2025年10月 6日 10:00
IoT技術の進展に伴いセンサーやデバイス間でやり取りされるデータ量は爆発的に増加しています。 これらのデータを安全かつ信頼性のある形で管理・共有するためにブロックチェーン技術が注目されてきましたが、近年では「DAG(有向非巡回グラフ)」という新たな台帳構造が注目を集めつつあります。
DAG誕生の背景:ブロックチェーンの限界
ビットコインをはじめとするブロックチェーンは分散型で改ざん耐性があり高い信頼性を持つ技術として多くの分野に採用されてきました。 しかしIoTが求める「秒単位の即時処理」「低コスト」「極小デバイスでも動作可能な軽量性」といった要件には必ずしも適していません。
ブロックチェーンではトランザクションがブロックにまとめられネットワーク全体で順序と正当性に合意を取る仕組みが採用されています。 これは高い整合性を保証する一方で時間と計算リソースを必要とし、リアルタイム性や並列性が重視されるIoTのような環境では処理遅延やスケーラビリティに課題が生じやすいという問題を抱えています。
DAGとは?
DAG(Directed Acyclic Graph)はトランザクションが過去の他のトランザクションを直接参照することで構成される台帳構造です。 ブロックという単位は存在せず各トランザクションが独立してネットワークに追加され全体が有向グラフとして構築されていきます。
新しいトランザクションは過去の複数の取引を承認しながら追加されるためブロックの生成を待つ必要がなく並列に処理が進められる点が特徴です。これによりトランザクション数が増えるほどネットワークの処理能力が高まるというスケーラブルな構造が実現されます。また中央の管理者やマイナーを必要としないため手数料ゼロでの取引も可能です。
なぜIoTに向いているのか?
IoTは「軽量」「高速」「大量処理」の3要素を同時に求められる分野です。 DAGはこれらの要件に対して極めて高い適合性を持っています。
・リアルタイム処理:ブロック生成を待たずにトランザクションを即時に追加できる
・低電力・軽量設計:マイニングが不要、PoWも最小限または不要で実装可能
・ゼロ手数料:センサーデータのような小額・高頻度の取引でも経済的負担がない
代表的な例としてIOTAは「Tangle」と呼ばれるDAG構造を採用しIoT向けの高速・手数料ゼロのプラットフォームを構築しています。またNano、Fantom、Hedera Hashgraphといったプロジェクトも、それぞれ独自のDAGアーキテクチャにより高速性と安全性の両立を目指しています。
今後の展望
DAGはブロックチェーンが抱えるスケーラビリティやリアルタイム処理の課題を克服する構造として注目されています。 構造自体には改ざん防止機能がないものの、各プロジェクトが独自に合意形成やセキュリティ機構を実装することでその弱点を補っています。 IOTAやHashgraph、Fantomなどの先進的な取り組みにより、DAGは信頼性と効率性を両立させる次世代の台帳技術としてIoT分野を中心に今後の主流となる可能性が高まっています。