2025年1月 9日 08:00
オーディオアンプには殆ど「ラウドネス」というボタンが付いています。
このラウドネスとは「loudness」であり、よく初心者が「ラウンドネス」と言うことがありますが、これは間違いなので注意しましょう。
もっとも、長年のマニアの人でもラウンドネスと記憶違いで使っている人も見かけるので致し方ないと思うのですが、この機会に記憶のアップデートをして頂ければ幸いです。
ラウドネスは、音量を絞った際に起こる低域と高域の減少をカバーする目的で考えられた一種のイコライザー機能であり、小音量でも中音域だけ強調されるのを抑えて聴きやすい音色にする機能です。
そもそも、loudnessの意味は「うるささを無くす」と言う意味です。
中音域だけの音とは、子供の鳴き声やサイレンのように非常にイライラさせる音なのです。
ところが、同じ音量の中音域に低音域と高音域の音を混ぜると、あら不思議、人間の耳はうるさく感じなくなってしまうのです。
この現象は私の推測ですが、カレーと同じです。
いろんな味が混ざったカレーは美味しく感じ、何か一つでも調味料を入れ忘れた場合は不味く感じるのです。
音も同じで、いろんな音域の音が混ざると心地良く感じ、一定の音域だけだとうるさく感じてしまうのです。
こういったいろんな音域が平坦に混ざった音をホワイトノイズ、声質であればハスキーボイスと言い音量が高いのにうるさく感じずに心地良く感じます。
つまり、これがハイファイ(HIFI)音ということであり、オーディオマニアは可聴域の全域に渡って一定のレベル以上にステイデイ(平坦)な音になるように努力しているわけです。
昔のアナログ放送時代のテレビで深夜に放送が終了すると「ザー」というノイズが入ります、これがホワイトノイズでありほぼ人間の耳に聞こえる音声周波数が同じレベルで入っています。
このホワイトノイズを録音しては、往年のオーディオマニアや音響設備技術者はイコライザーとスペクロルアナライザーを使って音の調整などに使っていたのです。
また、ジャズシンガーは殆どがハスキーボイスであり、聴いているだけでリラックスしてくるのです。
日本の歌手ですと女性では高橋真梨子や宇多田ヒカル、男性では平井堅やミスチルの桜井和寿がハスキーボイスの代表で、オーディオマニアのリファレンス(音質確認の参考)としても良く使われます。
逆に小声でもうるさく感じる声質は、一定の周波数だけの声で音量が低いのにサイレンのように響き渡りうるさいと感じてしまいます。
人間の五感とは、極めてアナログチックに出来ているのです。
このラウドネスをオンのまま音量を上げていくと、低音と高音が逆に強すぎてしまい中音域のボイスが綺麗に聴こえなくなってしまいます。
必ず、小音量のときにだけ使うようにしましょう。
尚、アンプによってはトーンコントロールを排除してラウドネスしか付いていないものや、トーンコントロールは付いているがラウドネスが付いていないものもあります。
付いていない場合は、小音量で聴く際に低域(Bass)と高域(Treble)を少し上げればラウドネスと同様の効果が得られます。
また、ヤマハのアンプのラウドネスは中音を下げるように機能し、その他のメーカーのラウドネスは低域と高域を上げる機能になっています。
本来のラウドネスの意味からすると、ヤマハのアンプだけが正確に機能化させていると言えます。
さて、このラウドネス機能ですが、小音量の時以外でも意外な使い方があるのです。
その一つは、音圧の低い小型ブックシェルフ型スピーカーの音の改善です。
実はエントリークラスのアンプの中には、自社製の小型ブックシェルフ型スピーカーと組み合わせる時のために専用イコライザーというスイッチを設けており、このイコライザーはラウドネスとほぼ同等の機能になっています。
また、昔の録音のCDなどを再生する際にも有効に機能します。
昔の録音は、低音域と高音域がかなり低めに録音されています。
これは、当時のオーディオ製品が低音域と高音域に弱いナローレンジだったからです、それに対して周波数レンジの広い音を入れることによる歪を起こさないようにと、あえて低域と高域の音量を絞っているのです。
こういった古い録音の再生にラウドネスを使うと、イマイマ風の音質になり大変聴きやすくなります。
50年代から60年代にかけて録音されたジャズやポップスなどは、ラウドネス効果で別物の音になりますので是非試してみてください。