
オーディオ道楽復活で10年間の穴を埋めようと情報収集の日々ですが各種の面白い情報が多数得ることができました、その一つに以前にも増して70年代のビンテージオーディオ製品のニーズが高まっているというのがあります。
特に、過去から名機と謳われているアンプやスピーカーが中古市場で高騰しています。
驚くのは音の出ないジャンク品まで高騰している事実です、これらは海外の業者が修理して販売している裏事情があります。
現在の補修技術は凄いものがあります、ボロボロになったスピーカーユニットも新品と変わらないほど綺麗に補修されるのです。
こういった補修済みの名機たちは驚くほどの高値が付いています、私がビックリするのは当時の販売価格もかなりの高額だった商品が現在5倍もするものが存在しています。
デザインも古臭く、スピーカーエンクロージャーなどは50年の年月で臭いが染み込んでいるのもありますが、それでも高額な金額を払ってまで何故手に入れたいのでしょう。
答えはその当時の音なのです、その音を現在再現しようとしたら1から作り上げなくてはなりません。
それを手軽に再現でき払えるお金で買えるなら安いとまで考えるのです、こういったニーズはマニアは勿論のこと買い集めているのは新規創設のオーディオメーカーなのだそうです。
温故知新、「新しきを創造するには昔の名機に学べ」ということです、こういったことは何もオーディオだけではありません、日本の自動車メーカーも同じことでした。
海外の名車を買いまくっては分解して基礎技術を学ぶのです、こういった手法を「リエンジニアリング」といいます。
アナログ復活で突然のビンテージオーディオの人気、オーディオファンとしては歓迎すべきことなのでしょう。

超激安で有名になりつつある中華アンプブランドの「LEPY」ですが、そのアンプには「Class-D」(D級)ではなく「Class-T」(T級)という表示があります。
T級アンプって聞いたことがないのですがいったい何なのでしょうか、非常に興味深くて調べてみました。
そもそもD級アンプとは定義が曖昧でA級・AB級・B級・C級以外のアンプをD級と称していて、こういう定義のものをD級アンプだという規定がありません。
一般的にはデジタルICなどを使った極めて電力効率の高いアンプ、所謂デジタルアンプを総じてD級アンプと呼んでいます、ちなみに「D級」の「D」はデジタルの意味ではありません。
その意味で「T級」とは何だと思ってしまうわけです、その答えですが「Class-T」は今のところ商標のようで分類的にはD級アンプの部類のようです、名称の元はTripath社で同社のデジタル方式を登録してつけられたようです。
D級アンプの持つ欠点であった高周波ノイズを低減するために、スペクトラム拡散技術を用いてデジタル的にノイズを相殺してしまおうという回路を備えたD級アンプというものです、実に紛らわしい事をしますね。
それにしても安価なものですと数千円で買えるD級アンプですが、以前から音質には興味を持つものの何故か買ってまで音質を確認したいとはなかなか思えないのです、どこかでハイファイオーディオじゃないという拘りがあるのかもしれません。
ちなみに私もデジタルアンプを6台持っていますが最も安価のもので8万円です、しかもオンキョーのデジタルアンプはしばらくメイン(常用)システムで使ったほどです。
ただ1万円を切る安価なD級アンプは興味津々なことは確かで、遊びのつもりで一度はチップ別に買って音質を確認してみたいと思っています。
ただ、私の性分としてやるからには徹底してやってしまいますので、各社の安価なD級アンプを大量に買い込んだその後のことを考えてしまうわけです、まあ取り合えず数台買ってテストしてみましょう。

コレクションアンプの音質の再確認を日々行っているのですが、ここで大きな気付きがあったのです、それは思いの外ヤマハの70年代のアンプの音が愉音を放つということです。
過去にかなり聴きこんだヤマハの70年代アンプですがCDでは一度も確認してなかったのです、CDソースで聴くヤマハのアンプは70年代の名機CA-1000は勿論のことエントリークラスのA-5でも驚くほどメリハリがあって高音域が凄く綺麗なのです。
この10年間で私の耳の性能そのものが変わったのか、それとも音質に対する好みが変わったのか、それともアンプ特有の絶対的な音質だったのか、いずれにしてもレコードで聴いていた時の音質とはまったく異なります。
ちなみに最新のヤマハのアンプでCDを聴いてもこういった響きの中高音域はないのです、やはり70年代のヤマハのアンプ特有の音質だということが解ります。
試しに80年中盤のヤマハのアンプでも確認しましたが、やはりここまでの中高音域の独特な響きはありません、ただし低音域に関して言うと下まで伸びてはいるものの中高音域ほどの押し出し感はありません。
そこで閃きました、ヤマハCA-1000とCDプレーヤの間にバッファアンプもしくはラインアンプという位置付けで、サンスイのプリアンプCA-2000を挟んでみたのです。
そうしたら予想通りでとてつもない愉音に変化しました、低音域が見事にピシッと締り中高音域が更にシャープに張りだしてきます、これだからオーディオ道楽は止められません。
音質的には70年代のサンスイとヤマハは対立するような音質を持ちながらミックスさせると抜群に相性が良いことが改めて解りました、それにしても70年代のアンプの音質はどのメーカーのどのアンプをとってみても本当に侮れません。
総合的な音質傾向では残念なのがもやっとした低音域だけです、この辺りが80年代に入ると全体的にぐっと締まってきます。
70年代にしても80年代にしても今では新製品でこういった独特の音色を聴くことができません、その意味でのビンテージアンプコレクションの価値が在るのです。

