2024年12月 9日 07:00
バブル経済崩壊後に多くのオーディオメーカーが経営破綻や事業撤退、また事業縮小などを行いオーディオ氷河期が10年以上続きました、その中で徐々に事業を拡大していったメーカーがデノンです。
デノンは、オーディオ氷河期にも関わらず超高級ハイエンドのS-1シリーズ、その後に空前の大ヒット&ロングセラーのプリメインアンプPMA-2000を立て続けに出し猛然とオーディオ界に台頭してきました。
デノンは国内メーカーでは最も早くデジタル時代を先取りした製品を誕生させていました、まずはホームシアター部門に力を入れドルビーの仕様が1983年に出るや否や世界最速で1985年には製品化するなど、AVアンプ部門においても世界ブランドに成長させました。
次いで1987年には世界初のDAC搭載アンプを世に送りだします、更にはこういった快挙の裏でホールディングカンパニーとしての経営母体を確立し、老舗のオーディオメーカーであるマランツを取り込んでいきました。
現在ディアンドエムホールディングスはデノンとマランツの他に両社が輸入代理店を行ってきた多くのオーディオブランドを扱うという、世界でも屈指の最強を誇るオーディオメーカーとなったのです。
さて他のオーディオメーカーが衰退していく中で、何故このような偉業を達成する事ができたのでしょうか?
ここからはあくまでも私の推測ですが、それは「唯我独尊」を貫き通したからだと思うのです。
80年代中盤から起こったスピーカー598戦争にアンプ798戦争、多くのオーディオメーカーが参戦し市場を奪い合う大死闘が繰り広げられました。
赤字覚悟でのシェア争い、あり得ない機能と部品を贅沢に使った製品がミドルクラスに溢れかえったのです。
しかも世はバブル経済期です、10万円以下で買えるオーディオ製品はイマイマで言うエントリー版の価格感覚です。
今の時代にセット10万円の製品ををポンとポケットマネーで買える人は稀だと思いますが、35年も前の当時は10万円以下でミドルクラスが手に入るのはむしろ安いという人の方が多かった思います。
そんな狂ったような時代にあって、この死闘を尻目に独自の製品を598や798に無関係に適正価格で製品を出していたのがデノンでした。
私はこんな姿勢が好ましいと思ったのか、まだCDが出始めたばかりだというのに時代を先取りした世界初のDAC搭載プリメインアンプPMA-780Dを買ったりしたものです。
先日久しぶりに動作確認で音出ししてみましたが、どこも異常なく昔のままの愉音で嬉しくなりました、798時代に9万円で堂々と勝負し他社には無いDAC搭載とあって当時はかなり話題になっていたと記憶しています。
このPMA-780Dの後に、各社が徐々にDACを搭載したデジタル対応のアンプを出すようになったのです。
名門サンスイは、アナログに拘るが為にCDやホームシアターといったデジタル対応の波に乗り遅れてしまった感があります、そしてあっという間に衰退していきました。
私もびっくりするほど一瞬でレコードからCDに時代が移りました、たったの1年ほどで気が付いた時にはレコード屋にレコードが置いてなかったのですから。
唯一レコードを見つけたと思ったら店頭に山積みの半額処分価格のカゴの中です、時代が変われば拘りを捨て自身も方向転換しなくては駄目だという良い教訓なのかもしれません。