
バブル経済崩壊後に本格的になってきたホームシアターですが、その中心に在ったのがAVアンプであることは言わずもがです。
初期の頃のAVアンプはオーディオ用のミドルクラスのプリメインアンプを改良し、サラウンドプロセッサーをプリアンプとメインアンプの間に配し、メインアンプを5チャンネル分無理くりに詰め込んだという恐ろしい代物でした。
ですから、重量も凄いのですが音はしっかりしていました。
価格は、主力のミドルクラスで15~25万円前後で、最上級クラスが50万円程でした。
エントリークラスは7万円程度でも、5つもメインアンプを積んでいるのですからかなり大型になっていました。
しかし、今の時代はエントリークラスだとデジタルアンプを積んで3万円台から出ています。
しかもワイドFMチューナーを搭載し、ブルートゥースでスマホと接続できるデジタル対応の音楽エンターテイメントステーションと化しています。
更に驚くのは、ミドルクラスともなると7.1Chならず9.1Chや11.1Ch、ハイエンドクラスでは13.2Chと恐ろしいほどのチャンネル数を実現しています。
どんな部屋で9.1Ch以上を実現させようとしているのかは不明ですが、9.1Ch以上でのサラウンド効果を確実に期待するなら相当大きな部屋が必要とするはずです。
逆に、最高級版になるとAVプリアンプとAVパワーアンプとのセパレート型となり、セットで100万円を越えるものも出ています、AVアンプの世界も確実に二極分化しています。
ここで驚くのはミドルクラスのAVアンプの機能の充実ぶりです、レコードからCD、またブルーレイ対応とアナログ+デジタル音源と映像をコントロールして更にモバイルオーディオにも対応しています。
勿論、サラウンドモードは最新版も入れてかなりの数のサラウンドモードを搭載しています。
しかも、複雑な各チャンネルの音量や音質設定が専用のマイクを使ってワンタッチで行えるという自動設定モードまで組み込まれています、これならビギナーでも扱えます。
当然、音質は犠牲になっているのでしょうが、そもそもAVアンプは迫力ある音の再現が目的ですからそれほど神経質な音質は求められないでしょう。

先日はホームシアターとハイファイオーディオを一つのシステムで共有化する方法をお伝えしましたが、今回はこれを更に発展させてDVDやブルーレイでのホームシアターとCDやレコードでのハイファイオーディオを完全に共有でき、それぞれの音質を損なわない方法をお伝えします。
先日もお伝えしたように、フロントスピーカーはホームシアターとハイファイオーディオで唯一共有するスピーカーですのでハイファイオーディオに耐えうるスピーカーを用意します。
このスピーカーにAVアンプのフロントチャンネルのスピーカー出力とハイファイオーディオ用のプリメインアンプのスピーカー出力を繋げば良いわけですが、2つのアンプをパラレル接続するのは電気特性上アウトです。
スピーカーセレクターを投入して切り替える方法もありますが、都度切り替えるのも面倒ですしスマートに行いたいものです。
そこで私が実践している方法をお教えします、まずDVD/ブルーレイプレーヤーはAVアンプに繋ぎます、またCDプレーヤーはプリメインアンプに繋ぎます。
そしてAVアンプのフロントプリアウトをプリメインアンプの入力コネクタのAUXに接続します、フロントスピーカーはプリメインアンプのスピーカー端子に繋ぎます。
こうするとCDを聴く時には、CDプレーヤーとプリメインアンプだけをオンにして通常通りにCDに入力セレクタを合わせて聴けばステレオ再生でのハイファイ音質でCD鑑賞できます。
また映画をホームシアターで愉しむ時は、DVD/ブルーレイプレーヤー・AVアンプ・プリメインアンプをオンにして、プリメインアンプの入力をAUXにして音量調節すれば高音質でホームシアターが愉しめるのです。
こういった方法を考え出す際に、重要なポイントはスピーカーをどこに接続するかという出口から辿っていくと解り易いす、逆にソースの入力側から辿っていくとスピーカー出力側で頭が混乱します。
