2023年11月14日 07:00
オーディオ界にも戦国時代が存在しています、それは85年頃に起きたほぼ全オーディオメーカーが参戦した恐ろしいまでの地獄絵です。
その戦争はスピーカー598(1台¥59,800:ゴキュッパ)戦争とアンプ798(¥79,800:ナナキュッパ)戦争と命名され、今も尚レジェンドのように語り継がれています。
スピーカーではオンキョーのD-77、アンプはサンスイのAU-α607が宣戦布告したと言われていますが、よくよく調べてみるとそれ以前にもスピーカーで598製品やアンプ798製品は存在しています。
しかし直接のきっかけは、それまでの同価格帯の機能を大幅に上回ったD-77とAU-α607の誕生が各社に闘志の火をつけたと言っても過言ではないかもしれません。
この戦争は85年から90年初頭まで繰り広げられ、ちょうど日本がバブル経済で浮かれていた時代です、各社のこの年代に売り出された製品はどれもみなバカ売れしました。
特筆すべきはアンプで各社そろってのブラックフェース、大人しい上品なスタイルで通したヤマハでさえデザインが一変しブラックの精悍な面持ちになったことです。
こともあろうにラックスマンもアルパインの資本傘下の下で、ブラックフェースの真空管とトランジスタのハイブリッドアンプで参戦したのには天地がひっくり返るほど驚きました。
そして、競争に勝つために各社は有り得ない内容のものを経営資源を惜しまず投入してはぶつけてきました。
スピーカーでは当時でそれ以前の製品と比較してみて7~8万円、アンプでは10万円は超えてもおかしくないという贅沢な部品と贅沢な最新回路の製品をこれでもかと我先に作り市場に投入したのです。
アンプでは高級ハイエンドのパワーアンプ並みの20kgを超えるものも有りました、電源トランスだけで7Kgという価格にして単品で4万円以上するものを使った製品もありました。
私は当時外資系企業からスピンアウト起業して2年目の頃です、バブル経済で山のように高利益な仕事が入って売り上げ利益は倍々ゲームで増えていった時期とぴったり重なります。
この戦国時代にあって、アンプは798戦争の主役ではなく上位機種であるハイエンド機を片っ端から買いまくっては大いに愉しませていただいたという恩恵を受け、本当にこの世は天国だと思ったものです。
上位機種まで雪崩現象によりコストパフォーマンスが高い製品が溢れていました、バブル経済の頃は10万とか20万は3人くらいで飲みに行けば一晩で普通に出ていった金額です、当時のオーディオ製品の価格感覚は本当にポケットマネー的な金額にしか捉えられなかったのです、世はまさに狂いに狂っていたのです。
今でもその頃のスピーカーやアンプを繋げてクロスオーバー(ジャズとロックが融合した先進的ジャズ)やユーロビートを聴くと、古き良き時代のバブル経済期を思い起こしては心身ともに元気になりメラメラとやる気が起きてくるのです。
その頃のオーディオ製品は音もしっかりとバブル経済期そのもので重厚でダイナミックです、「記憶は音に宿る」、最後に私の一言を記しておきましょう。