オフィスでのミーティング中に誰ともなく「断捨離(だんしゃり)」が話題になりました、「やましたひでこ」の書籍で有名になった「断捨離」とは不要なものの数を減らして生き方を楽にしようとする知恵のことです。
基本的にはインドに伝わる行法の「断行(だんぎょう)」、「捨行(しゃぎょう)」、「離行(りぎょう)」から由来しています、「断」とは入ってくる不要なものを断ち、「捨」とはずっとそのままにしておいた不要なものを捨て、「離」とは不要なものへの執着から離れることを意味します。
また中国の風水にも同様に「空間浄化」という教えがあり、概念としては「断捨離」と酷似しています、考えるにインドから仏教と共に伝来したのかもしれません。
この「断捨離」はものだけを対象にしているのではありません、人や目に見えない知識や財産なども同様に対象にしています。
つまりは人脈に始まり不動産・銀行口座・各種カード・在庫に加えて事業や特許などの知財まで全てを総括しているということです、この結果において不要な心配やトラブルが激減し本当に自身に必要な事項だけに時間や労力を使うことができるということです。
戦略経営コンサルティングにおけるリストラクチャ手法も実は根幹部分は同様で「一旦ゼロにして必要なモノだけ再構築する」という考えです、これによってコスト削減、業務フローの簡素化による効率アップ、風通しの良い組織の形成等に繋がり高収益体質に改善されます。
賛否両論いろいろあると思いますが経営者にも時間や精神的な限界があります、本当に意義のある事項と人だけに時間と労力と知恵を使いたいと思うばかりです。
その人の行動や判断のベースとなるのが思考です、思考は性格や個性とほぼ同義ですが特に脳の判断ロジック的特徴を表し、過去の経験や得てきた知識などにより脳内に一つの判断プログラムが形成されています。
ここで性格と思考は何が違うかですが、性格は小脳に由来する表面的な行動パターンも含めていますが思考は大脳のみでの性質だけを表しています
啓発やカウンセリングによって在る程度は思考を変えることはできるのですが、これは表面上の一部であって根底にある無意識の領域に由来する思考タイプまで変えることはできません、さて某機関によって確立された思考タイプの分類によると大きく4つに分類されます。
1.コンセプトタイプ
今までにない新しい発案や知識の応用に優れ、発明家や芸術家タイプでビジネスにおいては儲かる仕組みそのものを独自に編み出すことができる人。
2.アナリシスタイプ
統計や過去の経緯から本質を分析できる研究家タイプで、ビジネスにおいては過去の成功事例から有効な手法を導き出すことができる人。
3.カンバゼーションタイプ
思ったことを的確な言葉にまとめ上げる噺家タイプで、ビジネスにおいては特にプレゼンテーションやネゴシエーションなど渉外に力を発揮する人。
4.ディティールタイプ
細部まで目が届き極めてミスが少ない会計・財務タイプで、ビジネスにおいては秘書や経理で力を発揮する人。
ここで成功する経営者は上記4つのうち2つ以上をバランスよく併せ持つ思考の持ち主だと言われています、思考は必ず無意識の行動に現れます、意識的にそれを身に着けようとしてもどこかで化けの皮が剥がれてしまいますので無理しないで正直に生きることが肝要かと思います。
「紺屋の白袴(こんやのしろばかま)」という諺があります、これは紺屋(染め物屋)なのに自身は白い袴でいるということを表し「他者の事ばかりを行っていて自身の事は後回しになる」ことを意味します、同様に患者には立派な言葉を並べたて注意を促すのですが自身は忙しさでケアが全く行えずに病気になってしまうという「医者の不養生」も同様の例えです。
改めていろいろな会社を思い浮かべては考えてみると、確かにその道のプロとして活躍している人ほど自身の事は意外や後回しになってしまっている例が多いことに気が付きました。
WebデザイナーのHPが3年間もリニューアルしていなかったり、栄養士がメタボだったり、営業支援の会社が自身の仕事が無かったり、そんな何かおかしいと思わざる事が多々あることに気が付きます。
かくいう私も同様でした、他者の経営状況には的確に改善を促せるが自身の会社の事は判っていながら後回しになっていたという事実が多々あります、これに気付けばやはりその道のプロはその道は良く知った道です、更にはこれも良く知った自身の事です、他者事の数倍の速さと的確さで改善できます。
