
何故私はオーディオにハマってしまったのでしょう、その理由を改めて考えてみると基本的に電化製品全てが好きなんだということに辿りつきました。
私は子供の頃から電化製品が好きで、大学時代からは理由も無く本能的に新しい電化製品が出るとつい買ってしまうのです。
大学時代は、アルコールランプ式のサイフォンでコーヒーを飲むのが大流行して私も多分にもれずサイフォンを購入して使っていました。
そんな時、電気式のコーヒードリッパーを家電量販店で見つけてその場で購入してしまいました。
当時は自由な時間にモノを言わせて家電量販店に行くのが大好きで、時代の先端を行く電化製品を見つけると高額でもつい買ってしまっていました。
出始めの頃の電子レンジは30万円近くしてローンで購入、友達は当時の大卒初任給の5倍もする製品を買う私を変人扱いしていました。
社会人になってからも、空気清浄機・加湿器・ロボット掃除機などは製品が出たとたんに購入するのは当たり前として、1回使って納得して放置された調理器具は山のようにありました。
電気グリル・卓上鉄板焼き機・電気鍋・卓上IH・電気てんぷら揚げ器・電気たこ焼き器・ホットサンド製造器・フードプロセッサー・ミキサー・ジューサー・ハンドミキサー・ミル・・・、一度も使ってない物も多数あります。
もし、オーディオが電気式じゃなかったらこんなにもハマっていただろうか?
中学時代から電子工作が大好きでラジオや調光機などを自作しては楽しんでおり、そんな延長線上にオーディオがあったような気もします。
ハマっているものとは必ずその根底に意味も理由も有るのです、好きなものを紐解いていくと見えなかった自分の中に在る思考が見えてくることがあります。
道楽を通して自分と向き合う、時には必要なことなのだと思うのです。

アクティブ型(アンプ内蔵)のサブウーハーにはデジタルアンプと重低音域だけを取り出すフィルターが内蔵されています、したがってアンプのプリアウト端子にサブウーハーを繋ぐと通常の音声情報のうち重低音域しか再生されません。
この特性を応用してダブルサブウーハー(ステレオサブウーハー)というテクニックがあります、本来はオーディオで小型スピーカーを使う場合の重低音域の補正を手軽に行える疑似マルチアンプ方式でのテクニックですが、これをホームシアターに応用してしまうというものです。
ミドルクラス以上のAVアンプの多くにはフロントプリアウトとセンタープリアウト、そしてサブウーハー用端子が付いています、そこでサブウーハー端子ではなくフロントプリアウトのLRにそれぞれ1つのサブウーハーを繋ぐのです。
つまり5.1Chでは5.2Chとなります、この場合のサブウーハーは前方に直接音を出すタイプのサブウーハーがお奨めです。
そしてフロントスピーカーに中型か小型のブックシェルフを使って、その下にサブウーハーをそれぞれ設置します。
こうするとフロントスピーカーチャンネルが重低音域まで出すような格好となり、本来のサブウーハーの代わりをします。
しかもステレオでの重低音は迫力があり、これにハマると1発使いのサブウーハーに戻せなくなるほどです。
ただライブ感を愉しむ場合は良いのですが、SF映画などでの下から湧き上がるような重低音の効果は期待できません。
私は一時的にこのダブルサブウーハーを愉しんでいた時期があるのですが、どうしてもSF映画などでのどこからともなく聞こえてくる地響きのような重低音が自分好みだと解ってシングルサブウーハーに戻した経験があります。
どんなジャンルでホームシアターを愉しむかで重低音域の出し方も変わってきます、ジャンル次第ではこのダブルサブウーハー方式は虜になってしまう人もいるでしょう。
スペースさえ確保できるなら、ダブルサブウーハー方式と間接的な重低音を再生するサブウーハーを使ったトリプルサブウーハーも面白いかもしれません、つまり5.1Chが5.3Chになるわけです。
ただし問題は重低音域の位相反転での空間合成で重低音域が相殺されマイナス効果と出る可能性があります、狭い部屋ではこのリスクの方が高いので置き方に充分な注意が必要です。
ダブルサブウーハーでさえ位相反転合成で重低音が消えてしまうという苦い経験を嫌と言うほど味わっている私は、そこまでリスクを冒してまでやってみたいとは思いません。
一本の間接型サブウーハーでさえ置き場所を間違えると後方に出た重低音が後方壁反射で相殺される事もあるのですから、そうとう設置場所と3つのサブウーハーの音量調整に苦労すると思うのです。

