中型ブックシェルフスピーカーの検証-1~Alpine/Luxman S-007a
2025年1月 6日 08:00
カーオーディオキングのアルパインがラックスマンに資本提供したのは1981年でした。
その4年後の1985年から6年間ほどAlpine/LUXMANのブランドで、これまでのラックスマンには無かったユニークなオーディオ製品を誕生させて販売していきます。
極めつけがLV-103&LV-105というブラックフェースの真空管とFETのハイブリッドアンプでした。
そして1989年、ラックスマンブランドとして初のシステムコンポAL-7が発売されます。
流石にラックスマンのシステムコンポはセットものとはいえ高級で、アンプ・CDプレーヤー・チューナー・カセットデッキ・スピーカーをシステム化して当時ではかなり高額となる24万円というシステムオーディオでした。
そのシステムコンポAL-7のスピーカーが、S-007(1989年発売、定価7.2万円)で、本機はその後継機に当たるS-007a(1990年頃発売、定価7.2万円)です。
S-007とS-007aとの違いは調べてみましたがよく解りません、同一である可能性もありますので、以後S-007で表記します。
ラックスマンブランドでは極めてレアなスピーカーです。
尚、単体では購入できないと思っていましたがショップに確認したら単体でも購入できました、所謂ハイコンポの走りだったわけです。
尚、このシステムコンポAL-7は1989年度のグッドデザイン賞を受賞しています。
アンプなどは幅36Cmのフルサイズコンポとミニコンポの中間ほどのサイズで、オーディオ製品では珍しいオールグレーのウレタン塗装という高級感のある塗装が施されていました。
スピーカーのS-007もマッドグレーの木目調でセンスのよいデザインです。
Alpine/Luxman S-007a
このS-007は、何とダイヤトーンのOEM製品なのです。
スピーカー部門を持たないラックスマンとしては賢い選択であったと言えます、しかも和製スピーカーの王者ダイヤトーンです、王者は王者としか組まないのです。
ウーハーの振動版は、光沢のある液晶ポリマーを使用したダイヤトーンDS-500のユニットと同じものです、ユニット自体は若干異なるもののDS-500の兄弟と考えることができます。
ただ、同じメーカーによってユニットなどが作られても、システムとしての総合的な調整などでDS-500より上品な音色がします。
DS-500は9.2万円でありS-007よりも2万円高いだけあってユニット自体もしっかりした作りで、エンクロージャーの作りも高級感があります。
同じダイヤトーン製でも、コンセプトが異なると別の音色になるというレアなモデルケースとしては貴重な1台だと思います。
外見は、まるで現在のDALIのようなヨーロピアンデザインで上品さが出ています、これがラックスマンの王者としてのプライドだと思います。
ツイーター周りなど、30年前に誕生したスピーカーとは思えないデザインでグッドデザイン賞を受賞するのも頷けます。
音色はラックスマンのアンプとの相性の良さを感じさせるソフトな優しい音色かと思わせておいて、実は低音域から高音域まで見事に伸びていてそれなりのメリハリやシャープさも主張しており、ジャズをガッツリ聴き込みたくなる音色です。
この辺は、流石ダイヤトーン製だけあります。
特にピアノやサックスの音色は絶品です、張り出してきますが刺々しくないので長時間聴いていたくなります、中高音域が張り出しても刺激の無い音色の代表作かもしれません。
50年代のスローなピアノトリオも本当に綺麗に表現します、静かな夜にビルエバンスやオスカーピーターソンなどを聴くには最適なスピーカーです。
クラシックにも合う音色ですが、アコースティックジャズが実に艶ややかに聴かせるスピーカーです。
実は、私が中型ブックシェルフながら10年ほど最も長期間に渡りメインスピーカーとして愛用したスピーカーです、なかなか他のスピーカーに変える気を起こさせない程しっくりきます。
久しぶりに聴き込んでみましたが、今もなおメインシステムのスピーカーとして充分に使える音色に再度惚れこんでしまいました。
アンプに何を繋いでも、アンプの個性を殺さず聴かせる音色は脱帽ものです。
ラックスマンが音質をプロデュースすると、ダイヤトーンのスピーカーは洗練されてこうなるという意味でも貴重なスピーカーです。
これ良い、凄い!
中型ながら、喫茶店やレストランなどの広い空間でゆったりと鳴らしてみたい音色のするスピーカーです。
セットコンポのスピーカーということでマニアには発売当時から注目されてないようですが、知る人ぞ知るダイヤトーンユニットを使ったラックスマンの隠れたスピーカーの名機です。
ダイヤトーンコレクターもラックスマンコレクターも、どちらのコレクターにも共通する必須のコレクターズアイテムです。
ちなみに、ダイヤトーンが1995年に発売したDS-A7というスピーカーがありますが、デザインがこのS-007にそっくりです。
製品名にも7を付けてS-007を意識した事は間違いないでしょう。
そういう歴史的な意味でも貴重な1台です。