2025年12月29日 10:00
2025年はフィジカルAIが大きく進展した年でした。 中でも仮想環境で十分にシミュレーションして現場に落とし込む「デジタルツイン」が、単なる設計検討の道具ではなくフィジカルAIの開発と運用を回すための基盤として位置づけられ始めた点が大きいと見ています。 フィジカルAIは言語や画像を理解するだけでなく、現実のロボットやヒューマノイドを直接動かしタスクを完了させる方向へ進みます。 しかし現場で試行錯誤を回すほど「物理的な失敗」が高くつき、転倒や衝突は事故・破損につながり、設備やラインを止めれば停止損失が発生してしまいます。 安全上の制約も大きいため失敗を意図的に大量に起こしてデータを集めること自体が難しく、成功例は残りやすい一方で改善のための失敗データは集まりにくくなります。
そこで重要になるのが仮想空間で安全に失敗できる環境です。 デジタルツインは、現実の設備・レイアウト・ロボット・周辺環境を物理的に計算できる形で再現し、学習と検証を先にデジタル側で回せるようにします。 現実で試しにくい条件や危険なケースを先に網羅できるため、現場投入前にリスクがある挙動を潰せます。 さらに現場から得られるログや状態データを参照して改善案を検討し、デジタルと現場を往復させながら学習・検証・運用改善のサイクルを回せる点も大きいです。 モデルやシミュレーションを使って合成データを生成し現場では集めづらい事例を補う発想が強まったのもこの流れに沿ったものです。
またVLA(Vision-Language-Action)のように、指示理解から行動までを人間のように見て、理解し、自律的に行動するモデルが現れています。 こうしたモデルほど現場での試行錯誤が高コストになりやすく、デジタルツイン上で評価と検証を先に回し成功率や安全性を詰めてから現場へ出すという順番が導入の現実味を押し上げています。
一方でメタバースという言葉自体の熱は落ち着いたように見えます。 消費者向けの体験価値は評価が割れやすい一方、工場や倉庫では「手戻り削減」「安全性向上」「停止の回避」といった効果がコストに直結し、投資対効果を説明しやすくなりました。 だからこそデジタルツインを軸にした開発・検証・運用のループが現場で導入され始めたと言えます。 2026年もこの流れは続きフィジカルAIはロボットやヒューマノイドの能力そのものだけでなく、それを現場で育てるための開発基盤(デジタルツイン)とセットで前進していくことでしょう。
