2025年8月11日 10:00
日本の暗号資産市場は当初は金融庁がFinTech推進の一環として後押ししていました。 2016年の資金決済法改正では暗号資産交換業者の登録制が整備され新規参入が相次ぎました。 しかし2017~2018年にかけてICO詐欺や不正流出事件が多発し、2018年のCoincheck事件では約580億円相当が流出。 これを機に金融庁は立入検査や業務改善命令を強化し事実上の新規登録停止状態となった背景があります。 2020年の法改正で利用者保護やAML対策が厳格化され国内市場は停滞期を迎えていましたが、近年はステーブルコインやNFTなど実需分野を軸に再評価が進んでいます。
米国ではトランプ元大統領がステーブルコイン推進に大きく舵を切りました。 2025年7月に署名した「GENIUS Act」はステーブルコイン発行に厳格な準備金管理や監査義務を課し連邦規格を整備するものです。 トランプ氏は「米国をデジタル資産のリーダーにする」と述べ、暗号資産企業への捜査停止や160ページに及ぶ推進プランも発表しました。 これにより米市場は急騰、ビットコイン価格は一時上昇し、暗号資産市場規模は CoinGecko のデータに基づき 4 兆ドルを突破しました。(Reuters, 2025年7月18日付報道)
日本でも2023年6月の資金決済法改正でステーブルコインが「電子決済手段」として法的に定義され、発行主体は銀行・資金移動業者・信託会社に限定されました。 これを受け三菱UFJ信託銀行は「Progmat Coin」により円建てステーブルコイン発行を準備し、カーボンクレジット取引や貿易決済への展開を計画。 SBIグループは独自の「Sコイン」構想を推進し、JPYCも信託型国産ステーブルコイン発行を目指しています。 さらにSBI VCトレードは2025年3月にUSDC取引を開始し実務利用が拡大しています。
これらの動きはかつての投機的バブルとは異なり、制度の裏付けと金融インフラの接続を前提とした実需志向です。 米国発の政治的潮流と日本の制度整備が交差する中で、暗号資産がいよいよインフラ化へと進化する段階に入ったと言えます。
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