2021年11月17日 07:00
大学2年生のときに本格オーディオに目覚めてしまった私は、取り合えずオーディオの虫を収める為に自身のコンポを買う決意を固めるのでした。
どれほどオーディオ雑誌を読み込んだだろうか、ここで改めてオーディオの進化の早さを思い知ります。
世の中にこんな世界が既に形成されていたんだ、バイクでかっ飛ばしていた間にオーディオの世界はセパレートステレオからコンポーネント時代に急速な進化を遂げていたのです。
さて、買う決意を固めたのは良いのですが、当時のコンポはエントリークラスのアンプでも5万円以上します。
エントリークラスでは友人のコンポと勝負できず、ミドルクラスのアンプにレコードプレーヤー、そしてスピーカーを加えると最低でも20万円は超えてしまいます。
当時の大卒初任給が5.5万~6円程度ですから、それをベースに今のお金に換算すると70万円です、どうやってこのお金を作るのか?
昔から妙な悪知恵だけは働く私が先ず行ったのが、実家に置いてきたバイクを親父に売ってもらい5万円ほどを確保しました。
また予算を減らすためにスピーカーは既製品ではなくフォステクスの20CmユニットFE-203+専用のバックロードホーンのキットにして自作することにしました。
キットとはいえ、セットでユニット合わせて当時でも4万円ほどだったと記憶しています。
現在では同仕様のキットがメーカーを変え再販されるようになって、同じフォステクスの新型ユニットを合わせてセットで10万円ほど、材質が合板からMDF(再生木材)に代わったとはいえ安く手に入る今の時代が羨ましいです。
アンプは鉄の塊のようなサンスイのAU-7500で定価は8万弱、発売から2年ほど経っていましたがなかなか値引してくれなかったのが予想外でした、代わりにトリオのチューナーとサンスイのレコードプレーヤーはかなり値引きしてもらいました。
オーディオショップに暇があれば顔を出して、店員さんと仲良くしておいてからの購入当日の価格交渉です。
バイク下取りの5万円を頭金にして何とか12回の割賦で月に1万円弱、都合17万円ほどで購入することに成功しました。
月毎の割賦の1万円は仕送りからギリギリで何とか出せる費用です、世の中は上手くできているもので、後に引けない形を作ってしまうと本当に何とかなるものです。
商品が届いたその日のうちにスピーカーキットを組み上げました、今のようにエンクロージャーにスピーカーユニットを取り付ければ終わりではなく、重い板にボンドを付けネジ止めして行く本格的な大型キットです。
幅25Cm、高さ120Cm、奥行き50Cmの奥行きが幅よりも長く背の高いバックロードホーン特有の形をしています、悪友をビールで釣って手伝わせ3人がかりで都合3~4時間ほどで組み上げました。
バックロードホーンは、中の仕組みが複雑で物凄い量の部品があり、2度と本格的なスピーカーキットは作りたくないと思ったものです。
こうして待望のサンスイのアンプとフォステクスのスピーカーをベースにした自前のオーディオが手に入ったのです。
そして、大学3年の夏にはローンも終わり、今度はやはり同じように月に1万円弱の1年払いで当時仲間内で話題になっていた憧れのスピーカーだったダイヤトーンDS-35Bを手に入れるのです。
当時セットで11万円の本格的な3ウェイ大型密閉式スピーカーは、半端ではない締まった低音を醸し出してくれました。
このDS-35Bの音を聞くたびに40年以上前の古き良き青春時代を思い出し、サランネットが湿気でボロボロになっても、ウーハーエッジが経年劣化で張りが無くなってもなお私の中では手放せない逸品となっています。
先日久しぶりに音を出したのですが、心配を余所に意外にもしっかりとした音で立派に鳴ってくれました。
むしろ新しいダイヤトーンスピーカーの硬く締まった音よりも、ゆったりとした鳴り方でいつまでも聴き入ることができ心が温まります。