燻銀のセパレートアンプ~オンキョー P-855NⅡ & M-955NⅡ/260
2023年2月25日 08:00
日本オーディオ界にセパレートアンプブームを巻き起こしたのは、疑いもなくアキュフェーズでしょう。
アキュフェーズは、トリオの創業者春日二郎氏によって1972年に設立されたケンソニック株式会社の高級オーディオブランドで、現在はアキュフェーズ株式会社と社名変更しています。
その後、オーディオ各社もアキュフェーズに刺激され次々と自社技術を結集させて高級ハイエンドセパレートアンプを市場に投入してきます。
さて、そんなセパレートアンプフィーバーが巻き起った70年代に、オンキョーが満を持して投入したのがプリアンプP-855NⅡとパワーアンプM-955NⅡ/260(1975年発売、セット価格24万円)です。
往年のマニアは「燻銀(いぶしぎん)」と称した渋いシルバー色で何とも言えない精悍な面持ちです。
下がオンキョー M-955NⅡ/260、上がオンキョー P-855NⅡ
この面持ちに見覚えのある人はいても、製品名まで正確に言える人はほとんどいないと思います。
また、セットで音を聴いた事のある人も殆どいないと思います。
更に、セットで保持している人は極めて稀だと思います。
何故かというと、このP-855NⅡ+M-955NⅡ/260が誕生した当時はサンスイの名セパレートアンプCA-2000+BA-2000を筆頭に、いまだに名機と言われるセパレートアンプが目白押し状態だったからです。
製品名が長くて覚えられないというのも加わり、いつの間にか存在すら忘れ去られていったのではないかと思うのです。
ちなみに、このオンキョーの品版に付いた「/260」の意味は公表されてはいませんが、スピーカーのインピーダンスが8Ω(オーム)の際の定格出力の左右の合算値ではないかと推測しています。
何故なら、当時のオンキョーのプリメインアンプにも「/100」とか「/130」というのが付いており、これらとスペックを関連付けるとこれしか関連性が導かれないからです。
つまり、「/260」は8Ωスピーカーを繋いだ場合では方チャンネル130Wだということが解ります、70年代としては驚異の破壊的な高出力です。
さて、そんなオンキョーのセパレートアンプを、完全動作するかどうかの確認がてらに久しぶりに音を聴いてみました。
パワーアンプM-955NⅡ/260はA級とB級を切り替えられますが、私の好みはA級の繊細な音よりもB級のパワフルなゴリゴリと押し出してくる音です。
重量が30Kg近くあるM-955NⅡ/260は、中を見ると巨大なトランスと電解コンデンサが隙間なく入っており、まるでバイクのエンジンのようです。
尚、P-855NⅡ及びM-955NⅡ/260は共に完全左右独立分離回路方式で、2台のモノラルアンプ構成をとっておりチャンネルセパレーション(左右の信号隔離)は完璧です。
重量同様に全帯域で押し出してくるようなド迫力な音に加えて各楽器の繊細な表現も見事です、これぞセパレートアンプの醍醐味です。
繋いだスピーカーはダイヤトーンのミドルクラスの3ウェイ大型ブックシェルフDS-700Zとヤマハ小型モニターNS-10MTですが、何時も聴いているCDってこんなにも繊細な音まで入っているのかと思うくらいに各楽器の余韻まで綺麗に聴こえます。
ボーカルは、口の動きや呼吸まで全て解ります、どこで息継ぎしているのかがはっきりと聴き取れます。
ただし、消費電力も半端ではありません、気楽に音楽を楽しむのではなく音楽を聴き込む為のアンプです。
JBLとかアルテックの大型のフロアスピーカーと繋げて聴き込める日まで、もう少し待機していて貰いましょう。
2台ともすべての機能が完全動作しており、スイッチや可変抵抗のガリのひとつも無くひと安心です。
将来を考えて完全オーバーホール(分解して新品同様に作り直しすること)の見積もりを出してもらったら、スイッチの接点研磨やコンデンサの総取り替え費用込みでペアで10万円以上でした。
なんとかあと10年は、この状態を保持して持ち堪えてほしいと祈るだけです。
音出し確認中のM-955NⅡ/260とP-855NⅡ
リファレンススピーカーは、
ヤマハNS-10MTとダイヤトーンDS-700Z