サンスイのプリメインアンプの歴史において、7シリーズが現在に言う「サンスイサウンド」と言われる事実上のきっかけを作り、それを確立しそして終焉したのです。
つまり、サンスイサウンドのミドルクラス~ハイエンドのプリメインアンプの歴史は7シリーズに始まり7シリーズの20年間で終わったと言っても過言ではありません。
では、その輝かしい系譜を辿って行きましょう。
7シリーズの発祥は、1976年発売の「AU-607・AU-707」に始まりました。
その前年には、名機CA-2000+BA-2000(ペアで21万円)というハイエンドセパレートアンプと、そのエッセンスを併せ持つ名機AU-9900(14万円)というプリメインアンプが発売されていました。
現在、これらのサンスイアンプの音色は「オールドサンスイサウンド」と呼ばれ、主にJBLのスピーカーをここまでやるかというくらいの愉音で鳴らす音作りがなされています。
そんな中で、当時は7シリーズのエントリークラスと呼ばれたAU-607(7万円)ですが、価格的にもスペック的にも決してエントリークラスのアンプではなくミドルクラスのしっかりとしたアンプです。
その後、1979年にダイヤモンドX増幅回路に変更されたDCアンプである「AU-D607・AU-D707・AU-D907」が発売されます。
このAU-Dシリーズから最上級機種のハイエンドアンプ907が加わります。
AU-D907は、AU-9900からの乗り換えを促すような存在として投入したものと考えられます。
「AU-D」シリーズは、その後マイナーチューニングを行って「AU-D607F・AU-D707F」が誕生します、ここでも907は存在しません。
またこの機種は、フィードフォワードNFBというノイズを最小限に抑える回路を搭載し、力強いDC(直流増幅)アンプの硬質で重厚な低音域に加えて低ノイズな品質の高いアンプに仕上がっています。
この「AU-D607F」こそ、本当の意味での世に言う「サンスイサウンド」の始まりと言っても過言ではないでしょう。
尚、「AU-D」シリーズはJBLに加えてダイヤトーンスピーカーとの相性がバッチリで独特の引き締まった低音域に張りのある中高音域が本当に素晴らしいの一言です。
「オールドサンスイサウンド」の相棒がJBLなら、「AU-D」シリーズの相棒はダイヤトーンで決まりです。
この後、「AU-D607F Extra・AU-D707F Extra・AU-D907F Extra」、「AU-D607G Extra・AU-D707G Extra・AU-D907G Extra」、「AU-D607X・AU-D707X・AU-D907X」、「AU-D607X Decade・AU-D707X Decade・AU-D907X Decade」とマイナーチューニング版が続きAU-Dシリーズは1985年に終了します。
さて、この後1986年に誕生したのが後に798戦争の勃発のきっかけを作ったとレジェンドを残す「AU-α」シリーズになります。
「AU-α」シリーズは、α-Xバランス増幅回路にメジャーチャンジした「ニューサンスイサウンド」を引っ提げてサンスイの強固な牙城を築きサンスイ黄金時代を齎したシリーズとなりました。
1986年発売の「AU-α607、AU-α707、AU-α907」に始まり、「AU-α607i、AU-α707i、AU-α907i」でα-Xバランス増幅回路が安定します。
その後、「AU-α607 Extra」(607のみ)、「AU-α607L Extra、AU-α707L Extra、AU-α907L Extra」、「AU-α607DR、AU-α707DR、AU-α907DR」、「AU-α607KX、AU-α707KX、AU-α907KX」、「AU-α607XR、AU-α707XR、AU-α907XR」、「AU-α607MR、AU-α707MR、AU-α907MR」、「AU-α607NRA、AU-α707NRA、AU-α907NRA」、「AU-α607NRAⅡ」(607のみ)でAU-αシリーズが終了します、つまり7シリーズの完結です。
尚、途中で特別仕様のモデルも多種存在しています。
その中でも、DCアンプの逸品「AU-D907 Limited」や、α-X増幅回路の逸品「AU-α607MOS Premium」(15周年記念特別モデル)は伝説の名機と言われています。
また、1996年発売の7シリーズ20周年記念の「AU-07 Anniversary Model」は定価45万円のスーパーハイエンドアンプで、サンスイの7シリーズの集大成でありサンスイ渾身の最高傑作品として知られています。
ここで、注目して欲しいのが僅か10年間での「AU-α」シリーズの型式の多さです。
「AU-α607」に始まったアンプ798戦争、地獄絵の如く如何に凄ましかったが伺えるデータとしても貴重です。
さて、私個人的に高く評価しているのが、第一世代としてDCアンプの完成版で「サンスイサウンド」を確立した「AU-D607F・AU-D707F」(80年)、第二世代としてα-Xバランスの完成版で「ニューサンスイサウンド」を確立した「AU-α607i・AU-α707i」(87年)、第三世代としては3種でサンスイサウンドの集大成でサンスイサウンドが少し大人しくなり豊かな表現力が加わった「AU-α607XR・AU-707XR」(94年)、「AU-α607MR・AU-707MR」(95年)及び「AU-α607NRA・AU-α707NRA」(96年)です。
何故、断言できるのか?
それは、ほぼ全てのシリーズを買って聴き比べしたからです。
そして、手元に残したのが上記の3世代の代表だったのです。
サンスイ AU-D707F(第一世代の名機)
サンスイ AU-α607i(第二世代の名機)
サンスイ AU-α607XR(第三世代の名機)
サンスイ AU-α607MR(写真下:第三世代の名機)
尚、最終版である「AU-α607NRA」(96年)は、ある意味ではデノンに牙城を崩された後の挽回を狙った戦略的サウンドのアンプであり、アンプのスペックはベストバイサンスイと言っても過言ではない程のハイスペックアンプで、極めてコストパフォーマンスが高いアンプです。
しかし、サンスイサウンドが薄くなったオールマイティの優等生の音色であり、博物館入りの価値は有るもののサンスイマニアの賛否両論を生んだ問題作でもあります。(ただし、サンスイアンプとしてのコレクション価値は高い)
いずれにしても、この3世代の各機種を揃えれば、サンスイサウンドのその時代における特色有る音色が明確に確認することができるでしょう。
一環としているのが、硬く締まった低音域と中高音域の気持ち良い程の切れの良さです。(評論家は「切れの良い」音を「スピード感」と呼んでいる)
とにかく、何時の時代のサンスイアンプでも他社アンプには無い「ハッ!」と息を飲むほどの独特な音色がします。
これが、サンスイアンプの最大の魅力なのです。
最後に、私個人的なベストバイサンスイサウンドの音色、それはAU-α607iです。(AU-α707i、AU-α907iは出力が高くなるるのみで音質はほぼ同じなのでコストパフォーマンスは低い)
正直、手元に何台も予備に保有しておきたいくらいです。
是非、アンプにあって次元の異なる本物のサンスイサウンドというものを1度でもいいからじっくり聴き込んでみてください。
オーディオに対する価値観が一瞬にして変わることでしょう。
いつも聴いているCDが、こんなにも多くのいろいろな音情報が入っていたのかと驚かされること間違いなしです。