水の話し-8
1986年、地球に76年ぶりにハレー彗星が接近しました。
ご存知ハレー彗星は、紀元前から確認されている太陽を周回軌道とする地球に最も接近する彗星として有名です。
前回の接近時には、ジオットという探査機をハレー彗星に近づけデータを収集しました。
その結果ハレー彗星は大きさ8km×8km×16kmという細長い形をしており、太陽風で吹流しのように出ている尾は太陽の熱で溶けたガスで、その成分は「水」が80%、一酸化炭素10%、あとはメタン、アンモニア、ナトリウム他のミネラル分でした。
そして比重は僅か0.1から0.25と非常に軽い雪だるまのような物体であることがわかりました。
そして、近年の「オールトの雲」の存在のほぼ確定的なことにより以下の有力な仮説が生まれました。
「太陽系の彗星は全て、オールトの雲で誕生し、ある程度大きくなると土星や木星の引力に引き寄せられて木星などを周回軌道とする彗星になり、もっと大きなものは木星を回りきれずに通過、そして今度は太陽に引き寄せられ太陽を回る周回軌道となる」
さて、本題はここからです。
ここからの話は各種の観測データからの有力な仮説による話であることを注記しておきます。
太陽系がほぼ完成されつつある頃、太陽系の天体を形成した後の残骸とも言うべき余った多くのガスは太陽の活動開始と同時に太陽風に吹き飛ばされ銀河の磁場と太陽との引力のバランスの関係で「オールトの雲」を形成しました。
この「オールトの雲」ではガスの化学反応によってアンモニアやメタンを含む「水」(氷)のチリが生成されました、そしてそれらは互いに引き合い幾つもの彗星を形成し始めました。
そして、ある程度の大きさになると土星や木星、そして太陽の引力に引かれ中心に向かって移動し始めました。
おそらく、これらの多くが形成途中の地球に落ちたものと考えられます、その結果地球には多量の「水」が存在することになりました。
他の惑星に落ちた彗星は、例えば火星や金星など小さい惑星の場合は引力の関係で留めておくことが出来ず、木星などの大きな惑星はその惑星の引力で金属化してしまったと考えられます。
つまり地球の大きさが、「水」を留めるのに極めて適していたということになります。
また、あるとき月の直径の半分位のかなり大きな彗星が地球に衝突しました、その結果どろどろであった地球の一部が反動で外へ飛び出し、地球との引力の関係で月となって地球を周回する衛星が生まれました。
またこれによって、ほぼ今の地球の「水」の量が確定的になったと考えられます。
その後、地球は徐々に冷えて行きますが、海が形成された後も小型の彗星は幾つか地球に落ちました。
ハレー彗星の調査で判るように、その成分には「還元型」分子であるアンモニアやメタンが多く含まれており、前々回で話した実験のように太陽からの紫外線などで、彗星上にアミノ酸などの有機物が生まれたものと考えられます。
これは最近の探査機のデータでも実証されているように、太陽系に存在する多くのチリの中から13個以上もの原子が結合した分子まで見つかっていることからも納得できます。
結論、「オールトの雲」で生まれた「水」と「還元型ガス」で生成されている彗星によって地球に「水」、そして彗星上で生成されたアミノ酸や有機物が多量にもたらされたのです。
ハレー彗星などの彗星は、少し前まで太陽に接近するごとに小さくなると思われていました。
なぜなら多量のガスを撒き散らすのですから、しかし「オールトの雲」仮説によって、異論が出始めています。
それは、故郷である「オールトの雲」に戻ったとき、他のチリを集めて成長するので、小さくなった分を補え小さくならず半永久的に存在する、というものです。
また、最新の仮説では「オールトの雲」自体も太陽の軌道方向に対して流線型になっており、彗星のように尾を引いているように取り巻いていると考えられています。
更に、最近の調査結果により、近接する太陽以外の恒星の「オールトの雲」どうしが接していると思われている(小宇宙のカベ)。
つまり、これらから「泡小宇宙仮説」が実証されるのは、時間の問題と言えそうです。
<続く>