2023年8月12日 08:00
90年代に入ると各社から一斉にミニコンポが売り出されます。
その後、高性能で単体でも発売される高性能なアンプを特にハイコンポと称しました。
そんな時代に発売され、デザイン性や音質の良さで一際存在感を示したオンキョーのインテック第二世代と言われるハイコンポA-922M(1996年発売、定価5.3万円)です。
この頃のハイコストパフォーマンスを極めた各社のフルサイズコンポのエントリークラスのプリメインアンプが4万円弱、このサイズでそれ以上の価格なのですから音質にも期待がかかります。
オンキョー A-922M
音出しした瞬間、「凄い!」の一言。
このサイズでこの価格、そしてこの音質なら売れて当たり前でしょう。
音質は軟なフルサイズコンポのエントリークラスの比ではありません。
このA-922Mの2年前に同じデザインで出力が若干高いA-911Mというハイコンポが発売されていますが、価格は6.5万円とかなり高額です。
これと比較すると、安価になり音質が数段階向上しているのですからハイコストパフォーマンスは極めてが高いと言えます。
当時フルサイズコンポのミドルクラスに採用されたフロントパネルがオープンするシーリングパネル付きのデザインは良いのですが、このサイズだとツマミ類が小さくなってしまい操作性はイマイチです。
でも、あまり触ることが無いスイッチ類なので許せる範囲です。
シーリングパネルをオープンすると各種設定を行うツマミやスイッチ類が現れる
定格出力は8Ωで43Wとハイコンポの中では比較的高く、消費電力も120Wとハイコンポとしてはトップクラスです。
音質はまったくと言っていいほど申し分ありません、本当に90年代以降のオンキョー製品はスピーカーもアンプも外れがありません、どれを買っても後悔することがないのが凄いところです。
さすが、「迷ったらオンキョー」という名言を残しただけのことはあります。
D-77MRXなどの同社大型スピーカーと合わせた時の音色は至福の音色で、この音色を5万円のアンプで味わえるなんて本当に90年代以降のオンキョーのアンプは完成度が極めて高いです。
また、小型高性能ブックシェルフとの相性も抜群で、D-202AX LTDと繋いだときのゴツンと押し上げる低音域はジャズファンには堪らない音色です。
しっかりとした下から持ち上げるような低音域に支えられたオンキョーらしい中音域の張り出しが本当に素晴らしいの一言、ジャズボーカルなどはずっと聴き込んでいたくなります。
囁くように耳元で響くジャズの女性ボーカルは、耳がくすぐったくなるほどリアルでドキッとします。
新時代のオンキョーの代表的な音がここにあります。
尚、ソースダイレクトとCDダイレクトと幾つかの回路のショートカットのセレクトが出来る仕様ですが、CDなら断然CDダイレクトモードが抜群に音質が良いです。
CDダイレクトモードはパワーアンプ部にダイレクトにCDプレーヤーを繋ぐモードでボリューム以外の機能は全てカットされます。
つまり、アッテネーター付きのパワーアンプという回路構成となり、理想とするアンプの概念が見事に実現されています。
ダイレクトCDモードでは靄がぱっと明けたようなクリアな音質になります、最もくすんだ音になるのがトーン回路を繋いだモードです。
これほどCDダイレクトモードで音質が一変するアンプは珍しいです、多くはあまり変化が解りません。
オンキョーのアンプはみな同じようにダイレクトモードで音質が一変しますから、スピーカーには性能が良いものを繋いでCDダイレクトモードで聴くことをお薦めします、レコードならソースダイレクトがお薦めです。
アンプって本当に価格でもサイズでも無いのです、音を出して初めてその価値が解るのです。
こういった小型高音質アンプの流れが更にダウンサイジングさせ、A-905Xなどに引き継がれていくのです。
その意味でのハイコンポカテゴリを築いたハイコンポの名機、オーディオ史的にも貴重なアンプの一つです、オンキョーコレクターなら必ず持っていなくてはならない必須コレクターズアイテムと言えます。