この接続法はあくまでも私の中でのベストな方法です、無駄な電力消費をせずに音質を高める方法だと思います。
消費電力を気にせず費用も幾らかかっても良いというのであれば手っ取り早くハイエンドのAVプリアンプを購入し、フロントチャンネルにハイファイオーディオ用のパワーアンプを繋ぎ、その他のチャンネルはマルチアンプのAVパワーアンプを接続すれば最も簡単に実現できます。
ちなみにこの方法は私の方法に比べて消費電力は3倍以上で、予算的にも最低でも5倍ほどかかることを覚悟してください。
AVプリアンプとAVパワーアンプだけで100万円以上します、こんな高額なシステムで映画の鑑賞だけならまったく意味の成さないシステムになります。
むしろSF映画などでは大人しい音色となり迫力不足にがっかりするかもしれません、高級なAVセパレートアンプはクラシックのオーケストラなどのコンサート等のブルーレイディスクで本領発揮できるシステムなのです。

ホームシアターのソースはDVDやブルーレイだけではなく、VOD(ビデオ・オン・デマンド)やPC動画、またテレビ放送そのものとバリエーションが数多く存在しています。
映画のDVDやブルーレイの多くはサラウンドに対応した音作りがされていますが、ドラマやVODの多くはステレオもしくは昔のものはモノラルというのも存在しています。
ソースそのものがサラウンドに対応していない場合にAVアンプを使う意味があるのかというと疑問が起きます、サラウンド以外のソースを入力した場合のAVアンプの音質は同クラスのプリメインアンプに比べて荒くて無意味に派手になりナチュラルではありません。
そこで音質向上だけを考えるのであれば、AVアンプよりもハイファイオーディオ用のプリメインアンプを並行して使うという手があります。
つまりソースによってAVアンプを経由して音声を出力するのか、プリメインアンプを経由して音声を出力するのかを振り分けるのです。
一見すると複雑な配線が必要なように思えますが、実際にやって見るとそうでもありません。
HDMIインターフェースでDVD/ブルーレイプレーヤーを接続している場合は全ての映像と音声は一旦テレビに収束されていますのでテレビから音声だけを光デジタルなどで取り出してプリメインアンプ経由で音声出力すれば後者の方法を実現できます。
プリメインアンプに光デジタル入力が無ければ外付けのDACを繋ぐ事で解決します、この場合はDVD/ブルーレイプレーヤーやHDDレコーダーの音声だけは両アンプに振り分けられても映像はテレビに集約されるように配線方法を考える必要があります。
私は映像と音声の信号経路を分けて考えることで簡単な配線を導き出していますが、手持ちの機種に合わせた方法を取る必要がありますので、それぞれが手持ちのAVアンプやプレーヤー類の入出力コネクタを見比べて思考する必要があります。
とにかく目的達成にはいろいろやってみて工夫すれば何とかなるものです、接続方法の独自のアイデア出し、これもホームシアターの愉しみの一つでもあるのです。

AVアンプと複数のスピーカーを使用して本格的なホームシアターを愉しみたいけど、とてもそんな予算もスペースも無いという場合に有効な手段があります。
それはサウンドバーという存在です、各社から売り出されているサウンドバーとは基本は横長のスピーカー(本体)1本ですがサブウーハーとのセットで売られているものもあります。
このサウンドバーの本体をテレビの前に、サブウーハーとセットの場合はサブウーハーをテレビの脇に設置するだけでホームシアターのようなサラウンドが実現します、アンプ内蔵のホームシアター版サラウンドアクティブスピーカーと考えれば解り易いでしょう。
ただサウンドバーという製品はいろいろな方式があるのでしっかり仕様を確認してから購入する必要があります、単なるテレビ音声の高音質化を図るものも存在しているし、疑似的なドルビーサラウンドを体験できるものまであります。
