
AVアンプと複数のスピーカーを使用して本格的なホームシアターを愉しみたいけど、とてもそんな予算もスペースも無いという場合に有効な手段があります。
それはサウンドバーという存在です、各社から売り出されているサウンドバーとは基本は横長のスピーカー(本体)1本ですがサブウーハーとのセットで売られているものもあります。
このサウンドバーの本体をテレビの前に、サブウーハーとセットの場合はサブウーハーをテレビの脇に設置するだけでホームシアターのようなサラウンドが実現します、アンプ内蔵のホームシアター版サラウンドアクティブスピーカーと考えれば解り易いでしょう。
ただサウンドバーという製品はいろいろな方式があるのでしっかり仕様を確認してから購入する必要があります、単なるテレビ音声の高音質化を図るものも存在しているし、疑似的なドルビーサラウンドを体験できるものまであります。
ドルビーサラウンドに対応しているものは、1本の横長スピーカーの中にフロントLR・センター・サラウンドLR用のスピーカーが配置されています。
サラウンドスピーカーユニットは斜め上面や斜め横面を向いており、天井や壁反射によって疑似サラウンドを行うように考えられています。
本格的なサラウンドを実現させたいと思うなら、最低でも5~6万円以上のサラウンド対応のサウンドバーならある程度の効果を期待できます。
10万円以上するものは、細長いスピーカーに小さなユニットがびっしりと埋め込まれており音質もそこそこ耐えられるものです、特にサブウーハーとのセットの場合はかなり音質が向上し長時間聞いていても疲れません。
音質だけをとればテレビだけで映画を観賞する場合に比べればかなりの効果が期待できます、ただしバラエティやニュース番組などではテレビの音声とほとんど変わりません。
手軽にホームシアターを経験してみたいという人にはお薦めの製品かもしれません、またベッドルームで高音質でテレビや映画を愉しみたいというニーズには手軽で良いかもしれません。
ただし、AVアンプと複数のスピーカーを使ったサラウンドシステムとは次元が異なる効果しか期待できないという事だけはお伝えしておきます。
サウンドバーのような使い方でもBOSEのテレビ用アクティブスピーカーはテレビの下に平べったい箱を敷くタイプで、エンクロージャの容積を稼ぎテレビの音質を向上させるものでありサウンドバーとは異なる目的の製品です。
しかしテレビの音質がガラッと良くなり、それなりの音質で映画やライブを愉しむことが可能です。
補足ですが、BOSEの家庭向け製品の多くは独特の籠った感じの低音域でパンチのある音色は期待できないものです、人によって好みがはっきり別れる音色だということだけはお伝えしておきます。

ホームシアターとハイファイオーディオでは求める音質が異なる為に、同じシステムで両立させようとするとどちらかの音質が犠牲になることになります、しかし物は考えようで工夫すれば両立も可能になります。
まず重要なのがフロントスピーカーです、何故ならホームシアターとハイファイオーディオで共有するスピーカーが唯一フロントスピーカーだからです。
AVアンプでステレオモードにすると、センターもサラウンドの各チャンネルもパワーアンプ部がシャットダウンしてフロントのパワーアンプ部だけが稼動するようになっています。
ちょっと昔のAVアンプではセンターチャンネルやサラウンドチャンネルは手動でオフするスイッチが付いていましたが、現在のAVアンプは全て自動で行ってくれます。
さて、その共有するフロントスピーカーをハイファイオーディオ用の高音質トールボーイや、ブックシェルフなどのハイファイオーディオに耐えうる音質のスピーカーを使うことが再重要です。
またAVアンプは基本的にハイファイオーディオ用のアンプに比べて音質は劣ります、これをサポートするのがハイファイ用のプリメインアンプかパワーアンプとなります。
AVアンプのフロントスピーカー端子に直接フロントスピーカーを繋ぐのではなく、AVアンプのフロントプリアウトにプリメインアンプかパワーアンプを繋ぎ、その先にフロントスピーカーを繋ぐのです。
この時にフロントスピーカーのスイッチをオフにするとAVアンプのフロントパワーアンプもオフになり無駄な電力消費を抑えることができます、つまりこの場合のAVアンプはサラウンドプロセッサーとして機能します。
さて結果的にどうなるかというと、ホームシアターではAVアンプはサラウンドプロセッサーと化してセンターとサラウンドのパワー部のみ稼動することになります。
フロントはAVアンプのプリ部だけを通してプリメインアンプやパワーアンプの高音質の音質で駆動することになり、ホームシアターでは勿論、ステレオモードで高音質のハイファイオーディオを堪能できるのです。
これでCDでのハイファイオーディオもブルーレイやDVDでのホームシアターも高音質で堪能できる両立システムが出来上がります、理論を知ってテクニックを駆使すればどんなことも理想通りに実現させることができるのです。

