イギリスの老舗オーディオメーカであるケンブリッジオーディオ、信じられないことですが数年前に正規日本代理店ができたのです。
何と現在の正規日本代理店の本店は、私のラボから歩いて行ける数ブロック先なので親近感も湧いてきます。
それまでは輸入商社による販売であり、メンテナンスなどでも不安がありました。
その不安が払拭しただけでなく、それまで10万円以上していたアンプやCDプレーヤーが正規日本代理店の戦略で限定販売でのエントリークラスの製品を投入したのをきっかけに軒並み価格がダウンしています。
良いものが安く買えるのは大歓迎です、そして故障の際の不安が無いのも安心感に繋がり販売数も伸びていくものと思います。
ただ、問題はその製品の実力です。
安かろう悪かろうでは、日本メーカーの巨大な牙城を崩すことは極めて難しいと思います。
今回の正規日本代理店誕生記念とした限定販売品は、機能を絞り込んで出力も25Wに抑えることでコストダウンに成功した製品です。
しかし本番はこれからです、魅力的な競争力のある製品をどれだけ継続的に出せるかにかかっています。
発売早々に、話題の限定製品AM5&CD5(2018年発売、定価は共に2万円)を購入しましたので音質を確認します。
ケンブリッジオーディオ AM5(下)とCD5(上)
見た目はブラックフェースの薄型でスッキリとして悪くは無いのですが、日本製品のような重厚さがなく「大丈夫か?」というのが第一印象です。
まあ、「ヨーロピアンスタイル」と呼ばれるヨーロッパのオーディオ製品は、こういった薄型のすっきりデザインが多く見ただけでヨーロッパブランドだと解ります。
フロントパネルに付いた大きなロゴはシールではなく本格的な焼き付け塗装であり、ロゴも含めてデザインされているところもヨーロピアンぽいです。
ヨーロピアンスタイルのオーディオ製品はオシャレで女性には人気が高いのですが、男性には日本やアメリカ製のがっしりしたタイプが好まれるようです。
AM5では価格を抑える為に、DACやフォノイコライザーなどを排除しラインアンプという機能に徹しています。
逆に、フロントにミニジャックコネクタが付いており、PCやスマートフォンなどとの接続も手軽に行えるので、1台でオーディオステーション的な使い方ができるように工夫を凝らされています。
鳴らしてみると、これが驚くことに非常にメリハリもあって聞きやすい明快な音で鳴ってくれます。
ガンガン押し出すような力強い音ではなく、下から上までしっかり伸びている余裕を感じる音質です、こういった上品な音色がヨーロピアンアンプの特徴の一つです。
刺激が少なく耳に優しい音質は、女性に極めて好まれる傾向にあります。
また定格出力が25Wという割には低音圧の小型スピーカーを余裕で鳴らしきるパワーがあり出力不足はまったくと言って感じません、定格出力よりも最大出力値がかなり高く感じます。
音圧の低い小型ブックシェルフを繋いでも、9時の位置でかなりの音量で鳴ってくれます。
クラシック向きの音色といえばその通りなのですが、ジャズやポップスにアコースティックまで綺麗に無難に聴かせてくれます。
音質的にはJBLやフォステクスのガンガン鳴らす元気な音のスピーカーよりも、ヤマハやデノンのナチュラルでソフトな音色のスピーカーがベストマッチします。
また、面白いことにヤマハの小型ブックシェルフスピーカーは、ヤマハのアンプで聴くよりも低音域が広がり高音域も同時にしっかり張り出してバランスよく鳴るのには驚きました。
それぞれのスピーカーの個性が見事に反映されるのもこのアンプの良さだと思います、つまり癖が無く合わせたスピーカーの個性をそのまま引き出すということですから。
尚、発熱が少ないので上にCD5を重ねても影響が無いのは嬉しい限りです。
CDプレーヤーのCD5はアンプのAM5以上にコストパフォーマンスが高い製品で、価格が倍以上のデノンやマランツのCDプレーヤーと比較するとAM5との相性なのか低音域がギュっと締まって中音域もシャープになり力強い音になります。
大きな音質の差が出たのはデノンのCDプレーヤーとの比較です、音の立ち上がりが良くクリアな音色に驚きます。
誤解の無いように追記しておきますと、デノンのCDプレーヤーが悪いということではなく、あくまでもアンプとの相性の問題だということです。
ボーカルの表現力が見事でDACの性能の良さが伺えます、AM5にはDACが付いてないのは価格を極限まで抑えCD5と合わせることを意識してのことだと解ります。
ケンブリッジオーディオには定価5万円の外付けDACが有り、CD5はおそらくこれと同程度のDACを搭載していると思われます。
その意味でも相当レベルが高く、ハイコストパフォーマンスなCDプレーヤーと言えます。
AM5もCD5も各オーディオ雑誌のハイコストパフォーマンス賞を受賞し、評論家の記事でもハイコストパフォーマンス機とかエントリークラスの名機と評されています。
AM5&CD5、本当に近年稀に見るハイコストパフォーマンス機です。
購入し試聴したのは2019年の秋の事、日本国中どこで買っても値引は一切せずに定価に消費税を加えた価格での限定販売品でした。
日本国内限定販売品なので既に購入できませんが、持っている人は是非手放さないほうが良いです、何故なら中古でも定価以上の価格で取引されているからです。
アジア圏での評価が高いようで、過去の事例から勘案するに将来は確実に中古価格が上昇すると思います。