2025年3月27日 08:00
今回は、音を聴く聴覚も他の五感と同じアナログ式の感覚であるというお話をしましょう。
人間の五感はセンサーとなる細胞と脳によって認識されるようになっています。
つまり、最終的に全ての感覚情報は脳で処理され初めて認識できるようになっています。
そこで、脳に備わっているある特殊な機能が重要になってきます。
それは、フィルタリングという機能です。
例えば、嗅覚では自身が発する臭いが強烈な臭いであってもキャンセルされ感知できないようになっています。
これは、他の臭いを嗅ぎ分けられるようにするためです、そうすることで異変を察知できるようになっているのです。
味覚も3種類以上の味を混ぜると、それぞれの味が感知できなくなり美味しいと感じる味に変わります。
これがカレーのルーでありラーメンのスープです。
音を感知する聴覚もまったくこれと似た性質を持っています。
例えば、サイレンの音や子供の泣き声は400Hz~450Hzという中音域の単音(特定の周波数だけの音)です、これは誰でもうるさいと感じます。
ところが、このサイレンの音や子供の泣き声に他の周波数帯の音を混ぜると、人間の耳は聴き分ける事ができずに全体の音をキャンセルするように音情報全体をフィルタリングします。
周波数帯域全般に渡り同じ大きさの音をホワイトノイズと呼び、大きな音でもうるさいと感じません。
さて、ハイファイという音質を極める技術はここにヒントがあります。
同じCDを聴いてもリラックスできる音質の音響システムと、イライラしてくる音質の音響システムがそれぞれ存在しています。
前者は全ての可聴域の音が平均的に出ており、後者は特定の可聴域の周波数の音が強調されて出ているからです。
ハイファイオーディオで重要なのは、低音から高音まで同じレベルで揃えることです、そのための高級なアンプであり高級なスピーカーとその組み合わせなのです。
中音域だけの音はうるさく感じてイライラしてきます、逆にこれを応用しているのがパチンコ店やゲームセンターの音響設備の音質です。
もしレストランで中音域だけの音楽を流したら誰も入らなくなるでしょうし、もし入ってもすぐにも出たくなります。
同様に安物のCD付きミニコンポやテレビの音も中音域が主なので、長時間聴いていると気が付かないうちにイライラしてきます。
オーディオ、それは聴覚をどのように誤魔化して良い音質だと認識させることができるのかという電気工学&音響工学なのです。
全ての音域が綺麗に揃った音は、音量を上げてもうるさくありませんし、不思議な事に会話の邪魔をしません。
好きな音楽を聴いてリラックスできないのは音質に問題があるからです、ここに高級なオーディオ製品と安価なオーディオ製品の差が大きく出てしまうという事です。
それがオーディオ製品の価格的価値ということなのでしょう。