左右のスピーカーの距離で音が変わる怪奇現象~音は空気の波である
2024年11月21日 08:00
オーディオの難しさ、それは音という存在そのものが波(空気振動)の性質を持っているということです。
左右のスピーカーで聞くのがステレオという方式で、左右のスピーカーから別の楽器の音の波が出て、それが部屋の中で3Dのように合成され臨場感や奥行きなど立体的な音空間を生み出すわけです。
その意味で、左右のスピーカーの位置で鳴り方がガラッと変わってしまいます、つまり音質が大きく変化するのです。
距離を取り過ぎると、左右の音が中央で合成されずに左右から別々の音が個別に聞こえてきます。
逆に狭すぎると、モノラルで聴いているように音の広がりがなく、ラジオを聴いているような平面的な音場になります。
適切な距離は、聴くポジションからみて左右のスピーカーが30度くらいの距離がベストです。
つまりスピーカーを置いている壁から3メートルの距離で聴く場合は、左右のスピーカーの間隔は約2メートル離して置くということです。
音とは波の性質を持っているので、各スピーカーユニットから出た音は合成され絡み合い、天井や床、横の壁や家具などに複雑に反射しながら耳に入ってきます。
細かな話はあえて割愛しますが、この音の波の合成というのが曲者で、同じ周波数で位相が逆で合成されると音がキャンセルされ、その音域の音が聞こえなくなります。
逆に位相が同じだと、倍音となり強調されます。
これは、水面にできる波の性質とまったく同じなのです。
つまり、スピーカー正面の壁や床に反射すると部屋の真ん中で位相が逆の音の合成となることがあり、聴く人の耳には合成でキャンセルされた音が聞こえないという怪奇現象が起こります。
逆に、横の壁に反射した特定の周波数の音が同位相の合成で強調されうるさく感じることもあります。
これを防ぐには、スピーカーの正面にはカーテンやソファーなどで吸音すること、横の壁には書棚を置くか別の空間を用意するなどで乱反射させるか、もしくは反射させないことなど部屋のレイアウトの工夫が極めて重要になります。
また、スピーカーの向きを内側に傾け、聴くポジションから見て正面に見えるようにすると左右の音がしっかり聴こえるようになります。
これはスピーカーから出た音の波が、対面の壁で180度で反射することを防ぐための基本的な設置方法でもあるのです。
要は、対抗する壁同士で音の正面衝突を起こさせないように工夫することが重要です。
そんなことを繰り返し、オーディオの難しさを経験しながら音という波の存在を強く意識し始めるのです。
音の良さは、ずばり音空間をどう作るかで全てが決まります。
これが、「音箱」というブログタイトルの意味でもあるのです。
部屋も一つの箱なのです、その中で起こる音の波の振舞いとどう向き合うか、これがオーディオという音響工学の本質です。
オーディオとは音響工学であり、音響工学は音の波をどう捉えるかの学問なわけです。
また、どんな部屋の状況でも、上手くカバーしてくれるのが高価なスピーカーであり、それを上手くドライブできる高価なアンプだと言うことです。
高価なスピーカーは、ユニットとエンクロージャーの仕組みによってスピーカー自体で高音域を乱反射させるような工夫を凝らしているのです。
結論的なことを言うと、極めて理想的な音空間を作る事ができれば高価なスピーカーもアンプも要らず、エントリークラスの製品でも本格的な音を楽しむことができます。
長年オーディオを道楽にしていると、部屋を見ただけでどこにどのようなスピーカーを設置するのが良いか、それぞれの壁や床をどのようにするのが良いのかを一瞬で解るようになります。
つまり、音という見えない空気の波が見えてくるようになるのです。
できるだけお金をかけずにスピーカーの持ち味を100%引き出し、どれほど良い音で鳴らすことができるか、実はこれが本当のオーディオの楽しみだと思うのです。