スピーカーユニットの破損で最も多いのがウーハーエッジの破れです。
特に1990年前後に各メーカーによって使われたウレタン製のエッジは経年経過で加水分解という現象が起きて、手で触っただけでボロボロに崩れ落ちてしまいます。
こういった被害報告が相次ぎ、ウレタン製のエッジは使われなくなり昔から使われていた和紙や不織布、また最近では不織布にゴムや樹脂で補強処理した合成素材が使われています。
それでも、長い期間使っているとエッジが硬質化しエッジに穴が空いたり破れてしまう事があります。
こういった修理を専門に行っている業者も多く存在していますが、エッジ交換だと中間サイズの16~20Cm口径で1個当たり1万円前後もかかりペアで修理に出すと往復の送料や消費税を入れると3万円近くかかってしまいます。
そこで私は、裂け程度や穴空き程度は自分で修理しています。
修理はユニットを外して裏から補修する方法と、外さずに表面から補修する方法がありますが、ユニットの形状や傷のある場所によって最適な方法を検討します。
フレーム近くだと裏からは補修不可能ですので外さずに表面から補修し、エッジの中央付近ならユニットを取り外して裏面から補修します。
当然ですが、裏面から補修したほうが表面からはほとんど補修したことが判らないほど跡が残りません。
ただ、裂けや穴あきで多いのがエッジ付近なのでどうしても補修跡が残ってしまいます。
補修に使う材料ですが、私は自分独自のオリジナル素材を自作して使っています。
それは薄い不織布をゴム状素材の接着材を使って2~3重のラミネート構造にして、強度と密閉度を上げています。
これをゴム状素材の接着剤で穴の空いた場所に張るだけです、あとは黒の油性塗料を丁寧に綿棒で塗って終わりです。
ゴム状素材の接着材は乾くと生ゴムのようになり柔軟性があり、極めて破けずらい強度があります。
これを不織布と合わせてラミネート構造にして使う事を考え出したのです、オーディオにも経験と知恵が活きるのです。
猫パンチを食らったり酔って凹ませたスピーカーユニットのドーム部分、このままですと微妙な歪を生んでノイジーな音になることがあります。
このスピーカーユニットのドーム部分の凹みも意外な方法で簡単に自分で修理することができます、ここでよくやる失敗はガムテープなどでくっつけて引っ張るというものです。
これはたまたま上手くいくこともあるのですが、多くの場合は更に凹みが複雑になり悪化させてしまうことにもなり極めてリスクが高い方法です。
更に紙のコーンの場合は、ガムテープで表面が薄く剥がれることもあり、音質が更に悪化することにも繋がります。
これを簡単に治す裏技があります、それは掃除機を使うのです、つまり吸い込む力で凹みを持ちあげるという方法です、ただし注意深くやらないとユニットを破損させてしまいます。
まずは凹んだドーム部分に吸い込み口を当てて、「チョン・チョン」という感じで掃除機の電源を瞬間的にオンオフして吸いこみ力を調節しながら吸い出します。
勢い余って吸い込むとドームそのものが吸い込みの力で剥がれてしまいます、また必ず吸い込み口を外す時は電源オフの状態で外すこと、オンのままだとユニットのコーンが引っ張られてやはり破損に繋がります。
ただ紙ドームは簡単に治りますがアルミドームはかなり手こずります、慎重に様子を見ながら行って下さい。
ただし、この方法を使う時にはあくまでも自己責任で行って下さい、慣れていないと被害が拡大する場合もあることを申し上げておきます。
尚、凹んですぐの場合は綺麗に戻りますが時間が経つと形状記憶を起こしてしまいますので凹みが治ってもシワが残ります。
ドームが凹むと下取り価値も半減し、さらに気分も凹みますよね、凹んだらすぐ直しておきましょう。
オーディオ製品に付いているツマミやスイッチ類の多くは、裏側からナットで締め付けて取り付けされています。
なので、使っているうちにナットが緩んでグルグルと空回りしたりグラグラになることがあります。
酷い場合はナットが完全に外れてブラブラ状態になります。
これも簡単に自分で治せます、単純に蓋を開けてナットを締めつけるだけです。
締め付けるときは、ラジオペンチという先が細くなったペンチと薄い鉄板でできたレンチがあれば簡単にできます。
オーディオを楽しむなら、最低限のツール類は持っていた方が安心です。
というか、こういうことをやっているうちに自然にツール類は増えていきます。
小型の製品は、基盤などがびっしりと取り付けられていて隙間が無い製品もあります。
こういう場合は、基盤などを全て外す必要があるので簡単にはできません。
ただしものは考えようで、こういう場合も組み立てキットだと思えば楽しめるだけ得したと思えるでしょう?
