
「歴史は繰り返す」とはいえ、こと電化製品に関しては進化するのみで旧技術に戻ることは普通は有り得ません。
ただしオーディオだけは例外のようです、2000年以降に20年以上前に廃れたはずのカセットテープ&カセットデッキが復活し次いでレコードを聴く為のレコードプレーヤーが復活し新製品の製造も開始されています。
更には70年代にトランジスタ全盛時代を迎えたアンプも真空管アンプのブランドが乱立し今更ながら脚光を浴びています、真空管アンプの大御所であるラックスマンも近年久しぶりに真空管アンプをリメイクし復活させました。
このアナログの復活は私的には大歓迎です、何故なら1000枚以上もあるジャズレコードが再び最新のレコードプレーヤーで聴くことができるのですから、更にはレコードプレーヤー用のイコライザーまで最新デジタル技術を駆使した新製品が誕生してきています。
そもそもオーディオは最終的にはアナログ回路によって電流増幅されスピーカーで空気振動(アナログ)に変換されるわけです、つまりオールデジタルでは音にならないのです。
そういう意味では音質を最終的に決めるのはアナログ回路です、であれば入口から出口までオールアナログの方が音質をコントロールしやすいというのも納得できます。
デジタルオーディオの雄であるCDプレーヤーは、内臓のDACによってアナログ出力する機械という割り切りによってアナログメディアであるカセットテープやレコードと共存できます。
つまりアンプはDACを排除したフォノイコライザーとアナログ増幅機に注力でき、アナログによる音質向上に注力できるようになります。
まさかのアナログ復活、この時代が来ることを正確に読めていたならサンスイはどんなことをしても生き残りを図ったのでしょう、時代の変化とは企業も人も大きなチャンスでもあり逆に大きなピンチでもあるのです。
「歴史は繰り返す」、これを信じて再び天の時が来るのをじっと耐えて待つのか、それとも積極的に変化に順応するのか、この選択をした2者は生き残りそのどちらも選択できなかった中途半端に時代に翻弄された者は確実に淘汰されるということです。
どの時代もどの業界も、生命体も技術や機械もこれに関しては例外はありません。

私が小学生の頃に日本発の真空管式のコンピューターが誕生し、その後急速にコンピューターが進化しました。
中学生のころからコンピュータに憧れていた私は高校は電子工学を学べる工業高校に進学し、大学は当時コンピューターを自由に使える唯一の工学部を持つ大学に進みました。
そして大学卒業後はコンピューター業界へと進み、プログラマーが皆無の時代にソフトウェア業界にシフトしていきます。
つまり、私の年代はコンピューターの歩みと人生がシンクロしているので順次最新技術に触れる事ができ自然な形でIT技術とデジタル工学を学んでいけたのです。
その点では2000年以降にIT業界に入ってきた人は大変です、過去の事例や技術を学ばないと今に活かされた技術の核心が解らないのですから。
現存するOSやアルゴリズムの多くは、全て80年代から90年代に確立され進化を遂げてきた技術です。
したがって、そのアーキテクチャーの根本原理を知らないと100%活かした新たなアルゴリズムを生むことができないのです。
だから今、ITアーキテクチャやアルゴリズムの権威と評される人は皆60歳以上という高齢者ばかりなのです。
なので若い人は後追いで過去の核心技術を学ぶ必要があるのです、今習得すべき技術と過去の技術の両方を学ぶのは相当厳しいと思います。
オーディオ道楽も然りなのです、オーディオもITとほぼ同時期に同様に進化してきたのです。
私が小学生時代に真空管だったオーディオ製品は中学時代にはトランジスタに、高校時代にFETやパワーICに推移していきます。
その時代を代表する回路や部品、またメーカー別製品の特徴もオンタイムで少しずつ覚えていけば良かったのです。
オーディオソムリエではありませんが、私は過去の製品の品名を聞けばメーカー(ブランド)・発売年・価格・増幅回路方式(アンプ)・ユニット構成(スピーカー)・エンクロージャータイプ(スピーカー)・特徴をほぼ完璧に言い当てる事ができます。
