2023年10月21日 08:00
オーディオ道楽を始めた人であれば、一度は使ってみたいと思うアンプの一つが老舗イギリスオーディオブランドのクオードのセパレートアンプではないでしょうか。
そんなクオードのパワーアンプの中でも個人的に好きな1台が606(後期モデル:1993年発売、定価22万円)です。
クオード 606(606A)
クオードはイギリスの最も古い老舗オーディオブランドで、ハイエンドオーディオブランドとして世界中のオーディオファンを魅了し続けています。
アンプのキングがマッキントッシュなら、クオードはコンパクトなデザインからもクイーンと呼んでもいいでしょう。
この606は1986年発売の前期モデル(606:定価24万円)と、1993年発売の後期モデル(606A:定価22万円)の2モデルが存在しています。
前期の606と後期の606Aとの差は、フロントパネルのロゴの入り方が違うのですぐ解ります。
また価格の差は、販売元がハーマンインターナショナルですので発売当時の為替レートで変動したものと推測します。
本機は前期モデルの電源部をマイナーチューニングされた後期モデルの606Aで、スピーカーのドライブ特性が大きく向上しています。
前期モデルは、使っているうちに若干のハムノイズ(ブーンという電源周波ノイズ)が乗るという症状が出るようです。
後期モデルが電源のチューニングを施したということは、この辺りが改良されたのだと思います。
ただ出力にはハムノイズが乗ることはないのですが、通電すると本体の後ろ側から僅かにハム音がします。
電源回路の特性なのでしょう、ただ静かな夜に無音状態になると若干気になる音ではありますが試聴するには全く問題ありません、耳を近づけなければ聞こえないほどの微かな音です。
そんなクオード606の音出し確認ですが、音質確認の為の合わせるプリアンプの選択に手こずり、結局パッシブアッテネーターで単独による音出し確認となりました。
ジャズピアノトリオの音色は最高レベルです、ジャズピアノファンには是非1度聴いてほしい1台です。
回路は電源から完全な左右分離のデュアルモノラル構成で、2つのアンプが1つのケースに収められています。
この小さなサイズからは想像できないほどの高出力で、8Ωで130Wの定格出力を誇ります。
使用する部品にも拘っており、低ノイズを実現させる為に最高級の電解コンデンサを全回路に惜しみなく用いられています、部品代だけでも積算するとかなりの金額になります。
それにしてもこの606は何とも飾りけのないデザインとカラーリングです、クオードの音色に興味がない人だと価格からしてもまず買わないでしょう。
しかし、オーディオ道楽を初め出したらこの極めてシンプルなデザインがとたんに美しい(欲しい)と感じてしまうから不思議です、そして何時しか手に入れたいと思うようになるのです。
特に艶消し塗装はフェルトの表面のような光沢で軽量に見えます、しかし持った瞬間にずっしりとくる鉄の塊のような重さがアンマッチしてびっくりします。
更に通気口が一つもありません、その代わりに大きな冷却フィンが両サイドに飛び出しています、この出力にして埃を気にしなくてよい工業デザインは見事としか言えません。
ただし、持ち運びする際にこのフィンが指に食い込んで素手では痛くて持ち運べません、私は素手で持ち上げる際には本体のサイドを持つのではなく前後パネルの下に手をかけるようにして持ち上げています。
また、クオードのプリアンプは小型軽量でまるでおもちゃのような外見です、でもこういった見た目ではない存在感は音を出した瞬間に本領を発揮します。
繊細な音とはこういう音なんだと誰しも納得する音色です、バーブラウンのDACチップを搭載した外付けのDACを介して聴くとバイオリンやアコースティックギターの弦楽器のリアル感は本当に凄いです、まさにそこにいて弾いているかのようにゾクソクする艶やかな音色と響きなのです。
ピアノの高音域は突き抜ける鋭い響きです、同年代のダイヤトーンDS-200ZAなどの小型スピーカーが高級ハイエンドスピーカーに化けてしまいます。
CDプレーヤーやDACの音色を変えることなくストレートに増幅している感じで癖が無いようにも感じますが、やはりクオードらしい繊細な音色はしっかりと存在感を出しています。
大型フロアスピーカーなどよりも小型でハイスペックなスピーカーやトールボーイとの相性は抜群です、全帯域の音に切れもあるし外見からは想像もできない愉音を発します。
中高音域のリアルな張り出しも見事ですが、低音域が引き締まっていて小型スピーカーなのにガツンとぶつかってくるように鳴り響きます、これは本当に凄いの一言しかありません。
現在、ヨーロピアンサウンドをもう少し追求してみたいと思いプリアンプとスピーカーをセレクトしています。
アメリカンサウンドは充分すぎるほど聴き込んでいるので、今度はオールヨーロッパブランドで固めた音色を是非とも確認しておきたいのです。