最近のホームシアターでは昔のようにプロジェクターではなく高画質の4K大型液晶テレビを使うのが一般化してきています、ここでテレビを使うのですからホームシアターを愉しむだけではなく通常のテレビとしても観る機会が多くなります。
この場合にテレビの音声をそのまま聴くのでは芸が無さ過ぎます、せっかくのホームシアターシステムなのですからテレビ単体での音声もホームシアターシステムの高音質疑似サラウンドで大いに愉しみましょう。
この場合の接続方法ですが、もっとも簡単なのはテレビのHDMIが音声出力に対応していればテレビとAVアンプを繋ぎ、入力セレクタで繋いだコネクタを選択すればDVDやブルーレイと同じようにテレビ音声を疑似サラウンドでしかも高音質で愉しむことができます。
また光デジタル音声出力やアナログ音声出力が出ている場合はそれを使っても実現します、最悪でもイヤホンジャックにRCA変換ケーブルを使って音声出力を取ることも可能です。
どの方法をとってもテレビのスピーカー出力はミュート(消音)にしてテレビ自体から音声が出ないようにする必要があります、要は原理を知ってテクニックを駆使すれば何でもできるということです。
またテレビドラマをDVD化されたものも多く販売されていますが、これらの音声は映画の音声のようにサラウンド対応ではなくステレオもしくは疑似ステレオになっています。
したがってAVアンプのモードはステレオ5.1Chにしないと音声が綺麗に再生されません、もしくはステレオモードでサラウンドをオフにしてフロントとセンターだけにした方が音質的にはナチュラルで愉しめます。
更に昔のドラマは全てモノラルですからAVアンプのソースモードをモノラルにして音質だけを高めるようにした方が効果的です、ソースに合わせていろいろやってみて経験として学ぶことが重要です。

ホームシアターを楽しむための必須事項とまでは言いませんが、シアタールームのカーテンは遮光カーテンにしてほしいと思います。
その一番の意味は明るい昼間でも映画館やライブハウスの雰囲気をそのままに楽しめるからです、映画館やライブハウスは歩くのに障害が無いほどの明るさです。
暗い部屋でプロジェクターや液晶テレビを見続けると目がいたくなるという人もいます、そういう場合は遮光カーテンで外の光を遮ったうえで明かりを点けてほしいです。
その最大の意味は特にSF映画では宇宙や夜など暗いシーンが多いので、外の光がテレビやスクリーンに入ると詳細な映像がクリーンに観ることができないからです。
また部屋の明かりは蛍光灯ではなくて暖色のLEDか普通の白熱電球にすることをお薦めします、これらは紫外線が出ないので目が疲れることも無いし簡単な器具を使えば幾らでも明るさや灯す方向を変えられるからです。
また天井や壁に反射させた間接光は、直接発光源の光が目に入らないので目も疲れないしリラックスして映画を楽しむことができます。
こういったところにも気を遣うことで同じ映画を鑑賞してもまったく違ったものになるのです、ホームシアターもオーディオと同じで機械よりもそれを愉しむ環境に最もお金がかかるのです。

アクティブ型(アンプ内蔵)のサブウーハーにはデジタルアンプと重低音域だけを取り出すフィルターが内蔵されています、したがってアンプのプリアウト端子にサブウーハーを繋ぐと通常の音声情報のうち重低音域しか再生されません。
この特性を応用してダブルサブウーハー(ステレオサブウーハー)というテクニックがあります、本来はオーディオで小型スピーカーを使う場合の重低音域の補正を手軽に行える疑似マルチアンプ方式でのテクニックですが、これをホームシアターに応用してしまうというものです。
ミドルクラス以上のAVアンプの多くにはフロントプリアウトとセンタープリアウト、そしてサブウーハー用端子が付いています、そこでサブウーハー端子ではなくフロントプリアウトのLRにそれぞれ1つのサブウーハーを繋ぐのです。
つまり5.1Chでは5.2Chとなります、この場合のサブウーハーは前方に直接音を出すタイプのサブウーハーがお奨めです。
そしてフロントスピーカーに中型か小型のブックシェルフを使って、その下にサブウーハーをそれぞれ設置します。
こうするとフロントスピーカーチャンネルが重低音域まで出すような格好となり、本来のサブウーハーの代わりをします。
しかもステレオでの重低音は迫力があり、これにハマると1発使いのサブウーハーに戻せなくなるほどです。
ただライブ感を愉しむ場合は良いのですが、SF映画などでの下から湧き上がるような重低音の効果は期待できません。
私は一時的にこのダブルサブウーハーを愉しんでいた時期があるのですが、どうしてもSF映画などでのどこからともなく聞こえてくる地響きのような重低音が自分好みだと解ってシングルサブウーハーに戻した経験があります。
どんなジャンルでホームシアターを愉しむかで重低音域の出し方も変わってきます、ジャンル次第ではこのダブルサブウーハー方式は虜になってしまう人もいるでしょう。
スペースさえ確保できるなら、ダブルサブウーハー方式と間接的な重低音を再生するサブウーハーを使ったトリプルサブウーハーも面白いかもしれません、つまり5.1Chが5.3Chになるわけです。
ただし問題は重低音域の位相反転での空間合成で重低音域が相殺されマイナス効果と出る可能性があります、狭い部屋ではこのリスクの方が高いので置き方に充分な注意が必要です。
ダブルサブウーハーでさえ位相反転合成で重低音が消えてしまうという苦い経験を嫌と言うほど味わっている私は、そこまでリスクを冒してまでやってみたいとは思いません。
一本の間接型サブウーハーでさえ置き場所を間違えると後方に出た重低音が後方壁反射で相殺される事もあるのですから、そうとう設置場所と3つのサブウーハーの音量調整に苦労すると思うのです。