「その道のプロは、その道に躓く」、自身の事が後回しになっていないか、これを機に冷静に自身の身の周りにも目を向けてみてはいかがでしょうか。
「兵法」について研究しているころ多くの戦国武将や三国志の歴史背景を調べました、中でも「戦」に関しての歴史的資料は大変興味深く大いに参考になったものです、最初のうちは勝者の戦法や武将周辺の家臣の行動や進言などに焦点を当てていたのですが逆に敗者に興味を持つようになりました。
「なぜ、負けたのか」、そこには必ず共通する事項があるはずなのです、そして私はその事項を見つけ出しました、敗者の多くはほとんど「軍師」の提言する作戦を鵜呑みにして実行した結果だったのです、現代社会においても会議でいろいろ提案するアイデアマンがいます、しかしそのアイデアをそのまま受け入れて実行するのは大きなリスクがあります。
なぜかというとトップと彼らとは立場と利害が180度違うからなのです、別の意味では経験の差、視野角の差、思考の差です、つまりトップはミクロでなくマクロを見て戦略を立てなければなりません、経営とは「その瞬間の問題ではなくて継続するもの」であるからです。
しかし社員や役員はそうではありません、その瞬間の問題に焦点を当てています、したがって各論的には合っているかもしれませんが総論的には多くの欠陥があります。
経営経験が少ないトップは話が上手くていろいろな情報を持っているアイデアマンに耳を貸す傾向があります、自分にない発想をするので重宝がるのでしょう、そして信頼感まで持つようになります、しかしそこに大きな罠があるのです。
そのアイデアマンが実経験で鍛え上げてきた経験豊富な人であれば問題ありませんが、書籍や人から聞いた情報を自分なりの頭で理解し(ているつもり)経験してないことを平気で提言するような人であったら極めて危険です。
このような人を「敗軍の軍師」と呼びます、「敗軍の軍師」には自分が間違っているという自覚は全くありません、むしろ自分のアイデアを実行してくれたら絶対に成功するくらいの自信があります。
トップもその意気込みや愛想の良さからつい提言を鵜呑みにしてしまうのでしょう、そこが経験不足のトップの最大の弱点でもあるのです、トップはあくまでもいろいろなアドバイスや提言はひとつの「茶呑み話し」くらいに考えなくてはなりません、例え役員であっても高い報酬を払っている顧問であってもです、主役はあくまでも最終責任を問われる経営者なのですから。
自分でいろいろな状況を考えて最終結論を出した戦略でなければ、途中で計算外のことが起きたときに速やかなる軌道修正や撤退の決定が遅れます、更には経営責任なんて取れるはずもありません。
バブル絶頂期の頃にクラブのママさんに聞いた話しをときどき思い出します、「突然来なくなるお客さんがいるんだけど、後で一緒に来ていた人に聞くと会社が倒産して夜逃げしたって・・・、そういう人が数年後に再び戻って来ることがあって顔つきから仕草まで別人のように立派になって、同じ人とは思えないのよ・・・」。
話は変わって、私はよく「穴に落ちるならでっかい穴に思いっきり落ちろ決して縁にしがみつくんじゃない!」と言います、でっかい穴から這い上がった人は人が変わったかのようにプロ意識を持ち完璧な業務遂行ができるようになるからです、こんな例は何人も見ています。
「人生の挫折」、それは誰にでも起きうることなのです、自信を失い自分の将来に失望します、でもそれは最も尊い経験だと思います、自分に失望し自身を卑下できることはそう経験できることではありません、自分に失望して初めて自分の悪いところが明確に理解できるのです。
それに気づいて自分の思考を軌道修正できるのです、その後は自分をガンガン出してもミスもしなくなるのです、「一皮剥ける」、「自立した大人になる」、「パラダイムシフト」とはこういうことなのです、穴に落ちれば穴の中でしか見ることができない景色があってそこでしか得られない貴重な体験ができます、決して穴の外では得られない生涯に渡る貴重な体験です。
落ちるのが怖くて穴の縁に惨めにもしがみついているのを助けてくれる人ではなく、むしろ背中を押して穴にストンと落としてくれる人が本当の愛を知っている人だと思います、本当に思いやりがないとできないことです、そういう経験をさせてくれる人が身近にいることを心から感謝することです。