2024年8月12日 07:00
バブル経済ド真中の頃の話しですが、レストランでドンペリ(ドン・ペリニヨン)を頼むと最低5万円はしたものでした。
でも当時は2人で高級レストランに行き10万円以下なら安いという感覚の時代です、ドンペリで乾杯するなどは珍しくはありませんでした。
そんなことを繰り返しているうちに、シャンパンベースのカクテルよろしくドンペリにトマトジュースやクランベリージュースを割って飲んでみたことがあります、今これをやったら完全に引かれます。
この時に改めてドンペリの凄さが解ったのですが何で割ってもドンペリの味なのです、つまりベースがドンペリだと誰もがすぐに解るのです。
それが同じメーカーのモエシャン(モエ・エ・シャンドン)だと割りものの味の方が勝ってしまってシャンパンベースだとは解るものの銘柄までは解りません、これが世界に誇るキング・オブ・シャンパンの存在価値なのです。
ここで何故ドンペリの話しをするのかということなのですが、これが重要な例えなのです。
日本のオーディオメーカーで世界に君臨するラックスマン、60年代から日本を代表する高級ハイエンドアンプメーカーとして名を知らない人はいないほどです。
これがアメリカやヨーロッパでは、日本で最高級アンプとして崇められるマッキントッシュと同等もしくはそれ以上の評価と価格を誇っているのです。
このラックスマンのアンプの凄さが先のドンペリと同様なのです、つまりラックスマンのプリアンプにどのメーカーのパワーアンプを繋いでも奥底にしっかりとラックスマンの音色が残っているのです。
このラックスマンの独特の音を「ラックストーン」とオーディオマニアの間では称しています、ちなみにラックストーンのラックスはラックスマンの初期のブランドである「Lux:ラックス」から取ったものです。
このラックストーンですが、パワーアンプよりもプリアンプやプリメインアンプの方が強く押し出ているように感じます。
ラックスマンのプリアンプにいろいろなメーカーのパワーアンプを繋いで音を愉しんでいたときに、過去の実体験から「ラックスマンはアンプ界のドンペリだ!」と思わず頭の中で叫んでしまったのです。
世の中には在るのですね、単独で聴くと癖が無く愉音を醸し出すアンプでも他社メーカーの製品と繋いだ途端に個性を発揮するアンプが。
この「ラックストーン」ですが人によって好みが大きく分かれます、サンスイアンプのようにクールでメリハリのある音色を好む人には拒絶の対象のような音色で、まったりしたマイルド系の音色を好む人には手放させないアンプとなるでしょう。
これを世間では「温かみがある音」と言うのだそうですが、ボイスが風邪を引いたときのような音色になるのを指して言うのであれば、「熱のある音」が当たっているのではないかとさえ思うのです。
これだけ個性的な音を持つアンプは好きな人には名機となるのでしょう、かく言うこの私も熱狂的なサンスイサウンド派なのですが不思議なことに「ラックストーン」を無性に聴きたくなるときがあるのです。
特に寒い季節になると聴きたくなるようで、他社アンプには無い独特の音色が実に心地良く心にほんわりと響くのです。
ラックスマンで聴くキース・ジャレットの40分にも及ぶアドリブ・ソロは(アルバム名、「ケルンコンサート」)、一日中聴いていても飽きることがありません。