2023年6月24日 08:00
アンプ798戦争下にあって、自分流を通してデジタル時代に対応すべくいち早くDACを搭載したミドルクラスの名アンプが、このPMA-780D(1987年発売、9万円)です。
製品名にも解りやすくデジタルの「D」を入れているのが、デノンのデジタル新時代にかける意気込みを感じます。
デノン PMA-780D
デジタルでCDプレーヤーと繋ぐと録音の3種のサンプリング周波数がランプで自動表示されるようになっています。
今となっては無くてもよい機能ですが、当時はこういうディスプレイが重要な戦略だったのです。
それにしても、この時代のアンプに外付け製品が出始めたばかりの高級DACを搭載してしまうなんて驚きます。
誕生間もない高級品であったCDトランスポーター(DACが入っていないCDプレーヤー)をデジタルで直接繋げて愉しめる、なんという贅沢なアンプをこの時代に作ったのでしょう、本当に驚くばかりです。
ちなみに当時の外付けDACは20万円以上は普及機で、100万円を超す超高級品までありました。
こうしたデノンの努力と自分流を一環として通した独自戦略が、10年後にサンスイの強力な牙城を崩してデノンの繁栄に繋がるとはこの時点では誰も想像もできなかったでしょう。
デジタル対応とはいえ電源に新開発のこれもまた驚きの6.2Kgという超重力級トランスを用いて、アナログの基本である電源回路にも一切手を抜いていません。
またノイズ特性を高めることで知られるネガティブフィードバック(NFB)を用いないストレートな増幅回路を採用しており、曇りのないクリアな音質はカラッと晴れ渡った空のようで実に爽快な音色です。
70年代~80年代のNFBのかけすぎた風邪引き声にうんざりしていたマニア諸氏には、こういうストレートで素直な音質は本当に晴れ渡った空のように感じるのです。
それでいて低音域もしっかり出ているし、高音域は伸び切って余韻も見事に表現しています。
一度試聴し始めると何時までも聴いていたくなるアンプはそう多くは在りません、これは間違いなくデジタル時代を先取りした傑作アンプだと思います。