コンビニエンスストアの新業態を模索していたローソンは「ローソンマート」の新規サービスを開始し「低価格路線」と「価格弾力性」でセブンイレブンに対抗するための秘策を打ち出したことがあります、ところが3年間で500店出店という大規模プロジェクトは1年もしないうちにプロジェクト自体が崩壊してしまったのです。
ローソンストア100に限界を感じた首脳陣がもっと価格に弾力性を付けたいとのことから100円の枠を取り払い、お客さまにより適正な価格で商品を届けたいという思いで「ローソンマート」は産まれたのですが狙いは大きく外れてしまいました。
私は発表当初から「これはうまくいかないだろうな」という予感がありましたが敗因はどこにあるのでしょうか、一番大きな問題点は「自分が何者であるか」をはき違えてしまったことではないでしょうか、コンビニエンスストアとスーパーは全く存在コンセプトが異なります、「価格の弾力性に限界を感じた」時点でここに気付くべきことだったと思うのです。
コンビニエンスストアとスーパーのビジネスモデルの違いは明白で、スーパーは大量買い付けによる低価格路線を顧客に打ち出す一方で店内の品数を増やし「ついで買い」を誘い顧客の販売単価をいかに上げるかを基本とするビジネスモデルです。
対してコンビニエンスストアは生活に必要最低限のものが「何時でも必ずここにある」という信頼感を前提にした定価販売による高付加価値高利益追求型のビジネスモデルなのです、両者はその仕入れルートも物流も利益の追求の仕方も異なり「存在価値」が全く違うのです。
コンビニエンスストアという業態の本分をはき違えてしまっては一時的に良くともいずれ大きな失敗をもたらすことになるよい例ではないでしょうか、他者と競合するなら自分の本分は何かを忘れるべきではありません、経営者が自分らしさを失ったとき何の意味も価値も生まない面白味の無い企業に成り下がってしまうのです。
 
 
マイケル・E・ポーターの著書に「競争の戦略」・「競争優位の戦略」という有名な書籍があり自分たちの事業にとって何が敵対しており、それらに対してどのように対策を取るのか、更には事業の業績をどのようにあげ維持していくかについて詳細に書かれている名著です、ファイブフォースやバリューチェーンといった言葉を聞いたことがある人は多いと思いますがポーター博士はこれらフレームワークの生みの親です。
さて事業家にとって事業の持続的な成長は永遠の課題です、 しかし時代の移り変わりが激しい現在では1つの製品やサービスが長年継続し収益を生み出し続けることは稀なことです、次々と新しいサービスや事業を生み出し続けない限りは数年で力尽き事業から継続安定的に収益をもたらし続けることは難しいばかりか会社の足元までが揺らいでしまいかねません。
大企業ですらそうなのです、ベンチャー起業なら一瞬の判断ミスが会社の命運を決めかねないのです、では素早く移り変わる世の中についていき自分の事業を軌道に乗せるためにはどうしたら良いのでしょうか。
その答えは「売り逃げ」することです、ある事業が高収益をもたらすと分かった瞬間に資本を集中投下し収益を最大限まで引き上げピークを迎えるころに撤退の準備をしタイミングを見計らって早い段階で撤退することです。
人は売上や業績が上がっている時にはそこから衰退することを考えません、悪いことに過去の栄光を忘れられずに過剰に追加投資する場合もあります、バンダイが「たまごっち」で売上ピークと資本投下の時期を見誤ったように、シャープが液晶に過剰投資してしまったように、未来ビジョンを見誤ると一気に衰退の道を転げ落ちることになります。
既にその事業の収益がピークに達していると感じたのなら収益が最大のうちにあるだけのリソースを投下して回収を早め、現状の収益にしがみつかずにさっさと撤退の方法とタイミングを考えるべきです、そして回収した資本の投下先は新たな事業のために使い芽吹きを遅らせることのないように育てることが成功者の思考なのです。
