ホームシアターを実際に体験してみると解るのですが、サラウンドスピーカーの音質って意外と重要なことに気付かされます。
音が出ればよいか程度に考えて安価なもので済まそうとすると、ほとんど効果が期待できない結果となることが多いです。
音質というか設置方法だと思うのですが、ちょっと視聴位置をずらすだけでまったくサラウンドからの音がしてこないということが起こります。
オーディオ全般に言えることですが音は空気の波であり空間で合成されます、この時に同位相だと強調され逆位相だと相殺されて音が聞こえなくなるのです。
サラウンドスピーカーは、フロントスピーカーと直接音がぶつからないように斜め後ろから角度をかなり内側にして設置するとこういった現象が起きずらくなります。
尚、低音域は中高音域に比べて波長が長いので音が相殺される割合も多く、その為にサラウンド用に小型ブックシェルフを使う場合は必ずバスレフダクトにスポンジを詰めてバスレフダクトから音が出ないようにする必要があります。
サラウンド専用に作られた小型スピーカーはそのまま使用しても、再生帯域が調整されているので問題ありません、その意味では私がサラウンド用として多用しているのが小型の業務用スピーカーです。
低音域が丁度良くカットされていて、中高音域の張り出しが良く指向性もあって難なくサラウンド用に使えるからです。
また、フロントスピーカーに比べてあまりにも音圧が低いと音量調節だけではサラウンドの音を調節不可能となります、フロントスピーカーと比べて音圧レベルが極端に低くないスピーカーを合わせる必要があります。
少なくてもサラウンドスピーカーはセンタースピーカー同様にホームシアターシステムの要のスピーカーですから適当に考えてはいけません、フロントスピーカーには神経を使うのですがセンタースピーカーとサラウンドスピーカーはおまけ程度にしか考えていない人が実に多いです。
これは逆です、センタースピーカーとサラウンドスピーカーがしっかりしていればフロントスピーカーは好みのものを選んでも案外音量調整だけですんなりと迫力あるサラウンドが楽しめます。
フロントスピーカーを先に決めて、後からセンタースピーカーとサラウンドスピーカーを合わせようとするとなかなか上手く調整できないものなのです。
ホームシアターシステムというくらいですから、人間の組織と同様に後方支援部隊がしっかりしていれば前線部隊は安心して活躍できるというのと同じなのです。
ホームシアターシステムではフロントスピーカーにトールボーイ型を使うのが一般的な常識として存在しています、これには2つの大きな意味と理由が存在しているからです。
一つは接地場所と面積の問題です、中央に大型のスクリーンや液晶テレビを置くので部屋が充分に広いのであれば問題ありませんが、できるだけ画面を大型にしたいと考えるとどうしても設置面積の狭いスピーカーが要求されます。
その意味において、縦型にして容量を稼ぎ低音域まで出せる方式が考えられたのです。
もう一つが凄く重要な意味と理由があります、それは画面中央からボイスが聞こえるようにするためです。
通常のホームシアターシステムではフロントスピーカーが両サイド、センタースピーカーは画面の下に置きます。
そうすると、画面の中央からボイスを出そうとするとフロントスピーカーのスコーカーとツイーターは画面の上方向に来ていなければなりません。
ボイス成分は、フロントとセンタースピーカーに同じ音量が出るようにサラウンドで振り分けられています。
つまり、フロントの2つのスピーカーとセンタースピーカとの三角形の中心地点が画面の中央になるようにする必要があるのです。
この意味でもっと重要なのがこの3つのスピーカーの音量が同じである必要があるのです、つまり同程度の音圧のスピーカーを使う必要があります、この理由から画面の上側にスコーカーやツイーターを持ってくるために縦型のトールボーイ型が考えられたのです。
逆説的に言うと、この条件を満たしていればトールボーイを使う必要はないのです、これらの2つの条件を満たすのがトールボーイ型であるということだけです。
先ず最初に一言ですが、センタースピーカーはホームシアターシステムの必須なるスピーカーであり決してお飾りではありません。
ある意味ではフロントスピーカー以上に重要になります、その理由はこの記事を読んでいただければ納得してもらえるでしょう。
通常のホームシアターシステムではフロントスピーカーが画面の両サイドに設置し、センタースピーカーは画面の中央真下に置きます。
そしてサラウンドシステムの特性上、この3つのスピーカーにボイス成分が振り分けられています、サラウンド方式によってはセンタースピーカーだけに振り分けられる場合もあります。
一般的なサラウンド方式の場合にはボイスを画面の中心から綺麗に出そうとすると3つのスピーカーの位置と音量バランスが重要になってきます、映画鑑賞ではボイスが画面の中央から出ていないと気持ちよく愉しめません。
したがってフロントスピーカーのスコーカーとツイーターは画面の左右上方向に、センタースピーカーが画面の中央真下に設置すという理論が足り立つのです、つまり3つのスピーカーの逆三角形の中心が画面の中心と合っていなければならないのです。
この意味において、もっと重要なのがこの3つのスピーカーの音量が同じか若干センタースピーカーが高めである必要があるのです、つまりこの理論からセンタースピーカーはフロントスピーカーと同程度もしくは高めの音圧のスピーカーを使う必要があります。
