私が所有するユニバーサルプレーヤーは何故かパイオニアが多いのですが、最も気に入っているのがこのデノンのDVD-A11(2003年発売、定価28万円)です。
デノンが誇るDVDプレーヤーの名機DVD-A1(2002年発売、定価38万円)の技術を引き継ぎ、アナログ波形エンハンスAL24Processingを搭載してのユニバーサルプレーヤー化させた最初のハイエンドユニバーサルプレーヤーです。
2003年からデノンはDVDプレーヤーの単独製品を廃止し、SACD再生などを可能としたユニバーサルプレーヤーへの移行を急速に進めます、その最初の最上位機種と位置付けられているのが本機DVD-A11です。
デノンはそのカテゴリのフラッグシップ製品には「1」の称号を与えますが、それに準じるフラッグシップ製品には「11」を与えます。
この2年後、本機DVD-A11のDVD再生機能を外しSACD/CD再生に特化させ更にブラッシュアップしたDCD-SA11(2005年発売、定価35万円)が誕生します。
デノンのデジタルプレーヤーの歴史を今に伝える意味でも、デジタルプレーヤーの過渡期に誕生したユニバーサルプレーヤーであり極めて重要且つ貴重な1台なのです。
デノン DVD-A11
それにしても2001年頃からの3年間ほどは突然のようにホームシアターの虫が騒ぎ、AVアンプやユニバーサルプレーヤーの高級機を毎月のように購入しては入れ替えて愉しんでいた私個人的なホームシアターの狂喜乱舞の黄金時代であり、本器もそういった時期に購入したものです。
まさか、この5年後にオーディオ&ホームシアター道楽を封印してしまうとは、人生とは本当に一寸先は何が起きるか解りません。
私の歴代のAVアンプはデノンがほとんどであり、その意味からも同じデノンのAVアンプとの相性は抜群で、5.1Ch接続もチャンネル単位で接続して本格的なドルビーサラウンドを大いに愉しんだものです。
また、デノン独自のインターフェースで本器とデノンの対応AVアンプを1本のマルチバスケーブルで接続できるという機能も特筆すべき点です。
このデノンAVインターフェースは、ダイレクトにデジタル信号をAVアンプに接続できるもので信号のロスが無く鮮明な映像とクリアな音声を楽しめるという代物です。
流石にこのくらいの価格のユニバーサルプレーヤですと音質は評価するまでもなく、SACDに入っている音楽データの全てを絞り出すかのような濃厚な音に驚きます。
特にSACDに関してはSACD専用プレーヤーではないかと思えるほどに力を入れているようで、その音質も音色も文句なしの最高の愉音に思わず時間を忘れて聞き入ってしまいます。
DVDやCD再生も問題なく可能ですが、SACD専用プレーヤーとしても高く評価できる逸品です。
AL24Processingの効果なのか、音の繊細さやシャープさは鳥肌が立つ程で是非一度聴いてみてほしいと思います。
逆にDVDプレーヤーとしては、現代ではHDMIも無いしチャンネルセパレーションした音声しか取り出せないので使い勝手は極めて悪いです。
デノンの高級AVアンプとのコンビで使うことを前提としているので当然なのですが、ミックスされたアナログステレオ端子がないのは現代では致命的かもしれません。
更に言うとサラウンド効果など極めて細かな設定ができるのはいいのですが、現在においてはほとんどが自動化されていますのでむしろ無用の長物化しています、その点では本当に詳細なところに拘るマニアックな人向け製品と言えるでしょう、とても普通の人が気軽に扱える製品ではありません。
また現在の単体DACの音質と比べたら性能面では劣りますが、音色という点ではSACDでの濃厚な音色は本器でなければ得られない音色であり、その意味では貴重な当時の高級DACを備えたユニバーサルプレーヤーなのです。
なぜ貴重かと言えば、この肌の温もりを感じる音色は今の製品では絶対に味わえないからです。
さて肝心の音の評価ですが、曇りが無い音ってこういう音なんだなと肌で感じます。
それでいて余計な味付けもありません、繊細且つ極めてナチュラルな音色に思わず時を忘れて聴き入ってしまいます。
SACDで聴くジャズトリオが特に圧巻です、ピアノの高音域が澄んでいて綺麗に響きます、またハット系ドラムの金属質な響きもうるさくなく耳元で響く感じが実に心地よいのです。
低音域も切れが良いだけでなく重量感があり、ベースやバスドラがドスンと足元から響きます。
全体的に小型ブックシェルフで聴くとちょっと硬質な音色ですが、大型ブックシェルフに変えると低域が持ち上がる分バランスがとれるのか硬質さが少し和らぎ濃厚な音色を醸し出します。
それにしても、このクラスになると安心してオーディオを愉しめます、そういう意味での価格であるなら無理して買うのでなければ安いものだと感じてしまうのです。
最後に、音には無関係なのですが電源が強力なのか重量はなんとプレーヤー製品でありながらエントリークラスのプリメインアンプよりも重い13.5Kgもあります。
所有しているプレーヤー類の中で最も重くて設置の際にはずしりときます、特に左奥に電源が配置されているのか持ち方によってはかなり重く感じる製品です。
また、消費電力も他の平均的なユニバーサルプレーヤーの3倍の45Wです、いったいどこでこんな電力を食っているのか興味が沸くプレーヤーでもあります。