2025年12月 8日 10:00
2025年ももう暮れですが、今年は AI が当たり前になった年として記憶に残りそうです。
生成AIの世界では、OpenAIがGPT-4.1に続いてGPT-5、さらにGPT-5.1を投入し、チャットボットを越えて仕事や学習のインフラのような存在へと押し上げました。 GPT-5は高い性能を持つ一方で、「会話が少し冷たくなった」と感じるユーザーの声も多く旧モデルに戻す動きもありました。 それを受けて登場したGPT-5.1では指示への従順さだけでなく話していて心地よいことも重視した改良が加えられています。
OpenAIだけでなくGoogleもGemini2.0からGemini3へと世代交代を進めました。 Geminiは検索やGoogle Workspace、そしてNotebookLMと組み合わされ、はじめから日常の仕事の中に溶け込む形で展開されています。 一方で、中国発のDeepSeekは、高性能なモデルをオープンウェイトかつ低コストで提供した点が大きな衝撃でした。 その台頭は性能面だけでなくどの国の事業者にどこまでデータを預けてよいのかという情報管理の問題を企業や政府に強く意識させるきっかけにもなりました。
便利さが増した一方で、チャットボットに悩み相談や日々の意思決定を大きく依存してしまうAI依存の懸念も、はっきりと語られるようになりました。AIとどう距離を取るかどこまで任せるかという付き合い方は、2026年以降の重要なテーマになってきそうです。
一方で2025年は生成AIだけでなく、物理世界で動くフィジカルAIが一気に存在感を増した年でもあります。 もともとデジタルツインの概念自体は2000年代からありますが、工場や倉庫を精密に仮想空間に再現し、その中でロボットを学習させてから現実のラインに展開するという流れがいよいよ本格的な実証・導入フェーズに入ってきました。
各国では、押されても自らバランスを取り戻し、人と同じ空間で作業できるヒューマノイドロボットの開発競争が激しくなっています。 中国勢の勢いが目立つ一方で、日本でも産業用ロボットのファナックがNVIDIAと組み、フィジカルAI/デジタルツインの取り組みを打ち出しました。 安川電機もNVIDIAのプラットフォームを活用しながらソフトバンクと連携し、オフィス向けのPhysical AIロボットの実証を始めるなど、日本発のフィジカルAIも動き出しています。
こうした動きが進めばGPTやGeminiのような生成AIが「頭脳」として、フィジカルAIやヒューマノイドが「身体」として結びついていくのは時間の問題です。 自律的に会話し、状況に応じて判断しながら動き回るロボットが工場やオフィスそしていずれは家庭にも入ってくるでしょう。
もちろん実際の普及には、安全性、法規制、倫理、雇用への影響など、まだまだ乗り越えるべき課題が山積しています。それでもまずは一部の工場や実証現場から、ヒューマノイドやフィジカルAIの導入が着実に進んでいきそうです。私たち一人ひとりも、AIを特別なものとして恐れるのではなく、どのように付き合い、どこまで任せるのかを考える段階に入ってきたのだと感じます。