これは、少しずつ覚えていけば良く無理なく自然に記憶できた産物です。
冒頭のIT同様にオーディオも最近始めた人は大変です、メーカーによる製品の特徴も誕生した経緯も知らないので同じ金額でも価値のある製品を目利きすることができません。
その時代の価値のある製品は必ず将来プレミアムが付きます、またその音色は独特の価値ある音なのです。
「経験に勝る術は無し」、道楽の世界でも例外なく通じるようです。

スピーカーユニットで、特にウーハーやフルレンジはしばらく使っていると自然に本来のユニットの持つ音質に変わってくると言われています。
これを、熟成させるという人もいますが正しくはエージングと言います。
靴は履き慣らして捨てる前が一番しっくりと足にマッチするように、スピーカーもエッジが劣化してきて破れる直前が一番良い音がするのかもしれません。
ただ、私的には硬く締まった音が好みですから、エッジが柔らかすぎるユニットは敬遠する傾向があります。
私の経験の中で、エージングによって最も音が変化したのは12Cm口径のフォステクスのスピーカーユニットFF-125です。
買ったばかりの頃は、中音域と高音域がうるさく感じて長く聴くことが出なかったのですが、数日鳴らし込んでみると低音域も伸びてきて全体的にバランスが取れて聴きやすい音に変化してきたのです。
正直、他のスピーカーで鳴らし込んで音が劇的に変化したという経験はほとんどありません。
ただ、数年間使ってなかったスピーカーを久しぶりに聞くと、ちょっと音が変わった気がするのは確かです。
これを、しばらく鳴らしているとまた元の音に近付いてきます。
スピーカー自体はパワーをかけて鳴らしていると熱を発します、この熱によってコイル近くのダンパー等が柔らかくなることが考えられます。
まあ、効果の程は解らないのですがエージングを日本語では「枯化(こか)」と言います、つまり枯らしているわけです。
音が良くなると言われて、音楽を聴かないのに数日間鳴らし込むというのはどうなのかとも思います。
もしかして、マニアの言葉を鵜呑みにしてスピーカーの寿命を縮めているだけなのかもしれません。

数あるオーディオメーカーの中にあって、BOSEほどオーディオマニアから酷評を食らっているスピーカーメーカーはありません。
酷評の多くは、業務用の小型スピーカーをベタ置きして鳴らしてみての評価などです。
解っている人はこういった使い方もしないし酷評を上げることはしません、業務用と解っていてその有益な使い方を探る方の道を選びます。
ちなみに、BOSEの小型スピーカーを狭い部屋のラックにベタ置きしてニアリスニングで聴くと聴くに堪えない音色がします、特に何ともいえない低音域の響きが気になり音楽鑑賞になりません、更に高音域がほとんど出てこないのです。
ところが、同じフルレンジ一発の小型スピーカーを20畳ほどの部屋の天井の隅に設置すると豹変します。
あれほど気になっていたブーミーな低音の意味が解ります、低音域は大きな部屋だと部屋全体に響かなくなります、つまりあの独特な低音はこういった使い方を研究して作られた味付けなのです。
大きな部屋での空間ハーモニック効果によって出ていなかった高音域も綺麗に聴こえてきます、ボリュームを上げるとまるで大型スピーカーでも鳴らしているのではないかと思えるほどのぐいぐいと迫るパワーを感じます。
本来101や201などの小型スピーカーは天井の角に設置し、3方の壁の反射で空間ハーモニックス効果によって聴かすスピーカーです、そもそもBOSEスピーカーは直接聴くスピーカーではなく間接的なハーモニック音を聴かせる為の設計をしているのです。
こういった意味では、喫茶店やカラオケスナックなどでは天井吊り下げ型のBOSEスピーカーを使うのが当たり前で、どこでも快音で鳴っているのはよくご存じかと思います。
ちなみにハーモニック効果とは絶大で、他のメーカーのスピーカーだとハウリング(マイクを使うと「ピー」となる音)を起こすような狭い部屋でもBOSEだと起きないのです。
