アナログ時代にタイムスリップしたアンプ~ティアック A-R630MKⅡ
2024年1月 6日 08:00
2000年に入るやデジタルアンプで一世風靡したティアックから、まるでアナログ全盛時代にタイムスリップしたようなエントリークラスのアンプが突然発売されました。
それがティアックA-R630(2010年発売、定価4.5万円)で、本機はそのマイナーチューニング版とも言えるA-R630MKⅡ(2014年発売、オープン価格)です。
2018年の購入で実売価格は3万円ほどでした、スペックから考えるとかなりハイコストパフォーマンス機だと思います。
ちなみに発売中止となるや否や中古価格が一気に急騰し、2022年6月の調査では平均で5万円、高いショップでは6~7万円という価格が付けられています。
それでも手に入れたいデジタル全盛時代のアナログアンプだと思います、手持ちのレコードを懐かしの音色で聴きたくて70年代のミドルクラスのアンプを中古で買うなら、絶対に音色的にも故障などのことを考えても本機を買った方がお得だと思います。
ティアック A-R630MKⅡ
下はエントリークラスアンプのリファレンスにしているティアックCD-P650
スペックは価格に見合わず8Ωで60Wと申し分なく、4Ωでは90wと高出力です。
また、嬉しいことにMM型のフォノイコライザーが付いており、更には70年代に時々見られたマイクミキシング機能も付いています、カラオケや電子楽器の練習用としても価格の手ごろ感もあってオーディオ入門者や往年のオーディオマニアを中心に大いに売れた実力機です。
周波数特性はライン入力で10Hz~65KHzとハイレゾ対応で文句無し、アナログ入力数も7つと各種の用途に使えます。
また、本機のリモコンで全ての機能が操作できるだけでなく、同社CDプレーヤーのCD-P650やCD-P1260と連動できるようになっています。
さて、肝心の音色ですがズバリ昭和のミドルクラスのアンプのような音色です。
おそらく最終段にFETを用いたピュア・コンプリメンタリー増幅回路方式がこの音色にしているものと推測しています、私個人的には実に心地良い懐かしさを感じる音色です。
その意味では、CDよりもアナログディスク(レコード)の方がで実力を発揮できるのではないかと思います、それにしてもこの実力でこの価格は本当に信じられません。
何故この時代にこのようなエントリーアンプを突然発売したのか、ティアックの目論みは解りかねますが、後継機を出すほどの大ヒットを飛ばしたのですから世の中のニーズにジャストマッチしたアンプなのでしょう。
発売当時は空前のアナログ復活ブームで、中古のレコードプレーヤーやカセットデッキがメンテナンスを施され高値で取引されていました、そんなニーズに合わせて過去の技術を生かして誕生させたのだと推測します。
ハイファイデジタルアンプに慣れてしまった耳には新鮮そのものに感じると思います、低音域のシャープなメリハリ感も中高音域の張り出しもミドルクラス以上のアンプと比較してしまうとイマイチですが、長時間の試聴でもまったくストレスなく聴いていられる音色です。
ラウドネスの利きも凄く良いです、小音量時には必ず使いたい機能です、特に低音域の補正は完璧です。
ただ、残念なのですがボリュームやトーンコントロールなどの感触は価格をもろに意識させられるチープな感触です、ここは褒めようがありませんが価格を考えたらマイナスポイントにはなりません。
この昭和な香りのするアンプ、直近のエントリークラスでありながら即コレクションラックに収まったのには疑問すら覚えません、昭和のオーディオマニアを音で安心させる音色のアンプです。
ちなみに同時期に音質確認用に購入したエントリークラスのアンプにケンブリッジオーディオAM5・ヤマハA-S301などがありますが、コレクションラックに収まったのは本機の1台だけです。