80年代中盤に突如として現れたCDですが、このオーディオメディアの台頭によってオーディオメーカーのパワーバランスが大きく変化することになりました。
オーディオ界は、アナログのレコードからCDやDVDといったデジタルメディアの対応を急ピッチに迫られました。
アナログの音質を決めるのはトランスやコンデンサといった重厚長大な部品です、他方デジタルの音質はDACに見られるように短小軽薄なデジタルICチップです。
現在の自動車業界に見るガソリン自動車から電気自動車への移行と同様に、それまでの技術に加えて新たな技術導入が必須になります、同様にこれまでオーディオとは無縁のデジタルIC企業が、オーディオ界で脚光を浴びるようになったのです。
デジタル時代ををいち早く予見し、アナログアンプにDACを付けたのがデノンでした、それまでオーディオ界にあって老舗ながらそれほど注目されていなかったメーカーです。
ここからデノンの快進撃が始まったのです、オリジナルのデジタルプロセッサーを武器にCDプレーヤーやAVアンプとデジタルオーディオ分野では常に先導するメーカーにのし上がりました。
私も初の外付けDACもAVアンプもデノンでした、90年代以降のデノンのデジタル攻勢はもの凄かったです。
どんな業界でも革新技術の大変化期には、業界MAPが大きく塗り替えられるほどの衝撃が走ります。
これまでの秩序が崩壊し新たな秩序の台頭、大きなチャンスでもあるし大きなピンチでもあるのです。
事実、多くのアナログ関連企業が経営危機に陥り倒産していきました、どんな業界でも新秩序の台頭は一瞬にして企業の優劣を変えてしまうのです。
オーディオ界に幾度となく訪れた新秩序、思い起こして見てもレコードからCDへの移行ほどの大変化と衝撃は他に類を見ません。
CDの誕生からほんの1年間でレコード売り場からレコードが消えてしまったのですから、そしてオーディオショップにはレコードプレーヤーが消えCDプレーヤーが並んだのです。
他の業界にはこれほど一瞬にして価値変革を強いらた現象はいまだに見当たりません、オーディオのデジタル大変革、今思い起こしてみてもその衝撃は地獄絵の如く恐ろしいほどに強烈なものでした。

美味しい料理を食べると元気になります、私の場合は音も料理とまったく同じ反応になるのです。
オーディオ道楽復活での音出し試験を兼ねた音質の組み合わせチェックにおいて、これが面白いように身体反応に出るので自分でも笑ってしまいます。
高級なハイエンド名機と謳われたアンプでも、本当に聴くジャンルと合わせるスピーカーによっては最悪な音色を奏でることがあります。
こういうときにはあまりのショックで意気消沈し顔色が一気に変わり、しばらく音出しをやめて別の事を始めてしまうほどに元気をもぎ取られてしまいます。
逆に思った通りの愉音が得られたときには身体も軽くなり、ニヤニヤしながらジャンルをどんどん変えて何時間も聴きこんでしまいます。
優秀なスピーカーはアンプを選ばないと言われていますが、逆に優秀なスピーカーほどアンプの個性をそのまま表現する代物はありません。
その意味では優秀なスピーカーにはアンプとの相性は無いと思いますが、アンプの音色は自分の好みを知らないとせっかく買ったのに最悪の結末を齎します。
最近のアンプでは「大外れ」ということはあまりなく、バランスが取れたナチュラルで良い子の音色ですが、70年代や80年代のアンプは本当に千差万別の癖者ぞろいです。
マニアでなければビンテージアンプを今更あえて使うことはないと思いますが、自身の好みの音色を探るためにこういったビンテージアンプの音質確認も極めて重要で音決めの参考になるのです。
その製品そのものよりもメーカー別の年代による音色の傾向とその組み合わせによる結果が気になるのです、最新の小型ブックシェルと70年代のアンプを組み合わせた音色が最も好みの音色だったなどということが普通に起こりえるのです。
誰が最初に言ったのか、「オーディオはオカルト」という名言(迷言)があるくらいです。
美味しく料理を作るには、それぞれの食材の味を知って合わせる調味料を選んで量を加減します。
食材と調味料のそれぞれの味が解って初めて合わせた時の最終的な味が合わせてみなくてもイメージできるのです、オーディオの音質チェックはこれとまったく同じなのです。
先ずはそれぞれの音質と音色を確認、そして組み合わせての確認、これを通して肌感覚で解るようになると、合わせるまでもなくイメージだけで最適な組み合わせが解ってくるのです。
「音も味と同じ、オーディオ道楽とは音を料理すること」、私の昔からの自論です。

ホームシアターで映画館のような迫力ある音での臨場感を愉しむ場合に重要なのが重低音です、ここでホームシアターに求められる重低音とハイファイオーディオに求められる重低音は質が異なるということを念頭に置いて下さい。
ハイファイオーディオでは小型スピーカーの重低音域の補正がその役割です、したがってメインの小型スピーカーの音と方向や広がり方と調和をとる必要があります。
そういった意味ではフロントにスピーカーが付いているタイプやバスレスダクトがフロントに付いているサブウーハーが理想的で、低音がまっすぐ飛んでくるタイプが合わせやすいです。
対してホームシアターで求められる重低音は、何処からともなく聞こえてくる部屋に音が充満するようなドロっとした重低音が理想的です、これを実現させるサブウーハーは背面や内部にユニットが付いており底面から間接的に重低音を垂れ流すタイプです。
またオーディオとホームシアターを融合させて愉しむ人が多くなってきましたが、この場合はフロントからまっすぐ飛んでくるハイファイオーディオ向けのサブウーハーが適役でしょう。
たかがサブウーハー、何故いろんな方式が存在しているのかを疑問に感じて自身の目指す理想のスタイルに合った方式のものを買うようにしましょう。
何事もそうですが意味も理由も考えずに趣向だけで闇雲に行ったとろこで本質は見えてきません、そして意味も無いものを買ってしまっては本来の目的を達成できずに損をするのです。
ちなみに私はホームシアターとオーディオの混在システムを組んでいますがサブウーハーはホームシアター向けの重低音を垂れ流しする間接タイプを使っています、ステレオ再生でオーディオを愉しむ場合はフロントスピーカーがオーディオ用の低域まで出るトールボーイなのでサブウーハーは電源を切って使わないという方式で両立させています。