私の場合だけかもしれませんが、メンテナンスデーを設けて修理するときは複数の製品を一気にやってしまいます。
これも一つのオーディオの愉しみ方だと思うのです。
ガリとは、ボリュームの可変抵抗やスイッチ類の接触面の経年劣化による酸化(錆)で接触不良を起こしている時に出る「ガリガリ」というノイズです。
使う環境にもよりますが、熱や湿気が多い環境では買ってから1年以内で出る事もあります。
ボリュームやトーンコントロールのつまみを回した際に出ると本当に嫌な気持ちになりますよね。
酷くなると小音量時に音が途切れるギャングエラーを起こしますから、壊れたと思って修理に出す人もいるでしょう。
でも、これも修理に出さなくても自分で治せますので張り切って治しましょう!
最も簡単な方法は、ちょっと荒業なのですがガリが出ているのがボリュームなどの可変抵抗であれば、かなりスピーディにグルグル左右に回します、だいたい10回くらいでガリが出なくなると思います。
また、スイッチ類ならカチカチとオンオフを繰り返したり、左右に回して切り替えを繰り返します。
これもかなりスピーディにカチカチ行えば、10回程度で出なくなります。
これを何度かやっても起こる場合は、接点磨きというプロの技を使います。
簡単な話が、ガリを起こしている部品を分解して接点復活材(液体スプレー)で接触面を塗って綿棒などを使って綺麗に磨きあげることです。
ただし、分解にも再結合にもハンダごてなどのそれなりのツールとテクニックが必要です。
まあ、最初のやり方で治らない場合は、修理に出すのがよろしいようで。
私は昔から病院へ行くのが大の苦手で、年一回の人間ドックでさえ当日の朝まで「行くの止めようかな?」なんて考えたりするのです。
なので、できるだけ症状から自分でネットや書店で調べて自己治療を行うようにしています。
また、こんな経験をたくさんしてくると自分の身体の個性が解ってきて対処方法も肌感覚で解るようになります。
ただ、「これは駄目だ」というときもあります、そんな時は流石の私も躊躇せずに病院へ直行です。
さて、そんな性格なのでオーディオも調子がおかしいときにすぐ修理に出すのではなく、まずは自分で修理することを考えるのです。
そんな経験をいろいろしてくると、オーディオ製品に多くの同様の症例があることが解ってくるのです。
最も多い症例が、しばらく使っていなかったアンプで久しぶりに音楽を聴こうとスイッチをオンしたら、ボリュームはゼロなのにスピーカーから「ガサガサガサ・・・」という虫が這うような音がするというものです。
耳にゴミなどの異物が入ったときのような音で、これを聞くと何とも不快な気持になります。
また、「ポツン、ポツン・・・」と2~3秒間隔くらいの雨の日に屋根から落ちる水滴のような音がすることもあります。
これらは全て同じ原因の症状です。
っで、直し方は極めて簡単です。
何もせずそのまま通電しておくだけです、人間の身体の症状を治すのに何もせずに寛解(かんかい)するのを待つのと似ています。
音が気になる人はスピーカーを外せばOKです。
私は、どういう風に音が変化して行くのかが知りたくて、一度ずーっと聴いていたことがあります。(よほど暇だったのですね)
定期的な「ポツン、ポツン・・・」を聴いているうちに寝入ってしまい、気が付いたら朝になっていたなんてこともありました。
ただ、起きた時には音は出なくなっていたので、おそらく半日くらい通電しておけば治るんじゃないかと思います。
原因は、長時間通電しなかったことによる電解コンデンサの自然放電です。
久しぶりに通電すると電荷が空になったコンデンサに単純に電荷が蓄積されていくので、その際の充放電によるノイズという訳です。
これ、実は高校(工業高校)の時にオーディオ好きな先生に教えてもらっていたのです。
身体もオーディオも、構造と原理を知っていれば対処もできるということです。
そして、オーディオを自分で修理するするようになると部品とか構造などが解るようになり、益々オーディオが自分の身体のように身近に感じるようになるのです。