2025年11月17日 10:00
近年、Web3の進化とともに注目を集めている「DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Networks)」は、ブロックチェーンを活用し現実世界のインフラを中央集権に頼らず構築・運用しようとする新しいアプローチです。これまではHeliumのような通信ネットワークに焦点が当てられてきましたが、2025年現在DePINは通信のみならずAIコンピューティングやエネルギー取引、ストレージ、モビリティといった分野にも広がりを見せています。
分散型AIコンピューティング
DePINの中でも特に注目を集めているのがAI分野との連携です。たとえば「Bittensor(TAO)」は参加者が機械学習モデルの訓練に貢献することで報酬を得られるネットワークを構築しています。AIの民主化を掲げ中央集権的なビッグテックによる独占に対抗する構造を実現しています。
また、「io.net」は分散型のGPUレンダリングネットワークを提供しており、AIスタートアップや研究者が低コストで計算資源にアクセスできる環境を整えています。AI開発とDePINの融合は今後ますます加速していくことが予想されています。
分散型ストレージとデータ共有
インフラの基本要素として欠かせない「保存領域」もDePINによって変革が進んでいます。代表例は「Filecoin(FIL)」で世界中の個人が自宅PCの空き容量を提供し、報酬を得ることで巨大な分散型ストレージネットワークを形成しています。
さらに「Arweave(AR)」は、データを一度書き込めば永久に保存され続ける"パーマネント・ウェブ"を掲げたプロジェクト。政府記録・研究データ・アート作品の保存など、価値の高い長期アーカイブ用途に最適とされており、公共インフラとしての側面も帯びつつあります。
通信・映像インフラの分散化
通信分野では依然として「Helium」が存在感を放っています。個人がLoRaWAN対応ホットスポットを設置しIoTデバイスの通信を担う仕組みは、特に都市部以外のネットワークカバレッジ向上に効果を発揮しています。
また「Theta Network」はP2Pによる動画配信ネットワークを実現し、帯域を提供したユーザーに報酬を支払う仕組みを導入しています。ストリーミング業界においても分散型モデルの可能性が模索されています。
エネルギー分野:電力のP2P取引
「Power Ledger」は、太陽光発電などによって生成された再生可能エネルギーを個人間で直接売買できるプラットフォームです。送電網を介さず発電者と消費者を直接マッチングさせることで、余剰電力の有効活用と電力料金の低減を実現します。エネルギーの地産地消という観点からも注目を集めておりDePINによる脱炭素社会の加速が期待されています。
モビリティとリアルタイムセンサーデータ
自動車やEVなどの移動体から取得できるセンサーデータもDePINの領域です。プロジェクト「DIMO」はユーザーの車両から位置情報・エンジン状態・走行距離などのデータを収集し、それを分散的に共有・活用するネットワークを構築しています。スマートシティや自動運転などのインフラにも応用が期待されており「動くIoT」としてのDePIN実装が進んでいます。
DePINは新たな社会インフラとなるか
2025年時点でDePIN関連プロジェクトは1,500以上存在し時価総額は300億ドルを超えるとも言われています。AIの普及によって需要が急増する計算資源とそれを支える分散型インフラは切っても切れない関係にあります。つまりDePINは単なるブロックチェーンの応用にとどまらず、「次世代インフラ」の中核技術として今後の社会を支える可能性を秘めているのです。