いつの頃からだろうかハイエンドアンプからトーンコントロール機能が消えたのは、これは日本だけではなく海外のハイエンドオーディオ製品も同じような傾向になっています。
確かに以前はスピーカーに合わせて音質を調整することはありましたが、最近ではソースダイレクト機能を使って不要なコントロール部分を全てバイパスしパワーアンプ部分だけで聴くようになってきています、つまり使うのは電源スイッチとボリュームだけなのです。
ハイエンドなアンプには当然ハイエンドなスピーカーを使うのが普通です、その意味ではプリメインアンプに求められるのは入力セレクタと音量コントロール、そして小音量で聴く場合のラウドネス機能、レコードプレーヤー用のイコライザーとサブソニックフィルター、この程度があれば充分なのです。
トーンコントロールはフルレンジや未熟なスピーカーを使う場合には音質の補正という意味で重要な機能なのですが、ハイエンドアンプに安価なブックシェルフや自作のフルレンジを繋ぐ人はいないでしょう、それよりも余計な回路を排除してできるだけクリアな音質を創出したい、そんな意味合いが強いように思います。
また、オーディオ歴が長くなればなるほどトーンコントロールを一切使わなくなるのです、これは本当に不思議なことですが多分にもれず私もそういう過程を踏んで今があります。
オーディオ歴が浅い頃はいろいろ音を変えては楽しむものですが、徐々にソースダイレクトが実は最も聴きやすい音質だということが解ってきます。
そして、いつの日かトーンコントロール機能の無いハイエンドアンプを買い求めるようになるのでしょう。
性能の良いスピーカーがあればCDプレーヤーをダイレクトにパワーアンプに直接繋いで聴いてみてください、誰もがトーンコントロール機能は不要だと思うでしょう。

90年代に入るとミニコンポやマイクロコンポなどサイズを小さくしたコンポが生まれます、これらのうち単体でも発売された音質に拘る製品をハイコンポと呼びました。
このハイコンポに各社一斉に新商品を次から次へと継ぎ込み、90年代中盤にはハイコンポ戦争が勃発します。
ここで一つ面白い現象が起きています、それはハイコンポ戦争の裏側にもう一つの戦争が静かに起きていたことです。
それはエントリークラスの薄型コンポです、ハイコンポは横幅をダウンサイジングしたのに対してフルサイズコンポの高さを半分程度にしたのが薄型コンポです。
この薄型コンポは後にデノン・オンキョー・マランツの三つ巴となり定格出力を抑えながらハイスペックなアンプが排出され、音質的には極めてハイコストパフォーマンスが高いアンプ群です。
きっかけはデノンのPMA-390でしょう、1989年発売で約4万円ですが高音質に驚きます。
更にPMA-390はその後大ブレークし、マイナーチューニングを施しながら2020年頃まで後続機が生みだされる大ロングライフなシリーズに発展しました。
次いでオンキョーはインテグラA-913を投入し徐々に参戦するメーカーが増えてきます、パイオニアやヤマハも加わり、オーディオ氷河期の90年代も低価格のエントリークラスではハイコンポ戦争の影で静かなる熱き戦いが繰り広げられていたのです。
マランツは遅れて2000年に入るとミドルクラスからエントリークラスまでを揃えての参戦で、これはこれで実に見応えのある形相を博していました。
ところで、この薄型コンポですがオンキョーA-913(後にA-912が誕生する)やデノンPMA-390などの音質は抜群で、価格からは想像できないほどの愉音を発します。
80年代のアンプ798戦争時代の再来がこの薄型コンポ戦争と先のハイコンポ戦争です、戦争が勃発するところには必ずハイコストパフォーマンスな優秀なアンプが誕生します、それらを確実に拾ってコレクションするのもまた愉しいのです。