2025年12月18日 10:00
決算書(3)
貸借対照表 貸付金と借入金
本記事では、決算書にあまりなじみのない中小企業・小規模事業の経営者やこれから数字を見る立場になる方向けに決算書の基本的な見方を整理していきます。 私は会計士・税理士ではありませんが、実務の中で学びながら経営者が押さえておきたいポイントに絞って整理していきます。
貸借対照表を読むとき、貸付金と借入金は資金の動きが表に出やすいので押さえておくと全体が読みやすくなります。 貸付金は資産の部に出てきます。 会社が誰かにお金を貸していて将来回収できる前提の金額です。 ここで大切なのは、貸付金は「資産」ではあるものの現預金のようにそのまま使えるお金ではないという点です。 貸付金が大きい場合、資産の金額としては増えて見えますが手元の現金とは性質が違う項目が増えているという読み方になります。
一方、借入金は負債の部に出てきます。 会社が金融機関などから借りていて将来返済する前提の金額です。 借入金は短期借入金と長期借入金に分かれていることが多く、短期は原則1年以内に返済期限が来るもの、長期は1年以上先まで返済が続くもの、という整理です。 ここは金額の大小だけでなく短期と長期のどちらが厚いかを見ると、「返済期限が近い負債が多いのか、時間をかけて返す負債が中心なのか」という見え方になります。
この貸付金と借入金は、前回の「流動資産」と「流動負債」の読み方ともつながります。 短期借入金は流動負債に入るので短期借入金が多いほど「1年以内に出ていくお金」が増える側に寄ります。 逆に貸付金が流動資産に含まれている場合でも、内容によってはすぐに現金化できないことがあります。 その場合、流動資産の金額は大きく見えても「1年以内に入ってくるお金」としては見かけより弱い可能性があるという読み方になります。
貸借対照表は、右側は会社がどのような形で資金を持っているか、左側はその資金が期末時点で何に姿を変えているかを示しています。 ここで貸付金と借入金を押さえると数字の背景にある資金の流れが見えやすくなります。借入金を見ることで、どれくらいの金額を借りておりその中に返済期限が近いものがどの程度含まれているかが分かります。 一方で資産の側では、現預金のようにすぐ使えるものだけでなく貸付金のように現金として戻るまで時間がかかる性格のものがどれくらい含まれているかを確認できます。 こうした視点で眺めると貸借対照表は単なる項目の一覧ではなく、資金繰りの構造を写した表として読み取りやすくなります。