オンキョー新時代の音色~オンキョー integra A-917F
2023年10月14日 08:00
80年代にA-817だったオンキョーのインテグラシリーズのミドルクラスのプリメインアンプは、90年代に入ると型式がA-917と改められます。
そんなオンキョーの新時代に誕生したミドルクラスのプリメインアンプであるインテグラA-917のマイナーチューニング版で、新時代のオンキョーの音色が決定したとも言えるのがこのA-917F(1992年発売、8.9万円)です。
オンキョー A-917F
1990年に登場したオンキョー独自のスーパーカレントドライブ方式を継承しつつ大幅に改良が加えられたアンプで、パワーアンプ部の前段で電圧-電流変換を済ませてしまって、終段ではダイレクトに電流-電流増幅しスピーカーを直接ドライブするという新方式のアンプです。
一般的なアンプはスピーカーの直前のパワーアンプ部の終段で電圧-電流変換を行うのに対して、スーパーカレントドライブ方式は終段アンプ部はストレートに電流増幅のみを行いNFBをかけないのでストレートでスピード感のある音色が期待できます。
オンキョーの広報も「ダイレクトにスピーカーをドライブするので切れが良い」と謳っていますが、本当に中高音域の切れの良さは見事です。
これを最大限に堪能するにはソースダイレクトで聴くに限ります、靄がかかったような音色が澄み渡った青空の音色に変わります。
本当にこのアンプに限ってはこの違いははっきり出ます、ソースダイレクトだとNFBがかかった回路を一切通さないようで、ここまで違いが出るアンプは極めて稀な存在で他に類がありません。
ソースダイレクトでのサックスやピアノの音色は、まさに「はっ!」と息を飲む響き渡るような音色です。
オンキョーのアンプは年代を問わず中音域の張り出しが最大の魅力ですが、低音域が弱いところも継承している感じで、もう少し低音域が締まって張り出してくると最高の音色になるのですが、ジャズファンとしてはちょっと残念な気持ちになります。
まあ、これがオンキョーの個性的な音色ですから合わせるスピーカーを選べばジャンルを問わず愉音を発します。
ジャズではサックスやピアノの音色が極めて魅力的です、ボーカルも張り出してきて声の余韻がすごく綺麗です。
これで低音域がぐっと締まって前に出てくるような鳴り方だと、多くのジャズファンを虜にしたでしょう。
ただ、低音域が弱いと言っても出ていないわけではありません、低音域は下まで伸びて量感は充分です、ただ暖色系の音色なのでどうしてもベースのずるっとしたもたつき感が気になってしまうのです。
ソースダイレクトモードで聴くと、この低音域のもたつき感も若干なりとも薄れ締まった音色に変わります。
オンキョーの90年代のアンプはCDダイレクトやソースダイレクトで聴くことをお薦めします、まったく異なる音色に驚くと思います。
トーンコントロール回路などを経由すると、オンキョー新時代のスーパーカレントドライブの良さが消えてしまうのでしょうね。
私的にはクラシックはほぼ聴かないのですが、ちょっと試しに聴いてみたらオーケストラもピアノとバイオリンのデュオもリアルで凄く響きが綺麗です。
なるほど、こういう音色に仕上げているのですね、至極納得です。
尚、オンキョーのアンプはオンキョーのスピーカーと合わせると良いところだけが強調される傾向があります。
大型ブックシェルフの名機D-77MRXとのコンビネーションは低音域の弱さも克服され、ジャズやポップスを爽快に明るく聴かせてくれます。