80年代初期のエントリークラスのパワーアンプを検証-1~テクニクス SE-A808
2024年9月 6日 08:00
1980年、テクニクスは70年代にハイエンド製品であったセパレートアンプを手軽に愉しんでもらおうとミドルクラスのプリメインアンプ1台よりも安価な製品を作りました。
そのエントリークラスのセパレートアンプのパワーアンプがSE-A808(1980年発売、3.5万円)です。
1980年の発売ですが、そのベースは間違いなく70年代後半の技術の流用であり「70年代エントリークラス」と銘打っても何ら問題はないでしょうしむしろ正しいと思います。
相棒のプリアンプはST-K808で、シンセサイザーFMチューナーとデジタルタイマーをドッキングさせた新時代を彷彿させるような製品でしたが人気はイマイチでした。
私は既にST-K808は手放しており、パワーアンプのSE-A808だけを音の記念として残しています。
尚、SE-A806という出力を落とした弟分も同時発売され、予算に合わせて組み合わせができるようにしていました。
どちらもデザインと大きさは同じで、この年代では極めて斬新で薄型の未来的なデザインをしており当時若者の心をしっかりと掴みました。
テクニクス SE-A808(写真上)
下はサンスイの同年代のプリアンプの名機CA-2000
SE-A808をCA-2000に繋いで音質確認中の全景
リファレンススピーカーはオンキョーD-77MRXとダイヤトーンDS-200ZX
SE-A808は、サンスイのプリアンプCA-2000と繋ぐととんでもない愉音を発しました。
どちらかというとCA-2000の癖が強く出てしまいますが、それを素直にそのまま増幅させてスピーカーをドライブする感じです。
スペック的に見ると、このSE-A808はジャズに向く音質として評価している1979年発売のプリメインアンプSU-8055のパワーアンプ部だけを取り出した感じで、おそらくこの推測はズバリ当たりだと思います、改めて調査したら定格出力や周波数特性などが同一なのです。
ということで、単体での音質は当然のことジャズファンに愛されたSU-8055と酷似しています。
サンスイCA-2000と繋ぐと単なる明るい音色に比べて低音域が締り、中高音域のシャープさが更に磨かれた感じでSU-8055の数段上の音質に化けます。
これは良い、JBLやダイヤトーンのスピーカーで50年代中盤に録音されたハードバップ系のジャズを聴くには理想的な音色です。
ちなみにリファレンススピーカーはオンキョーD-77MRXとダイヤトーンDS-200ZXです。
D-77MRXでは安心して聴いていられる大人の音色ですが、小型ブックシェルフでありながらDS-200ZXは至福の音色を奏でたのには驚きです。
この組み合わせ、何時までも聴いていられる音色です。
いろいろな新旧の組み合わせを愉しんでいますが、5本の指に入るというよりもオールドジャズ鑑賞にはベストに近い音色です。
この音色のパワーアンプが、40年前の3.5万円のアンプだなんてとても信じられません。
中古価格をネットで検索したら2万円以下で手に入ります、これは見つけたら即購入をお薦めします、ジャズファンなら決して後悔のない音を奏でてくれます。
音の抜けが良いというか曇りがまったくないスカッとした晴天のような音色です、ベースもドラムのハット系の金属質な響きも完璧です、オーディオ道楽を長年やってきた中でも極めて良い経験をしたと思います。
最後に難点を一つ、それはパワーアンプの基本的機能であるアッテネーターが付いていないところです、つまり音質確認には必ずプリアンプか外付けのアッテネーターが必要となり単独では使用不能なところです。
ちなみに単体での音質チェックは、探し回ってようやく手に入れたアッテネーター付きのラインセレクタであるフォステクスIS205を使いました。