路にロックがかかるようになっています。
これが無名の安物だとそういった保護回路が組み込まれていません、そしてたった一台の安物によりシステム全体に被害が及ぶこともあります。
オーディオはシステムであり、入口のプレーヤー類から出口のスピーカーまで全てが電線によって繋がれているのです。
例えば雷や回路部品の接触によるオーバーロード、例えば扇風機や電動ドリルなどでのサージ電流、普通の時には何でも無いのですが起こる時には予想できないことが起きてしまいます。
大学時代に私の友人に起きた悲惨な事件があります、音楽を楽しんでいる時に運悪く近所の電柱に落雷しカセットプレーヤーにオーバーロードが入り発煙、その際にスピーカーから爆音がしてアンプからスピーカーまで全て壊れてしまったのです。
アンプは国産なので電源からのオーバーロードは防げますが、ライン入力にオーバーロードがかかった場合にはフィルター回路も飛んでしまうので意味がありません。
こんな笑い話のような話はマンションであればマンション内の電源が保護されているので安心ですが、一軒家や小規模アパートであれば今現在でも本当に起こりえます。
オーディオは必ず名の知れたメーカーの製品を選び、メーカー保障+販売店保障が付いた正規ルートで購入することをお奨めします。
もう一つの安物の恐怖は詐欺製品です、実際ネットに上がっている詐欺報告ですが「真空管アンプを買ったら中身は安物のD級アンプで、真空管はヒーターだけ結線されており点灯しているだけだった」とか、「ラインアンプという製品を買ったら入力セレクタのスイッチしか付いていなかった」などというとんでもない製品が存在しているようです。
まあ、オーディオに限らずどの世界でも安物はやっぱり安物です、そして「安物買いの銭失い」にだけはならないようにしましょう、お金が貯まらない人は結局こういった安物を買ってしまうので結果的に使い物にならないかすぐ壊れてしまい、常に次から次へとお金が出ていくはめになるのです。
正規メーカーのオーディオ製品は新規で購入する際には現役のものをそれなりの価格で下取りしてもらえます、その意味ではエントリークラスの製品は別にしてミドルクラス以上のオーディオ製品は家電量販店ではなくオーディオ専門店で購入する方が結果的にお得です。
何故なら他店で購入した製品よりもその店で購入した製品は下取り価格を倍にしてくれるからです、特に高級ハイエンド製品や人気のミドルクラス製品は買った時よりも売った価格が高かったなどというスーパープレミアム製品も存在します。
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バブル景気まっただ中の80年代中盤頃から、友人と時々ジャズライブを聴きに行っていました。
当時は新宿や銀座・六本木など至る所にジャズやロックのライブハウスがあり、飲んだり食べたり居酒屋同然に気楽に楽しめて、飲食代にプラス2000円程度で生演奏が聴けるのですから当然何時行っても満員でした。
そんなライブハウスで使われているオーディオセットは、当然のこと業務用のPAオーディオです。
その音たるものは「何なんだこれ!」ものの迫力ある爆音で、正直ハイファイオーディオのSN比(ノイズ特性)とか周波数レンジだとかどうでもよくなってしまいます。
重低音は足元からビリビリと身体で感じて、中高音域は皮膚を通して身体を貫くほどに鋭く刺さります。
それでいてまったくうるさく感じず、友人との話し声もしっかりと聞こえるのです。
そんなPAオーディオの音を聴いては、PAスピーカーやPAパワーアンプなどを買って家でもミニライブハウスもどきで愉しんだものです。
バブルの頃には照明にも凝って、ライブハウスのようなスポットライトを幾つも付けてライブ録音のCDをビールを飲みながら週末には朝方までドンシャリ音で聴いていたものです。
業務用のPAオーディオは野外でも使う事を想定していますから、埃や水滴が付いても壊れないような構造をしています、また多少乱暴に扱ってもびくともしません。
それでいて、ハイファイオーディオと同程度のスペックなら価格は半額程度です。
ジャズやロックファンなら、下手なハイファイオーディオを見栄で買うよりもPAオーディオ製品を素直に買った方が思いっきりライブ感を愉しめるのではないかとさえ思います。
「低音が・・」とか「高音が・・」とか見え透いた話しではありません、そんなもの出て当たり前で全音域がバリバリに張り出してないとPAとは言えないのですから。
今現在でも当時のPAオーディオの製品の幾つかが手元に残っています、先日久しぶりに音出ししてみました、やはり音の張り出しはハイファイオーディオの比ではありません、ちなみにこのときはCDプレーヤーをPAパワーアンプにダイレクトに繋いで中型PAスピーカーで試聴しました。
10年ぶりのライブ感に包まれて、正直な話しもう一度当時のホームライブハウスを拡大させて再現してみたくなりました。
