2024年11月18日 07:00
70年代から90年代にかけての日本のオーディオメーカーの増幅回路設計にかける意気込みは、本当に「もの作り大国日本」に象徴されるように凄いの一言です。
マニアの間ではサンスイの「ダイヤモンドXバランス増幅回路」(AU-Dシリーズ)や「α-Xバランス増幅回路」(AU-αシリーズ)などは神話になるほど有名ですが、その他のメーカーも独自のここまでやるかという傑作品を数多く輩出しています。
例えば今では忘れ去られようとしているNECのA-10(1983年発売、10万円)やA-11(1983年発売、15万円)は、当時の多数のオーディオアンプの中に在って傑作中の傑作且つ名機中の名機といえます。
NEC(日本電気)といえば、日本が世界に誇る総合エレクトロニクスメーカで、放送機器や通信機器などの技術者を結集してオーディオアンプの開発を推進したのです。
何度も何度も途中経過でのベータ版での公開視聴会を開き、製品誕生までに気の遠くなるような努力を続けました。
また部品などを詳細に査定すればA-10で20万円以上しても全然おかしくないスペックであり、恐ろしいほどの高級な電源を誇ったアンプでした。
電源回路だけで4つのトランスを使って完全なる左右独立の直流を生み出し、アンプ部が故障しても電源機器(安定化直流電源)として考えれば10万円ならむしろ安いとまで言われたアンプの最高傑作品でした。
また、ケンウッドのハイエンドプリメインアンプのL-01A(1979年発売、27万円)、L-02A(1982年発売、55万円)はノイズを徹底的に落とすために電源部を別筐体として、更にアンプ本体は磁力を発する磁性体を全て排除し部品全てに非鉄を使うなどノイズ特性に拘りに拘った傑作品です。
ケンウッドの祖業は通信機であり通信機で培った技術をオーディオに存分に生かしました、そしてこれらの技術はアキュフェーズという最高級ハイエンドオーディオブランドに繋がるのです。
他にも、サンスイ・ソニー・オンキョー・ヤマハなどに隠れてそれほど話題にはならなかったのですが、80年代のデノンもデジタル時代を先取りした傑作アンプを多数創出しています。
本当に、70年代後半から90年代の初頭までの20年間の日本のアンプは世界に誇る名機のオンパレードだったのです、これらの名機は近年になり世界中で再ウォンツが生まれ中古品が高値で取引されています。
日本のオーディオ黄金時代、毎年新しい方式が幾つも生まれ多くの名機が乱立した異常極まる輝かしい時代でした。
そんなバラ色のオーディオ黄金時代をオンタイムでしかも名機に囲まれて過ごせたこと、これは私のオーディオ道楽の原点にある誇りだと思います。
何時までも当時のオーディオ誌を読んでは興奮していた思い出が頭から離れません、闘志にも似た気持ちがビジネスにも前向きな発想になり、その結果において全てに有益に機能していたことは確かです。
そして事業家に復活してからのオーディオ道楽の復活、当時と同じような極めて前向きな気持ちになっているのを自覚しています。