
アクティブ型(アンプ内蔵)のサブウーハーにはデジタルアンプと重低音域だけを取り出すフィルターが内蔵されています、したがってアンプのプリアウト端子にサブウーハーを繋ぐと通常の音声情報のうち重低音域しか再生されません。
この特性を応用してダブルサブウーハー(ステレオサブウーハー)というテクニックがあります、本来はオーディオで小型スピーカーを使う場合の重低音域の補正を手軽に行える疑似マルチアンプ方式でのテクニックですが、これをホームシアターに応用してしまうというものです。
ミドルクラス以上のAVアンプの多くにはフロントプリアウトとセンタープリアウト、そしてサブウーハー用端子が付いています、そこでサブウーハー端子ではなくフロントプリアウトのLRにそれぞれ1つのサブウーハーを繋ぐのです。
つまり5.1Chでは5.2Chとなります、この場合のサブウーハーは前方に直接音を出すタイプのサブウーハーがお奨めです。
そしてフロントスピーカーに中型か小型のブックシェルフを使って、その下にサブウーハーをそれぞれ設置します。
こうするとフロントスピーカーチャンネルが重低音域まで出すような格好となり、本来のサブウーハーの代わりをします。
しかもステレオでの重低音は迫力があり、これにハマると1発使いのサブウーハーに戻せなくなるほどです。
ただライブ感を愉しむ場合は良いのですが、SF映画などでの下から湧き上がるような重低音の効果は期待できません。
私は一時的にこのダブルサブウーハーを愉しんでいた時期があるのですが、どうしてもSF映画などでのどこからともなく聞こえてくる地響きのような重低音が自分好みだと解ってシングルサブウーハーに戻した経験があります。
どんなジャンルでホームシアターを愉しむかで重低音域の出し方も変わってきます、ジャンル次第ではこのダブルサブウーハー方式は虜になってしまう人もいるでしょう。
スペースさえ確保できるなら、ダブルサブウーハー方式と間接的な重低音を再生するサブウーハーを使ったトリプルサブウーハーも面白いかもしれません、つまり5.1Chが5.3Chになるわけです。
ただし問題は重低音域の位相反転での空間合成で重低音域が相殺されマイナス効果と出る可能性があります、狭い部屋ではこのリスクの方が高いので置き方に充分な注意が必要です。
ダブルサブウーハーでさえ位相反転合成で重低音が消えてしまうという苦い経験を嫌と言うほど味わっている私は、そこまでリスクを冒してまでやってみたいとは思いません。
一本の間接型サブウーハーでさえ置き場所を間違えると後方に出た重低音が後方壁反射で相殺される事もあるのですから、そうとう設置場所と3つのサブウーハーの音量調整に苦労すると思うのです。

ホームシアターで映画館のような迫力ある音での臨場感を愉しむ場合に重要なのが重低音です、ここでホームシアターに求められる重低音とハイファイオーディオに求められる重低音は質が異なるということを念頭に置いて下さい。
ハイファイオーディオでは小型スピーカーの重低音域の補正がその役割です、したがってメインの小型スピーカーの音と方向や広がり方と調和をとる必要があります。
そういった意味ではフロントにスピーカーが付いているタイプやバスレスダクトがフロントに付いているサブウーハーが理想的で、低音がまっすぐ飛んでくるタイプが合わせやすいです。
対してホームシアターで求められる重低音は、何処からともなく聞こえてくる部屋に音が充満するようなドロっとした重低音が理想的です、これを実現させるサブウーハーは背面や内部にユニットが付いており底面から間接的に重低音を垂れ流すタイプです。
またオーディオとホームシアターを融合させて愉しむ人が多くなってきましたが、この場合はフロントからまっすぐ飛んでくるハイファイオーディオ向けのサブウーハーが適役でしょう。
たかがサブウーハー、何故いろんな方式が存在しているのかを疑問に感じて自身の目指す理想のスタイルに合った方式のものを買うようにしましょう。
何事もそうですが意味も理由も考えずに趣向だけで闇雲に行ったとろこで本質は見えてきません、そして意味も無いものを買ってしまっては本来の目的を達成できずに損をするのです。
ちなみに私はホームシアターとオーディオの混在システムを組んでいますがサブウーハーはホームシアター向けの重低音を垂れ流しする間接タイプを使っています、ステレオ再生でオーディオを愉しむ場合はフロントスピーカーがオーディオ用の低域まで出るトールボーイなのでサブウーハーは電源を切って使わないという方式で両立させています。

