サンスイの意地が詰まった問題作~サンスイ AU-α607XR
2023年9月16日 08:00
80年代に金字塔を建て黄金時代を築いたサンスイですが、90年代中盤になると精悍なデザインから大人しいモダンなデザインへと変化を遂げます。
そのデザインの変化と共に音質も少しずつ変化してきます。
その変化点となったのが、このAU-α607XR(1994年発売、9万円)です。
サンスイの歴史を語る上でも音の歴史を語る上でも、私個人的に極めて重要なアンプだと位置付けています。
サンスイ AU-α607XR
サンスイアンプと言えば初期の頃からブラックフェースがシンボルカラーでした、それが90年代に入るとシルバーが主力となり、更にこのAU-α607XRからデノンのシンボルカラーであったシャンパンゴールドに変わります。
また、AU-α607XRからデザインも一新し洗練されたソフトなデザインになります。
これに伴い、硬く締まった低音域やクールに響く張り出しとシャープさを売りにした中高音域もデノンやマランツのように少しマイルドな音色になります。
思えば、この2年後にデノンは名機PMA-2000を引っ提げてあっという間にサンスイの強固な牙城を一発で撃沈させます。
もしかしてデノンを意識したようなデザインと音質により、デノンのサンスイ打倒という闘志に火を付けてしまったのかもしれません。
そんな歴史の背景に存在したアンプであり、個人的には音質はさて置きコレクションの中でも極めて貴重な1台となっています。
音質的には、サンスイらしさがどこにも感じられないややマイルドな音質ですが、トータルでの重厚さと言う点においてはサンスイらしさが残っています。
ジャズファンで、中高音域の強烈な張り出しとクールな響きを求めている人にはがっかりする音色かもしれません。
しかし、バランスと言う点においては見事な音質バランスでジャンルを選ばずに使えるアンプでしょう。
ちなみに、デノンPMA-2000と同じリファレンススピーカーを使って改めて比較試聴をしてみました。
デノンのPMA-2000の方が、伝統のサンスイらしい音色なのには改めて驚かされます。
低音域の締まり方も中高音域のシャープさも、完全にPMA-2000の方が勝っています。
1996年のXデー、ジャズファンがサンスイ離れを起こしてデノンに乗り換えたのは音を聴けば推測するまでもありません。
この時のサンスイのデノンの標的となったアンプはAU-α607MR、本機AUーα607XRとほぼ同質の音色である後継機でした。
サンスイは慌てて音質を再調整してAU-α607NRAを出しますが時既に遅しの感は否めません。
その時代において、どのメーカーがどのメーカーをライバル視していたか、音は正直に見えない心理までも見事に反映しているのです。
サンスイの問題児AU-α607XR(上)と、
デノンのリーサルウェポンPMA-2000(下)
サンスイファンには、何とも言えないツーショット!