過去を切り捨て未来を見据えてチャレンジし続ける企業にこそ新しい世界が開けるのです、 まさに「未来思考で今を考える」ことです、「撤退するときは潔く最も順調な時に」、これを常に頭に入れておくこと、これは私の一つの成功法則でもあります。
 
 
二極分化の時代到来と言われて久しいですが現に1000万円以上の高所得者層の伸びと300万円以下の低所得者層の伸びが著しく両極端に広がっています、同じ場所に在って同じような内容の飲食店も同様に繁盛店と閑古鳥が鳴く店とに極端に分かれてきています。
同類商品も同業企業も全てが二極分化の大きな流れに飲み込まれているかのように思える現象があちらこちらに見受けられます、そんな時代の経営者もまた時代の流れに逆らえず大きく二極分化してきます、私がここでいう経営者の二極分化とは「勝ち組/負け組」という当りまえな事ではありません、これは企業そのものの評価という意味でのこととなります。
では経営者の二極分化の流れとは何でしょうか、それはその経営者が置かれた空間そのものを意味する「コミュニティ派/孤立派」に大きく分かれていくことにあります。
コミュニティ派の経営者は社員やパートナーに加えて常に各種のコミュニケーションを図れる仲間が多数存在し孤独感を味わうことなく自身の道をひたすら走ることができます、困ったら相談できる、悩んだら話しを聞いてくれる、食事も常に一人ではないから心身共に元気そのものです。
対して孤立派の経営者は友達や付き合う人が多く居るように見えてもいざという時には孤独感に包まれることを意味します、心から気を許す存在が周囲にいないからに他なりません、基本的に人間関係構築が上手くできない結果とも言えるのですが、この現象がここ数年で大きく広がっていきます。
この原因を私なりには分析しており一つは「SNSの功罪」と結びつけて考えています、リアルでも人間関係構築には面倒なことを避けては通れません、だから手軽にコミュニケーションが図れ何時でも面倒になれば縁を切れるバーチャルの世界にのめり込んでしまうのです。
しかしバーチャルはあくまでもバーチャルでしかありません、SNSの世界ではカリスマ的な存在であってもリアルな世界では常に孤独感に襲われます、こんな経営者は珍しくなくなってきたように思えます、孤独感に押しつぶされそこから逃れようと更にSNSの世界にのめり込んでしまいます、結局のところ経営者の「存在二極分化」はこうしてどんどん広がっていくのです。
 
 
時々例として使われる「パラレルワールド」という概念は数十年も前に「量子力学」から派生した言葉です、ここで物理学の中で「現代物理学」と称される分野は「相対性理論」と「量子力学」でこの2つの理論は宇宙科学の解明や発展に大きく寄与しました。
現在この2つの理論を総括した「相対性量子物理学」を確立しようと世界中の物理学者が日々研究し進化し続けている分野でもあります、原子を構成する原子核(陽子と中性子)と電子は通常宇宙空間や我々地球などの空気中に「プラズマ」や「ニュートリノ」と呼ばれる状態の自由な振る舞いによって存在しています。
これらを研究していくうちに実に面白い事実が解ったのです、それは「プラズマ」や「ニュートリノ」は同時に多次元世界に存在するというものです、例えば実験室に真空状態を作り「ニュートリノ」を観察すると何処からか突然表れまた突然姿を消します、つまり次元ワープとしか言いようのない振る舞いをするのです、この研究から「パラレルワールド」(多次元同時世界)という言葉が生まれました。
我々人間の行動に関しても「時空」という存在に注目し思考の一つとして提唱する学者も現れてきました、ここで思考でいう「パラレルワールド」とはどのようなものなのでしょうか?