ドルビーサラウンドに対応しているものは、1本の横長スピーカーの中にフロントLR・センター・サラウンドLR用のスピーカーが配置されています。
サラウンドスピーカーユニットは斜め上面や斜め横面を向いており、天井や壁反射によって疑似サラウンドを行うように考えられています。
本格的なサラウンドを実現させたいと思うなら、最低でも5~6万円以上のサラウンド対応のサウンドバーならある程度の効果を期待できます。
10万円以上するものは、細長いスピーカーに小さなユニットがびっしりと埋め込まれており音質もそこそこ耐えられるものです、特にサブウーハーとのセットの場合はかなり音質が向上し長時間聞いていても疲れません。
音質だけをとればテレビだけで映画を観賞する場合に比べればかなりの効果が期待できます、ただしバラエティやニュース番組などではテレビの音声とほとんど変わりません。
手軽にホームシアターを経験してみたいという人にはお薦めの製品かもしれません、またベッドルームで高音質でテレビや映画を愉しみたいというニーズには手軽で良いかもしれません。
ただし、AVアンプと複数のスピーカーを使ったサラウンドシステムとは次元が異なる効果しか期待できないという事だけはお伝えしておきます。
サウンドバーのような使い方でもBOSEのテレビ用アクティブスピーカーはテレビの下に平べったい箱を敷くタイプで、エンクロージャの容積を稼ぎテレビの音質を向上させるものでありサウンドバーとは異なる目的の製品です。
しかしテレビの音質がガラッと良くなり、それなりの音質で映画やライブを愉しむことが可能です。
補足ですが、BOSEの家庭向け製品の多くは独特の籠った感じの低音域でパンチのある音色は期待できないものです、人によって好みがはっきり別れる音色だということだけはお伝えしておきます。

ホームシアターとハイファイオーディオでは求める音質が異なる為に、同じシステムで両立させようとするとどちらかの音質が犠牲になることになります、しかし物は考えようで工夫すれば両立も可能になります。
まず重要なのがフロントスピーカーです、何故ならホームシアターとハイファイオーディオで共有するスピーカーが唯一フロントスピーカーだからです。
AVアンプでステレオモードにすると、センターもサラウンドの各チャンネルもパワーアンプ部がシャットダウンしてフロントのパワーアンプ部だけが稼動するようになっています。
ちょっと昔のAVアンプではセンターチャンネルやサラウンドチャンネルは手動でオフするスイッチが付いていましたが、現在のAVアンプは全て自動で行ってくれます。
さて、その共有するフロントスピーカーをハイファイオーディオ用の高音質トールボーイや、ブックシェルフなどのハイファイオーディオに耐えうる音質のスピーカーを使うことが再重要です。
またAVアンプは基本的にハイファイオーディオ用のアンプに比べて音質は劣ります、これをサポートするのがハイファイ用のプリメインアンプかパワーアンプとなります。
AVアンプのフロントスピーカー端子に直接フロントスピーカーを繋ぐのではなく、AVアンプのフロントプリアウトにプリメインアンプかパワーアンプを繋ぎ、その先にフロントスピーカーを繋ぐのです。
この時にフロントスピーカーのスイッチをオフにするとAVアンプのフロントパワーアンプもオフになり無駄な電力消費を抑えることができます、つまりこの場合のAVアンプはサラウンドプロセッサーとして機能します。
さて結果的にどうなるかというと、ホームシアターではAVアンプはサラウンドプロセッサーと化してセンターとサラウンドのパワー部のみ稼動することになります。
フロントはAVアンプのプリ部だけを通してプリメインアンプやパワーアンプの高音質の音質で駆動することになり、ホームシアターでは勿論、ステレオモードで高音質のハイファイオーディオを堪能できるのです。
これでCDでのハイファイオーディオもブルーレイやDVDでのホームシアターも高音質で堪能できる両立システムが出来上がります、理論を知ってテクニックを駆使すればどんなことも理想通りに実現させることができるのです。