2023年10月10日 07:00
水の話し-9
1966年、ブライアリの小論文中に「45度~70度の高温で生息している細菌を発見した」という短い報告がありました。
それをきっかけに各地で高温で生息する細菌の調査・研究が急速に始まりました。
そして、1969年にアメリカのイエローストーン国立公園や箱根の温泉などで、80度以上でも生息している細菌が発見されたのです。
その後、新発見が繰り返され、現在までに海底火山の火口で100度を超える高温でも生息している細菌が発見され、これまでの確認されている最高温度は122度、更に100度以上での生息細菌の数は合計で40種類程が見つかっています。
これらを詳しく調べるうちに驚くべき事が解りました。
これらは発見当時は「古細菌」と分類されていましたが、近年になり「始原細菌」と改められたのですが、地球生物学上の生物とは全く異なる細胞を持っていたのです。
それまでは地球生物は、細胞の性質から「真核生物」と「原核生物」の2種に分類されていました。
「真核生物」とは、細胞核内にDNAを持つ細胞で形成されている動物・植物・酵母・カビ類などで、「原核生物」は細胞核を持たず細胞内にDNAを持つ多くのバクテリアや菌類(始原細菌に対して真正細菌と呼ばれる)です。
ところが、「始原細菌」はこのどちらでもない、極めて単純な細胞構造を持っていたのです。
今現在これらの「始原細菌」の多くは非常に好熱性、好圧性を持つことなどが判っており、多数の科学者によって研究されているのです。
例えば、最近では人工的なボイラー内でも発見されており、今後工業科学分野での活用も視野に民間企業もこれらの研究に乗り出している。
そして発見以前の「真正細菌」に変わり、この「始原細菌」こそが、地球最初の生命体では無いかという仮説が急速に有力になりつつあるのです。
今後、「始原細菌」の研究が進むことにより、アミノ酸などから細胞が作られる過程、そしてDNAがどのようにして細胞内に形成されたのかも判ってくると期待されています。
奇しくも、5年前に私がこの記事を纏めている時期に海底の細菌調査の興味深い結果が報告されました。
それによると、なんと海底の表面や奥深くまで殆どが「始原細菌」であり、それまでの大方の予想であったバクテリアなどの「真正細菌」ではなかったという事実が判明したのです。
地球最初の生命がこの「始原細菌」であったとしても、「水」が大きく関与していることは確かなことです、「水」の中で生命が誕生し、そして進化を繰り返してきたのです。
さらに、ハレー彗星の調査でも判るように彗星とはその成分の殆どが「水」です。
つまりどんなに周囲が冷えても0度以下にならない、どんなに太陽に近づいても100度以上にはならないのです、これが「水」が生命を生むに必要な絶対条件を満たしていたのです。
「水」の持つ化学的に極めて異質な性質が生命を生み育んだといえるのではないでしょうか。
また、「始原細菌」の発見は、同時に「地球外生命飛来説」も益々捨てきれなくなってきました。
彗星内でこれらの生命が誕生し、地球にもたらされた仮説もまた更に有力になったとも言えるのではないでしょうか。
いずれにしても、これまでに説明してきたように「水」とは、生命を生み育む目的で作られたのではないかと思わざるを得ない、極めて特異な性質を持っていることは確かなのです。
そして、地球外の太陽系の果てでその起源を持つことに驚き、またそれだけに限られた貴重なものであることに改めて考えさせられました。
また「水」は新たには作られないのです、地球内の「水」の量は固体・液体・気体と姿こそ変えながら、また動植物に取り込まれながらも常に一定なのです。
この限られた貴重な「生命の源である水」、我々は自らを生かし繁栄させる為には、汚すことなく守っていかなければならない使命があるのではないでしょうか。
「水」、それは神聖なる生命を生み育む母なる液体。
「水」、それは何度も生まれ変わる、消滅と再生を繰り返す不変なる液体。
<完>