2023年3月11日 08:00
1977年、ラックスマンは音響研究所で新時代のラックスマンの音質を極める中で、製品の音質を調整する目的で使われるリファレンス(参考音質)として完成した回路をそのまま製品として発売しました。
その名もズバリ「ラボラトリー・リファレンスシリーズ」で、ハイエンドプリアンプ5C50(16万円)、ハイエンドパワーアンプ5M21(24万円)がそれです。
同時に、パワーアンプ5M21にプリアンプ5C50のフォノイコライザーだけを取りつけたハイエンドプリメインアンプ5L15(16.8万円)を誕生させたのです。
このプリメインアンプ5L15は、現在の価格に換算すれば60万円ほどとなりますが、ハイエンドプリアンプとハイエンドパワーアンプをそのまま組み合わせたうえに価格を大幅に抑えているので、極めてコストパフォーマンスが高いハイエンドプリメインアンプと言えます。
否、プリメインアンプというより、ハイエンドのフォノイコライザー付きパワーアンプと言っても過言ではないでしょう。
当時はトーンコントロールが無いということで評論家諸氏の物議を醸し出しましたが、ラックスマンの音色をダイレクトに愉しむのに余計な味付けは不要で、むしろノイズ特性などを落としてしまいます。
更に、「音の味付けはスピーカーに委ねるべきだ」というのが昔からの私の自論です。
逆に、アンプの使命を理解しないオーディオ評論家諸氏に対して大きな違和感さえ感じました、「本当に音響のプロなのか?」と。
レコードプレーヤー以外は、アッテネーターだけを通してダイレクトにパワーアンプに接続され、音質が劣化する余計な回路を一切経由しないので音源に忠実な高音質再生を実現します。
この設計思想は、CDプレーヤーを繋ぐとその音質の透明度に表像します。
近年に見るハイエンドプリメインアンプの思想の原型がここに在ります、まさにアンプの理想とする「電流増幅する1本の導線」思想そのものなのです。
ラックスマン 5L15
何度も言いますが、この5L15はトーンコントロールなどの音源を忠実に再生するのに不要な回路の全てを排除し高音質再生だけを行う為に作られたプリメインアンプです。
音質に関係の無いケースやフロントパネルの飾り付けなども何一つなく、ケースのデザインやパワーメーターも取り付けただけのまさに音質測定というリファレンス機器の如くシンプルそのものです。
余計な物に一切コストをかけず、アンプに与えられた使命だけを形にしたアンプであり個人的には非常に好感できます。
そして、この音色こそが「新時代のラックストーン」と謳われるラックスマンの音色の原点なのです。
DCアンプ構成で、周波数レンジは5Hz~100Khzと今で言うハイレゾ対応の周波数レンジの広さであり、低音域から高音域までラックスマン独特の音色を醸し出します。
SQ-38FDなどにみる真空管時代のマイルドな暖色系の音色から、新時代のラックトーンはクリアでシャープな音色でジャズを心地良く聴かせてくれます。
特に、中高音域の響き方は独特で長時間でも疲れません。
オールドラックスマンでボーカル再生を行うとちょっと鼻にかかったような音色になるのですが、5L15ではこれが無く極めて透明感のある音色でボーカルを聴かせてくれます。
もう少し低音域がふっくらしてる方がバランスが取れるのですが、大口径ユニット使用のハイエンドスピーカーを繋ぐことを前提としているならこの量感で充分です。
当時では誕生していなかった90年代のダイヤトーンのスピーカーとの相性の良さは今でこそ解るのですが、信じられないほどリアルでクールな音色を醸し出します。
増幅回路はAB級で、歪率やSN比などA級アンプの特性をそのままに電力消費だけを抑えることに成功しています。
こういった音に妙な音質評価は一切不要です、重要なのはただただ至福のラックストーンを愉しむだけです。
定格出力80Wはこの時代のプリメインアンプでは立派です、ハイエンドパワーアンプ並みの最大消費電力380Wも納得です。
8個のパワートランジスタが発する高熱を特殊加工のフィンを三枚重ねにしてバックパネルの外側に出し冷却能力を高めています、こういった贅沢な部品と技術を存分に使った歴史に残る名アンプなのです。
シャーシ上面から見える8個の大きなパワートランジスタと、
バックパネルの外側まで伸ばした特殊加工のシートシンク
コレクションアンプの中でも私にとって特別な存在、それがこの5L15です。
同社指定業者でフルオーバーホールされ、電解コンデンサやトランジスタの全取り替え及びリレーやスイッチ回りの接点復活処理で新品同様の状態です、いつまでも大切に伝統の音を保存したいと思います。
音質確認中の5L15
リファレンスはダイヤトーンDS-200ZXとオンキョーD-77MRX
下は、アンプの音質リファレンスに使ったデノンPMA-2000