IoT技術の進展に伴いセンサーやデバイス間でやり取りされるデータ量は爆発的に増加しています。 これらのデータを安全かつ信頼性のある形で管理・共有するためにブロックチェーン技術が注目されてきましたが、近年では「DAG(有向非巡回グラフ)」という新たな台帳構造が注目を集めつつあります。
DAG誕生の背景:ブロックチェーンの限界
ビットコインをはじめとするブロックチェーンは分散型で改ざん耐性があり高い信頼性を持つ技術として多くの分野に採用されてきました。 しかしIoTが求める「秒単位の即時処理」「低コスト」「極小デバイスでも動作可能な軽量性」といった要件には必ずしも適していません。
ブロックチェーンではトランザクションがブロックにまとめられネットワーク全体で順序と正当性に合意を取る仕組みが採用されています。 これは高い整合性を保証する一方で時間と計算リソースを必要とし、リアルタイム性や並列性が重視されるIoTのような環境では処理遅延やスケーラビリティに課題が生じやすいという問題を抱えています。
DAGとは?
DAG(Directed Acyclic Graph)はトランザクションが過去の他のトランザクションを直接参照することで構成される台帳構造です。 ブロックという単位は存在せず各トランザクションが独立してネットワークに追加され全体が有向グラフとして構築されていきます。
新しいトランザクションは過去の複数の取引を承認しながら追加されるためブロックの生成を待つ必要がなく並列に処理が進められる点が特徴です。これによりトランザクション数が増えるほどネットワークの処理能力が高まるというスケーラブルな構造が実現されます。また中央の管理者やマイナーを必要としないため手数料ゼロでの取引も可能です。
なぜIoTに向いているのか?
IoTは「軽量」「高速」「大量処理」の3要素を同時に求められる分野です。 DAGはこれらの要件に対して極めて高い適合性を持っています。
・リアルタイム処理:ブロック生成を待たずにトランザクションを即時に追加できる
・低電力・軽量設計:マイニングが不要、PoWも最小限または不要で実装可能
・ゼロ手数料:センサーデータのような小額・高頻度の取引でも経済的負担がない
代表的な例としてIOTAは「Tangle」と呼ばれるDAG構造を採用しIoT向けの高速・手数料ゼロのプラットフォームを構築しています。またNano、Fantom、Hedera Hashgraphといったプロジェクトも、それぞれ独自のDAGアーキテクチャにより高速性と安全性の両立を目指しています。
今後の展望
DAGはブロックチェーンが抱えるスケーラビリティやリアルタイム処理の課題を克服する構造として注目されています。 構造自体には改ざん防止機能がないものの、各プロジェクトが独自に合意形成やセキュリティ機構を実装することでその弱点を補っています。 IOTAやHashgraph、Fantomなどの先進的な取り組みにより、DAGは信頼性と効率性を両立させる次世代の台帳技術としてIoT分野を中心に今後の主流となる可能性が高まっています。
AI・IoT・ロボティクスが社会基盤に浸透する中、サイバー空間と現実世界(フィジカル空間)が一体化システム「サイバーフィジカルシステム」の安全性が注目されています。経済産業省はこれらに対するリスクを解決する「サイバーフィジカルセキュリティ」という新しい枠組みを整備しています。
◇ 経済産業省の政策
経済産業省は2020年に「サイバーフィジカルセキュリティ対策フレームワーク」を発表し、スマート工場・エネルギー・インフラなどの分野において現実世界とサイバー空間の統合管理に伴うリスクの対処する方針を示しました。以降、製造業・ロボット・医療などの分野ごとにガイドラインが策定され、Society5.0実現に向けた安全基盤の確立が進められています。
◇ 多層防御アプローチ
サイバーフィジカルシステムへの攻撃は1つの層だけでは防げないとして「多層防御」の重要性を強調しています。例えばセンサや制御機器にはハードウェアレベルの認証や改ざん防止策、通信経路には暗号化とゼロトラスト設計、AI分析基盤には異常検知とログ監視、そして最終的な制御装置には緊急停止や冗長系の確保が求められています。
◇ レジリエンスと自律防除の時代へ
今後は「すべてを守る」という思想から「被害を最小化し迅速に回復する」というレジリエンス設計が主流となってきます。さらにAIが脅威を検知し自律的に防御を行う「動的セキュリティ」や「自己修復型システム」の研究も進んでいます。今こそサイバーとフィジカルが融合する時代にふさわしいセキュリティの備えが問われています。
ICO2.0は詐欺・未達・情報不足という2017年時代のICOの課題を踏まえ、最初から規制準拠×透明性×公正配分を組み込む資金調達の考え方です。
