小型パワーアンプの実力のほどは?-1~ケンウッド A-M70
2024年3月21日 08:00
BOSEの小型スピーカーのフラッグシップともいえる101、これをしっかり鳴らしこむために作られたパワーアンプのケンウッドA-M70(1991年発売、7万円)です。
パワーアンプというか、どちらかというとラインアンプですがフォノイコライザーやトーンコントロールが付いてないのでスペック上はパワーアンプの部類に入ってしまいます。
またNECにOEM供給し、NECのパソコンであるPC-98シリーズのPCオーディオアンプとしても売り出された実績を持ちます。
尚、BOSEは当時既に1701という101用の同様のパワーアンプを出しており、ケンウッドはこれにヒントを得ての製品化だったと考えられます。
ケンウッド A-M70
下はサンスイの名プリアンプCA-2000、比べるとどれほど小さいか解ります。
それにしてもケンウッドにはチャレンジ精神旺盛というか遊び心豊富な技術者が多いのか、昔から突然変異的な世のオーディオマニアに問うマニアックな製品を作るのが得意です。
このA-M70も多分にもれず極めてユニークな商品の一つだと思います。
現在、更に小型化されたデジタルアンプが発売されていますが、手のひらに乗る程のアンプとは思えない愉音を発して驚かされます。
外見は業務用アンプのようで、放熱フィンも含めてアルミダイキャストで一体成型されたケースとなっています。
ケース全体が放熱板の役目をしているのでここまで小型に作れたのでしょう。
裏面に小型スピーカー用のイコライザースイッチがあり、BOSE101などの小型スピーカーかその他のスピーカーかで音質を調整するようになっています。
この仕様はBOSEの101用に作られたパワーアンプであるBOSE1701~1705のシリーズと酷似しており、国内の代替え機の座を狙ったのかもしれません。
アルミ一体成型のケースというのも1701~1705を彷彿させるものがあります。
当時は、それほどBOSE101スピーカーはあらゆるところで使われていたのです。
音質は可もなく不可も無い無難な音質でこれといった特徴がありません、というかこれがケンウッドの音色なのです。
この価格でこの音色では買った人はかなり不満足でしょう、正直鳴るだけは鳴るアンプという感じの音色です、中型や大型ブックシェルフを繋ぐと顕著に薄っぺらさが出てしまいます。
ちなみにサンスイの名プリアンプCA-2000と合わせてみましたが、締りが良くなった程度で周波数レンジが広がることはなかったです、これは完全にA-M70のスペックの限界です。
小型業務用スピーカーと合わせて店舗のBGM用やデスクトップオーディオには使えるかもしれませんが、ホームユースでハイファイオーディオでは救いようの無い音質です。
テレビの音質改善やパソコン用のデスクトップオーディオアンプとしての利用法がベストなのかもしれません、そもそもそういったニーズに合わせた商品なのですから当然と言えば当然なのでしょう。
それにしても価格は半端無く高く感じます、当時主流の高音質なハイコンポでさえ5万円なのですから。
尚、ケース下の小型スピーカー用のイコライザーやフロントパネルに付いている小音量時に有効なバスブーストの効きは、切り替えるとはっきり分かるほど効果が出ます。
やっぱり、PCオーディオのデスクトップアンプとして使うべきアンプでしょう。