こういった事情でセンタースピーカーの役割を考えるとセンタースピーカーが如何に重要かが解ります、たった1つの小さなスピーカーですがホームシアターでは極めて大きな意味を持つスピーカーなのです。
私はハイエンドからミドルクラスの沢山のセンタースピーカーを持っています、ホームシアター熱が最大の時では保有数が10本を超えていました。
その意味は、フロントスピーカーを入れ替えたときにそのスピーカーと音質や音圧が合うセンタースピーカーが不可欠だという事を経験上学んだからです。
その時々のフロントスピーカーによってセンタースピーカーとの相乗効果を最大にする為にどれほど苦労したか解りません、ホームシアターシステムを新たに組む際に最後まで決まらないのが常にセンタースピーカーなのです。
フロントスピーカーに対して音圧と音質が上でも下でもなく丁度良いものを合わせなくてはバランスが取れなくなるのです、多くのホームシアターファンはフロントスピーカーは上位機種にどんどん変えていってもセンタースピーカーは以前のものをそのまま使っている人が多いです。
これではボイスが飛び出してこないのでサラウンドも効果を発揮できません、センタースピーカーを変えただけで音場の迫力がガラッと変わるのです。
ホームシアターと言えばサラウンドシステムですが、その基本は5.1Chであることは過日お話しした通りです。
5.1Chにフロントの上面(フロントハイ)にサラウンドを加える方式が「7.1Ch」で、ドルビーアトモスの誕生によって本格的になった方式です。
更に視聴位置の横上面(サラウンドサイドハイ)を加える方式が「9.1Ch」、更に後方サラウンドの上面(サラウンドハイ)を加える方式が「11.1Ch」、そして視聴位置の真後ろ(サラウンドバック)に2つのスピーカーを距離を置かずに加える方式が「13.1Ch」で現在最もチャンネル数の多いサラウンド方式となります。
さてサラウンドのチャンネル数が増えていくと何が変わってくるかということですが、7.1Ch以降は2次元から3次元に音場が広がってくるというのが解り易いでしょう、それを極めて行くと13.1Chにまで至ったということです。
ドルビーアトモスでの9.1Ch以上ともなると頭の真上に音が広がり、SF映画を立体音像の大迫力で愉しめるようになります。
ただ、これを実現させるにはかなりの部屋の広さと、ハイエンドAVアンプや高性能スピーカーなどそれなりの設備が必要になります。
逆に、6畳~10畳ほどの広さの部屋であれば後方のサラウンドスピーカーを1.5メートルほどの高さに上げてやると、フロントスピーカーの音が壁や天井に反射して、なんと5.1Chでも頭上から音がしてくる3次元音像が得られてしまうのです。
更には、7,1Chでフロントハイスピーカーかイネーブルドスピーカーを追加すればもう完璧です。
これが広い部屋で大きなスクリーンを使って行おうとすると反射による効果が期待できません、だから必然的に多チャンネルが必要になってくるのです。
一般的な家庭で本格的なホームシアターを愉しむのであれば5.1Chや7.1Chで充分です、否むしろ音の臨場感的には好ましいのです。
壁や天井反射によるハーモニック効果の方が、自然な3次元音場を得られやすいということ覚えておくとよいでしょう。
あくまでもホームシアターのサラウンド方式の基本は5.1Chです、まずは基本をクリアしてから更に高みを目指してほしいと思います。
ホームシアターでのサラウンド方式ですがドルビーアトモス誕生以来チャンネル数は伸びる一方です、現存する最大チャンネル数は13.1Chとこれ以上無いというところまで行き着いています。
13Chと言えばAVアンプのパワーアンプ数も6つのステレオアンプに加えて1つのモノラルアンプとなり、スピーカーの端子だけでAVアンプのバックパネルが埋め尽くされ、配線するにも指が入る隙間が無いので横一列とするなど各種の工夫がなされています。
さて、チャンネル数は伸びる一方ですがチャンネル数が増えるとどんな効果が期待できるのでしょうか?
私は、効果以上に部屋を埋め尽くすスピーカーの数が気になってしまいます。
床にサブウーハー入れて9個、テレビの下に1個、天井に4つのスピーカーが設置される部屋は、広ければよいのですが一般的な都内のマンションでのリビングルームは広くても14畳程度だと思います。
この広さだと、部屋の壁や天井に反射した音によって意味のなさないチャンネルが生まれてきます。
つまり他のスピーカーの反射によって、本来のスピーカーから出てくる音が空間ハーモニック(音の合成)によってかき消されてしまうのです。
14畳程度であれば、7.1Chで充分に壁や天井の反射で3次元サラウンドが楽しめます。
10畳以下なら5.1Chでもフロントにトールボーイ型スピーカーを使い、サラウンドスピーカーを床と天井の真ん中よりも上に設置すれば充分に壁や天井反射によって3次元サラウンドと同じような効果が実現します。
広い部屋が用意できるならチャンネル数を増やす方がより3次元サラウンド効果を得やすいのですが、そうでない場合はむしろチャンネル数を増やすよりも反射音による効果を期待した方が良い場合が多いです。
ホームシアターを楽しむ場合、チャンネル数を追うのではなく部屋の広さに合わせてチャンネル数を決めるようにしたいものです。
また、狭い部屋に所狭しと置かれたスピーカーはビジュアル的にどうなのだろうかと思うのです。