EUのMiCA(Markets in Crypto-Assets)は暗号資産の包括規制で、発行体にホワイトペーパー(投資家向け説明書)の作成と公開を義務づけ、取引所や資産の保管・管理を受託して行うカストディ等のCASP(暗号資産サービス提供者)にライセンスや行為規制を課します。 広告表示のルールも整い、投資家が比較・判断しやすくなりました。
法定通貨連動の暗号資産であるステーブルコインは、1:1準備(現金・短期国債等)や月次開示・監査を前提に決済・国際送金の"インフラ"として活用が進む見込みです。 ICO2.0では、調達資金の管理や配当・還元をステーブルコインで行い、ブロックチェーン上で可視化され資金移動の監査証跡を残す設計が主流になりつつあります。
日本では、一般向け公募はIEO(取引所主導の公開販売)が中心です。 業界自主規制団体のJVCEAの審査とKYC/AML(本人確認・マネロン対策)、ロックアップ(売却制限)を前提に、需要に見合ったトークノミクス(供給量、FDV=Fully Diluted Valuation=完全希薄化時の企業価値、ベスティング=段階的付与)を設計します。 さらに、マイルストーン連動の資金解放や、コミュニティ投票による意思決定をスマートコントラクトで自動化するのがICO2.0の勘所です。
実務の要点は、
①十分な開示(資金使途・リスク・配分・ベスティング)
②公正な割当(ボット対策・貢献度/評判ベースの枠)
③地域別ジオブロックと証券/資金決済ルールの順守
④オンチェーン監査可能性(トレジャリー可視化・監査証憑)
です。 加えて、株式・債券・不動産など現実資産をトークン化するRWA(Real-World Assets)や、証券規制に基づくSTO(Security Token Offering)とも親和性が高く、投機から実用・持続可能性へ舵を切るための土台になります。
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エヌビディアは2025年7月に時価総額4兆ドルへ到達しました。 AI時代の"象徴的な節目"ととらえられています。
この背景には、過去最高水準の決算と新世代チップBlackwell(GB200)の登場があります。 Blackwellは多数のGPUをまとめて"1台の巨大GPU"のように扱える設計が特長で、前世代より学習・推論の効率を大きく引き上げると言われています。 各社クラウドやサーバーメーカーが対応製品を出し始め、供給面の足取りも前よりしっかりしてきました。
しかし現実的な課題もあります。 電力・冷却・データセンター用地といったインフラ制約、HBMメモリなど部材の供給、そして地政学や輸出規制の不確実性は成長スピードに影響し得ます。株価の上下もこの"期待と制約"の綱引きの結果といえます。
世界を見ると、各国はAIを産業競争力の中心に据え、医療・製造・金融・防衛まで適用が広がっています。 同時に安全性・透明性のルール作りも進行中です。 日本においても液冷対応データセンターや再エネの拡充、AI人材の確保がホットトピックです。
これから注目したいのは、計算資源の使い方をどこまで賢くできるか(効率化・最適化)、モデルとデータの品質管理(評価、ガバナンス)、現場での実装スピードです。 エヌビディアの「史上最高額」はAIが一過性のブームではなく産業の土台に入りつつあるサインだと捉える必要があります。
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AIの判断を「説明できる」未来へ
近年、AIによる自動判断が社会のあらゆる場面に広がっていっている中、「なぜその判断に至ったか」を説明する責任が企業や開発者に求められるようになっています。
欧州のAI規制法(AI Act)や日本のAI事業者ガイドラインでも特に人の権利や生活に大きな影響を与える「高リスクAI」については、説明責任、追跡可能性、記録性が法的に義務づけられる流れになりつつあります。
これに対して有効な技術的解決策として注目されているのが説明可能なAI(XAI)とブロックチェーンの連携です。
XAIはAIがどのようにして判断を行ったのかを人間が理解できる形で可視化する技術です。例えば金融分野ではSHAPという手法を使って融資判断の際に「年収」「信用スコア」「雇用履歴」などがどれだけ影響したかを説明できます。医療分野ではX線画像のどの部分をAIが異常と判断したのかをマップで明示する取り組みも進んでいます。
しかしこうした説明が一時的なものであれば後から改ざんされるリスクがあります。そこでAIの出力とその説明情報をブロックチェーンに記録することで、誰が・いつ・どのモデルで・どんな判断をしたのかを永続的に追跡可能になります。
このやり方であればAIの社会的信頼性を高め、炎上や訴訟リスクを軽減し企業ブランドを保護することができます。今後AIを導入するあらゆる業界において「説明できること」とその非改ざん性が問われていくことになるでしょう。