サンスイの牙城を撃沈させた重爆撃アンプ~デノン PMA-2000
2023年9月30日 08:00
80年代のアンプ798戦争時代にマイペースにデジタル対応などでユニークな戦略を繰り広げたデノンですが、90年代中盤に突如ミドルクラスに重爆撃アンプを投入します。
それが、デノンPMA-2000(1996年発売、定価10万円)です。
80年代並みの超重量級で21Kg、大きさも半端無く奥行きが横幅よりも5Cm長い480mmで設置が一苦労です。
コレクションのプリメインアンプの中では大きさも重量も最大級です。
普通のオーディオラックでは高さはギリギリですが奥行きが浅くて収まりきれません、10万円以上するハイエンド用の高級ラックでようやく収まります。
私は、それでも高さがギリギリで放熱の不安からオーディオボードの天版に直に置いて使っていました。
デノン PMA-2000
1993年にシリーズで発売された高級ハイエンドのS1シリーズ、そのプリメインアンプPMA-S1(40万円)のエッセンスを存分に詰め込んで、何と10万円という魅力的な価格でミドルクラスのプリメインアンプ戦争に満を持して参戦します。
このたった1台によって、20年間築き上げてきたサンスイの強力な牙城があっという間に崩壊します。
この衝撃は凄かったです、まさかのデノンのゲリラ的な戦略に驚きを隠せませんでした。
流石にハイエンドS1のエッセンスを詰め込んだ音質は改めて評価するまでもなく、圧倒的な安心感と高音質を誇ります。
どんなスピーカーを繋いでも、低音域から高音域まで見事なまでに完璧且つ豪快に鳴らし切ります。
それぞれの楽器が綺麗に分離し、アンサンブルでも混ざり合うことなく本当にそれぞれの楽器の音色が綺麗です。
高音域の余韻も中低音域の締りも心地良く、はっとするような押し出しや突き抜けるようなシャープさは無いものの物足りなさは一切ありません。
本当にコストパフォーマンスが極めて高く、完成された熟成音色のアンプだと思います。
また、フロントパネルは最大で10mm厚という分厚さで、ツマミ周りを斜めにくり抜いたことにより実寸以上に厚く見え、デノン伝統のシャンパンゴールド色といい高級感もS1シリーズを見事に受け継いでいます。
音質も含めて、定価を見ていなかったら20万円と言われても安いと思ってしまうほどの出来栄えです。
ちなみに現行の最新機のPMA-2500NEは高性能DAC内蔵で25.3万円です、ハイレゾ対応ですのでこれでも安いと感じます。
購入から10年間、オーディオ道楽封印までずっとメインの座を堅持したアンプです。
サンスイの硬く締まった低音とシャープな中高音域も心地良いのですが、PMA-2000を一度聴いてしまうと「これも有りだな」と思わせてしまう説得力のある暖色系の音色は一言で「安心感」としか言えません。
10年ぶりに音出ししてみると、やはりダントツの安心感ある音色で悪いところが何一つ有りません、「愉音」とはこういう音に対する形容詞なのです。
癖が無いのでスピーカーやアンプのリファレンスとしても使えるし本当に素晴らしい、デジタル全盛の今でも充分にメインシステムのアンプとして使える名機中の名機です。
CDプレーヤーは何でも構いませんが、外付けDACを経由して繋ぐと一層音質の良さが引き立ちます。
高性能DAC搭載のミドルクラス以上のCDプレーヤーか、もしくはエントリークラスのCDプレーヤーに外付けDACを繋いで聴いてほしいと思います。
尚、スピーカーは小型でも大型でも構いませんがミドルクラス以上を繋いで、PMA-2000は是非「ソースダイレクト」にして聴いてほしいと思います。
余計な回路を全てジャンプして、入ってきた音信号をそのまま増幅し素直にスピーカーに届けます。
「何も色付けせず電流増幅だけを行う導線」、理想とするアンプの姿がここに在ります。