最新のサラウンド方式であるドルビー・アトモスやDTS:X方式での立体3次元サラウンドを手軽に実現できるのがイネーブルドスピーカーという存在です、ドルビーサラウンドの最新のドルビーアトモスではフロントスピーカーの上面から音を出すフロントハイというチャンネルがあります。
このチャンネルによって5.1Chでは平面だったサラウンドが3次元のサラウンドに変わります、したがってドルビーアトモス対応のAVアンプは7.1Ch以上のチャンネル数が必要になります。
フロントハイでは天井にスピーカーを設置しなければならないのですが、このイネーブルドスピーカーは天井にスピーカーを設置しなくてもフロントスピーカーの上に乗せるだけでフロントハイと同じ効果が得られるという代物です。
イネーブルドスピーカーのスピーカーユニット面は斜め上を向いています、この角度によって音が天井に反射してフロントハイと同じ効果を得られるように考えだされた方式です。
ドルビーアトモス対応の最新AVアンプではイネーブルドスピーカーを使用するかしないかを設定でき、イネーブルドスピーカーを使用する場合は必ず設定をオンにしなければ効果を発揮できません。
音の反射で上空から音を響かせるのですから、フロントスピーカー以上の強力な中高音域が必要とします。
したがって、イネーブルドスピーカーは小型ながらも最大入力W数が150W以上と強力なユニットが搭載されています。
デノンのイネーブルドスピーカーSC-EN10Mを単独で音質を確認すると、低音域も100Hz程度まで出るし超小型ながらも流石に中高音域の伸びと張り出しは凄いです。
しかし実際のシステムに組んだ場合ではフロントとサラウンドスピーカーとの音圧差が出て効果はあまり感じられません、各チャンネルの音圧をしっかり合わせる必要があり、フロントやサラウンドと同じシリーズのセットで使わないと意味が無い存在となる可能性もあります。
シリーズで使用できない場合は、無いよりもまし程度となりますがマンションなどで壁にスピーカーを取り付けられない場合は有効な手段となるでしょう。

ホームシアターを実際に体験してみると解るのですが、サラウンドスピーカーの音質って意外と重要なことに気付かされます。
音が出ればよいか程度に考えて安価なもので済まそうとすると、ほとんど効果が期待できない結果となることが多いです。
音質というか設置方法だと思うのですが、ちょっと視聴位置をずらすだけでまったくサラウンドからの音がしてこないということが起こります。
オーディオ全般に言えることですが音は空気の波であり空間で合成されます、この時に同位相だと強調され逆位相だと相殺されて音が聞こえなくなるのです。
サラウンドスピーカーは、フロントスピーカーと直接音がぶつからないように斜め後ろから角度をかなり内側にして設置するとこういった現象が起きずらくなります。
尚、低音域は中高音域に比べて波長が長いので音が相殺される割合も多く、その為にサラウンド用に小型ブックシェルフを使う場合は必ずバスレフダクトにスポンジを詰めてバスレフダクトから音が出ないようにする必要があります。
サラウンド専用に作られた小型スピーカーはそのまま使用しても、再生帯域が調整されているので問題ありません、その意味では私がサラウンド用として多用しているのが小型の業務用スピーカーです。
低音域が丁度良くカットされていて、中高音域の張り出しが良く指向性もあって難なくサラウンド用に使えるからです。
また、フロントスピーカーに比べてあまりにも音圧が低いと音量調節だけではサラウンドの音を調節不可能となります、フロントスピーカーと比べて音圧レベルが極端に低くないスピーカーを合わせる必要があります。
少なくてもサラウンドスピーカーはセンタースピーカー同様にホームシアターシステムの要のスピーカーですから適当に考えてはいけません、フロントスピーカーには神経を使うのですがセンタースピーカーとサラウンドスピーカーはおまけ程度にしか考えていない人が実に多いです。
これは逆です、センタースピーカーとサラウンドスピーカーがしっかりしていればフロントスピーカーは好みのものを選んでも案外音量調整だけですんなりと迫力あるサラウンドが楽しめます。
フロントスピーカーを先に決めて、後からセンタースピーカーとサラウンドスピーカーを合わせようとするとなかなか上手く調整できないものなのです。
ホームシアターシステムというくらいですから、人間の組織と同様に後方支援部隊がしっかりしていれば前線部隊は安心して活躍できるというのと同じなのです。

ホームシアターシステムではフロントスピーカーにトールボーイ型を使うのが一般的な常識として存在しています、これには2つの大きな意味と理由が存在しているからです。
一つは接地場所と面積の問題です、中央に大型のスクリーンや液晶テレビを置くので部屋が充分に広いのであれば問題ありませんが、できるだけ画面を大型にしたいと考えるとどうしても設置面積の狭いスピーカーが要求されます。
その意味において、縦型にして容量を稼ぎ低音域まで出せる方式が考えられたのです。
もう一つが凄く重要な意味と理由があります、それは画面中央からボイスが聞こえるようにするためです。
通常のホームシアターシステムではフロントスピーカーが両サイド、センタースピーカーは画面の下に置きます。
そうすると、画面の中央からボイスを出そうとするとフロントスピーカーのスコーカーとツイーターは画面の上方向に来ていなければなりません。
ボイス成分は、フロントとセンタースピーカーに同じ音量が出るようにサラウンドで振り分けられています。
つまり、フロントの2つのスピーカーとセンタースピーカとの三角形の中心地点が画面の中央になるようにする必要があるのです。
この意味でもっと重要なのがこの3つのスピーカーの音量が同じである必要があるのです、つまり同程度の音圧のスピーカーを使う必要があります、この理由から画面の上側にスコーカーやツイーターを持ってくるために縦型のトールボーイ型が考えられたのです。
逆説的に言うと、この条件を満たしていればトールボーイを使う必要はないのです、これらの2つの条件を満たすのがトールボーイ型であるということだけです。