例えば今私はパソコンに向かいこの記事を打っています、この途中で気分転換に喫茶店にコーヒーを飲みに行くとします、そうするとおそらくコーヒーを飲みに行かなかった場合の記事とは若干異なる文章となります、またその後に起こる事象も全く異なるものとなるでしょう。
コーヒーを飲みに行って知り合いと会うかも知れません、その知り合いから新たなる情報がもたらされるかもしれません、それによってこの記事は最後まで書かれる事もなく別の記事になった可能性もあるのです。
「常に我々は取れるべき行動には多くの選択肢が存在しその中からたった一つの選択肢を選んで行動している」のです、そして「連続的な選択と行動によって現在の状況が作りだされている」のです、つまりある行動を選択した場合には他を選択したものとは瞬間的に全く異なる未来が決定され開かれるということです。
私が機会あるごとに「今が重要」、「この瞬間が全て」と言っている根源がこの「パラレルワールド」という概念思考に繋がっています、人が一旦何かを行動(言動)すれば大なり小なり必ずその行動に繋がる未来が自動的に開けてしまうのです、しかも自分の好む好まざるに関係なくです。
それが最良の場合もあれば最悪の場合もあります、過去にそれを選択した時点で既に今が決まってしまい後戻りはできないのです、「因果応報」とか「自己責任」というものが「パラレルワールド」の本質です。
自分の周りに起こる全ての現実は過去にある事項を選択し行動した結果です、これをいったい誰の責任にできましょうか、自身の行いを省みず世の中や他者のせいにしては自身の行いの正当性を誇示する人が多くなってきました、それを行っているうちは明るい未来など開くはずはありません、マイナススパイラルの渦から抜け出せないのは明るい未来への自己改革の選択を常に躊躇っているからに他なりません。
クールな物理学も正確に理解すればホットな人間関係にも応用可能です、つまり何事からも生き方を学べるということです、「本当に学ばなくてはいけない人は学ばず、学ぶ必要のない人ほどよく学ぶ」という事実、これも「パラレルワールド」を理解すればなるほどと思わずにいられません。
 
 
経営者は戦略をもって経営にあたる必要があるというのは言うまでもありません、では経営者が「戦略」を決定する際に重要なポイントは何でしょう、起業したての頃は理屈よりも行動力などの「勢い」が必要です、起業家が一番最初に欲しがるのは「売上」であって「利益」ではありません、まずは売上げることを目指さなければ生きていくことすら厳しい状況になります。
しかしそれはごく最初だけです、事業が軌道に乗りだし順調に上向きに推移していくようになれば会社として次の階段が待っています、それは「黒字転換」です、この段階までくればある程度自身の本当にやりたい事や会社とその市場の状況も見定めることができるようになります。
おそらく本当に戦略が必要になってくるのはこの段階からです、ではどうやって長期の成長路線への戦略を立てていけば良いのでしょうか、重要なのは自分を正確に理解することです、そして自分に無理をしないゴールを決めることです、ゴールは走る方向とスケジュールが無くては成り立ちません、それが定まれば何時までに何をしなければならないかの具体的な計画も見えてきます、これが戦略策定の第1歩です。
続いて自社の持ち得る戦力を正確に把握することです、資金はどうか、有益な情報を持っているか、優秀なメンターやパートナーはいるか、ビジネススキームはどうか、それらを正確に把握することで取れるアクションの範囲が把握できます、こうして出来上がった戦略はビジネス関係者と市場に受け入れられるものでなければなりません。
自身がどんなに音頭をとったところでビジネス関係者や市場にそっぽを向かれては折角の戦略も台無しになってしまいます、折角作った戦略を周知徹底するためにも経営者はここで意識を改める必要があります、経営者自ら変化することで戦略を実行できるか否かが問われるからです。
成長ではなく変化に順応する、戦略の浸透もまた会社を大きく変化させるものであり、そのためには経営者自らが変化していく必要があるのです、成功する企業には必ずどこかで起業当初の「思い入れ」をひっくり返すような大胆な経営改革が不可欠となります、それを含めた成長戦略が必須なのです。