普通は酷評を食らうと慌てて「正しい使い方」的な情報をサイトに上げたりするものですが、BOSEは昔からこういったことを一切せずに大人の対応をしています。
ある意味では、宣伝も何もしなくても施工業者は音質的なトラブルが無く依頼主から文句の一つも出ないBOSEスピーカーを次々に購入しては設置しています、その意味ではプロの評価は最高レベルだと思います。
価格も昔は高額でしたが、価格変動が無いので今ではリーズナブルな価格帯でしかも競合だったダイヤトーンも事業閉鎖したこともあり、マイペースに事業推進しているのでしょう。
ときどきパーソナル使用やホーム使用でのスピーカーを出しますが、大きな宣伝もしませんし勝手に売れていくのを待っているという余裕が見られます。
王者の余裕は往年のJBLやアルテックを思い起こします、やはり王者は強い、その強さに支えられた余裕は更に企業を成長させていくようです。

オーディオに限らずどんなジャンルの製品もそうですが安物はやはりそれなりの理由があります、オーディオで安価な製品というと「エントリークラス」と呼ばれるのですが、ここで言うのはそういうレベルの話ではばく取りあえず安く済ますために無名メーカーの物を買うことだけは止めた方がよいという話です。
オーディオメーカーの製品はどんなにエントリークラスの製品でもサーキットブレーカーなどの保護回路が入っており、オーバーロード(過電流)やサージ(逆起電力)に対して内部回路にロックがかかるようになっています。
これが無名の安物だとそういった保護回路が組み込まれていません、そしてたった一台の安物によりシステム全体に被害が及ぶこともあります。
オーディオはシステムであり、入口のプレーヤー類から出口のスピーカーまで全てが電線によって繋がれているのです。
例えば雷や回路部品の接触によるオーバーロード、例えば扇風機や電動ドリルなどでのサージ電流、普通の時には何でも無いのですが起こる時には予想できないことが起きてしまいます。
大学時代に私の友人に起きた悲惨な事件があります、音楽を楽しんでいる時に運悪く近所の電柱に落雷しカセットプレーヤーにオーバーロードが入り発煙、その際にスピーカーから爆音がしてアンプからスピーカーまで全て壊れてしまったのです。
アンプは国産なので電源からのオーバーロードは防げますが、ライン入力にオーバーロードがかかった場合にはフィルター回路も飛んでしまうので意味がありません。
こんな笑い話のような話はマンションであればマンション内の電源が保護されているので安心ですが、一軒家や小規模アパートであれば今現在でも本当に起こりえます。
オーディオは必ず名の知れたメーカーの製品を選び、メーカー保障+販売店保障が付いた正規ルートで購入することをお奨めします。
もう一つの安物の恐怖は詐欺製品です、実際ネットに上がっている詐欺報告ですが「真空管アンプを買ったら中身は安物のD級アンプで、真空管はヒーターだけ結線されており点灯しているだけだった」とか、「ラインアンプという製品を買ったら入力セレクタのスイッチしか付いていなかった」などというとんでもない製品が存在しているようです。
まあ、オーディオに限らずどの世界でも安物はやっぱり安物です、そして「安物買いの銭失い」にだけはならないようにしましょう、お金が貯まらない人は結局こういった安物を買ってしまうので結果的に使い物にならないかすぐ壊れてしまい、常に次から次へとお金が出ていくはめになるのです。
正規メーカーのオーディオ製品は新規で購入する際には現役のものをそれなりの価格で下取りしてもらえます、その意味ではエントリークラスの製品は別にしてミドルクラス以上のオーディオ製品は家電量販店ではなくオーディオ専門店で購入する方が結果的にお得です。
何故なら他店で購入した製品よりもその店で購入した製品は下取り価格を倍にしてくれるからです、特に高級ハイエンド製品や人気のミドルクラス製品は買った時よりも売った価格が高かったなどというスーパープレミアム製品も存在します。