小型や中型のPAスピーカーではなく、大型の本格的なライブハウスで使うPAスピーカーをメインに使ってパッシブタイプのバカでかいサブウーハーを専用パワーアンプで繋ぎ、身体で感じる爆音ホームシアターやホームカラオケを是非近未来に実現させたいと思います。
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70年代中盤から80年代中盤にかけて、オーディオ界にDCアンプなるものが存在していました。
当時の高級ハイエンドセパレートアンプや、ミドルクラス以上のプリメインアンプに採用されていたDC増幅回路とは、0Hzつまり直流から増幅できるという恐ろしいアンプでした。
ちなみに、DCとは直流の事で交流はACと言います。
音は当然空気の振動ですから、音楽音源も通常20Hz~20Khzほどの周波数帯域の交流なわけです。
しかし、自然界にはあらゆる周波数帯域の音が存在しています、ただ人間の耳には聞こえないだけです。
例えば波や風の音には5Hz以下の重低音まで含まれています、和太鼓なども単一周波数ではなく10Hz以上の各種の周波数帯域の音の合成によって人間の耳に和太鼓の音として聴こえるのです。
つまり、人間の耳には認識できなくても自然界に存在する音をそのままに再現しようとすると可聴域以外の低い周波数と高い周波数を増幅できるアンプが重要になります。
そこで誕生したのが究極のDCアンプだったわけです。
セパレートアンプではトリオのパワーアンプL-05M、プリメインアンプではサンスイのAU-DシリーズなどがDCアンプの代表格です。
他にも、70年代のヤマハのアンプA-5などはエントリークラスでもDCアンプです。
更に凄いのは周波数レンジの幅です、通常はA級ハイエンドアンプでも20Hz~100KHzですが、サンスイのDCアンプは0Hz~300KHz、トリオの場合は0Hz~600KHzもあり、高域特性も極めて高いのです。
このDCアンプの投入で、サンスイはプリメインアンプのシェア40%以上と一気にアンプ界の頂点に上り詰めたのです。
しかしレコードの再生などで、レコードに傷が有る場合など重低音域の電流がスピーカーに流れコイルを破損する事があります。
そこで、レコード再生時は10Hz以下の音をカットするサブソニックフィルターを付けるという工夫までされているのです。
CDの場合は、音源そのものに20Hz以下は入っていませんのでフィルターオフでも何らの問題もありません。
これらのDCアンプと38Cm口径以上のウーハーで聴く重低音は、もう音ではなく風圧を身体に感じるほどです。
大音量で聴くと、バスドラの重低音でテーブルの上のグラスなどがカタカタと揺れる事もあります。
本物の重低音、一度聴いたら確実に虜になります、こうしてハイファイオーディオの道にずっぽりとハマっていくのです。
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日々コレクションアンプやスピーカーの動作確認を兼ねた音質確認を行っているのですが、ここで面白い結果が表れてきて驚いています。
その面白い結果とは、90年代のハイコンポの音質が極めて優れているということです。
シャーシサイズに合わせて定格出力を下げ、高性能ながらも軽いトロイダルトランスを使用するなど各オーディオメーカーは安価ながらも音質を向上させた製品を大挙投入しました。
事実として、同年代の同メーカーの3倍以上もするミドルクラスのアンプよりも軽快な愉音がするハイコンポが多いのです。
設置も移動も軽量なので楽ですし、ダイニングや寝室で使うサブシステムに選んだ候補の多くがハイコンポだったのは必然でした。
低出力とはいえ、70年代のプリメインアンプ以上の出力でパワー不足はまったく感じません、むしろボリュームつまみが9時の位置でも大きすぎると感じるほどです。
オーディオ道楽黄金期は、サンスイの重量級アンプにダイヤトーンの大型ブックシェルフがメインだったので、小型ブックシェルフやハイコンポ類は確認のための投資という感じでろくに聴き比べもせずストックしてしまっていたのでしょう。
今考えるとなんてもったいないことをしていたのかと後悔しきりです、現在こういったハイコンポたちを存分に使ってあげようと各種の計画を練っています。
ハイコンポは音質が良く消費電力が少ないのも魅力で、高性能なプリアンプとチャンネルデバイダーを使ったマルチアンプシステムのパワーアンプとかAVアンプのプリアウトに繋いで音質改善とか利用方法は幾らでもアイデアが出てきます。
それが可能となるのはこういったハイコンポの多くがプリ部とパワー部を分けて使用できるというスペックになっているからです、これも驚きの機能なのです、80年代までは高級プリメインアンプにしか採用されていなかったスペックなのですから。
こういうスペックを見ても、パワーアンプ部の音質に自信があるという根拠を見つけることができます。
90年代のハイコンポ、何か急に親近感を覚えてしまいました。