祝ブランド移行のハイコストパフォーマンスアンプ~パナソニック SU-V460
2023年7月29日 08:00
1988年、テクニクスはオーディオ製品のうちハイエンド機を除く製品をパナソニックブランドで取り扱う事を決定します。
そんな状況下で新ブランドとなるパナソニックで発売されたのが、SU-V460(1989年発売、定価3.2万円)です。
デノンが薄型ハイコストパフォーマンス機PMA-390を3.9万円で発売した時期と前後しており、互いに低価格化を意識していたことが解ります。
また、この時期ヤマハやオンキョーも低価格のエントリークラスを相次ぎ発売しており、アンプ798戦争の裏でエントリークラスも3万円台での激しい競争が繰り広げられていました。
そういう意味では、パナソニックブランドへのご祝儀価格と言うべき価格設定であり、極めてコストパフォーマンスが高いアンプなのです。
パナソニック SU-V460
定格出力こそ当時としては低めですが、最大出力は6Ωで80Wは通常使用では不足感はありません。
尚、この最大出力はテクニクス独自の新A級(クラスAA)での値だという事を考えれば、むしろ高出力の部類に入ります。
パワーアンプダイレクト機能を搭載しているのも音質に自信が有る証拠で、ご祝儀価格としてもこのクラスではかなりのハイコストパフォーマンスなアンプと言えます。
パワーアンプの最終段にはSU-8055から使われ出した得意の独自開発のリニアICを使ったアンプで、こういった量産型の部品を開発して回路をシンプルにできたことも価格を抑えることに寄与しています。
また、ディスクリートに対してパワーICは製品ごとのバラツキが少なく、安定した製品提供を可能とした点も見逃せません。
SU-8055から10年目、独自のリニアICを使ったアンプは洗練されCDの高音質に見事に対応されています。
音質的には、低音域から高音域まで癖が無いナチュラルサウンドで大変聴きやすい音色にまとめられています。
特に低音域が下までゆったりと出ているのは圧巻です、小型ブックシェルフもゆったりとした音色で鳴らします。
また中高音域の張り出しもあるので管楽器の音が本当に素晴らしいです、これ本当に3万円ちょっとで買えるアンプの音ではないです。
購入当時はサンスイのAU-α607iがメインアンプでしたので、あまり聴き込んではいなかったのですが、今回改めて比較してみると全然見劣りする音ではありません。
ジャンルを選ばずに無難に聴かせる音色は長時間の鑑賞にはピッタリで、ワーキングBGMシステムなどに90年代以降のミドルクラスの小型スピーカーと合わせて使用すれば、今もなお存在感を充分に発揮できる優れたアンプです。
テクニクスのアンプは意外とジャズ向きの音色なのです、パナソニックにブランド移行後もその音色をしっかりと伝承しています。
また、重量勝負のこの時代に重量8Kgは最軽量、音は重量に無関係な事を証明するに充分な根拠を持っています、アンプはヨーロピアンアンプのように軽量小型で高音質が嬉しいです。
80年代のベストバイ・ハイコストパフォーマンス・アンプと言える傑作品です。